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「なんだろう? あれも実際やってのけたらふさわしい態度なんじゃないだろうか?」
「何言ってんのあんた? でも……あれなら勝てそうね」
リオンは信じられないと驚きを隠せない。
不敵な笑みを浮かべる山田が一歩踏み出すと、ひるんだ同胞が一歩下がっているという現状はそのまま今の状況を表している。
「さぁ本気を見せようか? お前は何秒持ち堪えていられるのかな?」
星が揺れ、一瞬で何もかも吹き飛ばせそうなエネルギーが彼を中心に渦を巻いているのがべぇだには確かに見えた。
なんかめちゃくちゃ乗り気で悪っぽい台詞を吐く山田はあらゆる意味で圧倒的だ。
追い詰められた同胞は何を思ったのか、癇癪を起した様に、バチリと体をはじけさせて怒鳴った。
『くっ! 何なんだお前は! 私はお前と戦う理由などない! 同族同士の決闘をじゃまするとは空気の読めない……なんて間の悪い奴だ!』
「なんだかめちゃめちゃ追い詰められてるなぁ」
「なに言ってるのあいつ? いきなり襲い掛かってきたくせに」
リオンは心底あきれてセリフにツッコミを入れている。
まさにその通り。べぇだにしてみてもそっくりそのままお返ししたいセリフだった。
「いや……お恥ずかしい」
そういえば自分達の種族は思い込みが激しかったことを思い出す。
擁護するなら簡単には死ぬことも負けることもない体を持ってしまったがゆえに、追い詰められるという感覚が希薄なのは間違いない。
つい今の今まで楽勝ムードだった。
圧倒的な力の差を見せつけた今、もはや戦いにすらならない。
べぇだもリオンも確かにそう思っていた。
「……!!」
どさりと山田が膝をつき、なんだかおかしいことに気が付くまではだ。
最初リオンが怪訝な声でべぇだに尋ねた。
「なに? 何が起こったの?」
「さぁ?」
べぇだにも訳が分からない。
戦闘でダメージらしいダメージはなかったはずだ。
だが山田呟きは、100キロ先の針が落ちる音まで聞き分けられるべぇだの耳に確かに届いた。
「空気が読めない……間が悪い奴……」
「なんか傷ついとる!」
今度はべぇだも力いっぱい叫ぶ。
山田の気にしているところにドンピシャで悪口がはまったらしい。
そのメンタルの弱さに驚愕である。
『……これでもくらえ!』
その隙を同胞は見逃さない。
光が地面を走り、山田の足元に穴が開くと、彼の体が掻き消えた。
「山田君!」
べぇだも叫ぶが山田の姿はすでにどこにもない。
リオンはいったい何が起こったのかとべぇだに視線で訴えていた。
「あれはワープホールだ……。山田君はどこかへ飛ばされた。彼ならどうにかしそうだけどすぐには戻ってこられないかも」
「それってやばいんじゃないの?」
「……」
同胞もとりあえず山田に襲い掛かっていれば、反撃で痛い目にあってくれそうだったのにまさかワープホールとはやってくれる。
『一体なんだったんだあいつは……』
だがあのわけのわからなさだ、同胞は今もめちゃくちゃ慎重に様子をうかがっていた。
「なんか山田くんの弱点みつけたかな。結構メンタル弱い」
「そんなこと言ってる場合? っていうかそんなことあるの? 戦ってる真っ最中でしょ?」
リオンにしてみれば命のやり取りの最中に、悪口を言われて落ち込むなんてありえないと思うのは普通のことだ。
だがべぇだには、今の戦いが山田にとって命のやり取りをしているわけではないことがよく分かっていた。
「いやーあいつも山田君にとっては取るに足らない敵ってことなのかな? なんか悔しいけど」
「とるにたらない? あれが?」
リオンさんは理解が及ばないという顔だった。
だが理解など山田 公平を前にしてはむなしい言葉だ。
それよりもこのままならもう一度べぇだの番が回ってくる。
べぇだは仕方がないと戦闘態勢を再び整えた。




