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「全く―――本当に、非常識な連中だよ」
薊 マイは一人一連の騒動をしっかり記録した映像を見て、研究室でため息を吐いた。
自分で言っていて、意味のない言葉だと虚しさを感じないではなかった。
「しかし、悪くない気分だ……全く彼らから学ぶことは多すぎて困る」
ぽたりと一滴落とした血液を、巨大な顕微鏡で眺める彼女の口元はわずかに緩む。
この非常識を誰もが分かるように常識に落とし込むこと周囲が自分に求めているのはそういうことだろうと察することはできた。
それは想像以上に難しいことだが、だがだからこそやりがいがあると、薊 マイは考える。
今、彼女の力はそのためにあった。
完全に想像もつかない未知というのならまだしも、現物が目の前にあり、手を伸ばせば届くのならば解明できない道理はない。
考え込んでいる内に興が乗ってきた薊 マイは座っていた椅子を回転させて、ある方向でぴたりと止めた。
「全くくだらないな。理解できるようにしたからと言って使いこなせるわけがない」
同時ににやりと笑い、自らの成果を見渡した。
「そう――私以外はね」
彼女の視線の先には、培養液に満たされたカプセルがずらりと並び、既に可能性の種が芽吹き始めてた。




