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 派手に破壊されている割に、壊れてはまずそうなものは傷ついていない破壊跡。


 先ほどまで地球の天災が凝縮して吹き荒れていた騒ぎはマリーベルさんの気絶で幕を閉じた。


 ホルスト君もさすがに堪えたらしく疲れの色が見て取れ、座り込んでいた。


「疲れたな……さていくとするか」


「……あ、あのぅ」


「どうした? 山田?」


 僕はそう聞かれて、ものすごく戸惑った。


 ホルスト君は平気そうな顔をしているが、どうふるまったらいいのか、まったくわからなかったからだ。


 結果、オロオロ戸惑うばかりの頭の中が、奇妙な踊りになってしまった。


「なんだその呪いをかけそうな踊りは?」


 本気でいぶかしむホルスト君に僕は思い切って言った。


「いや、だって。こ、告白失敗しちゃったし。こういう場合どう励ませばいいのか……。お菓子とか食べる?」


「なんでだ? アレは冗談だといっただろう?」


「でも……それって、嘘でしょ?」


 明らかに冗談ではなかったはずなのになんでだろうと訊ねると、とたんにホルスト君に皮肉っぽい笑顔は消えていた。


「なぜそう思う? さっきの悟りもどきの余韻が残っているのか?」


「? そんなのなくても。本気かどうかは聞けばわかるよ?」


「…………そうか」


「でも、失恋って大変だと聞いたことがあって。……泣き崩れたり、ことによっては死んだりすることもあるとか。……どうすれば……お菓子いる?」


「なぜ菓子を食わせようとする。いらんわ。それに落ち込みも死にもせん」


「でも」


 こういう時友達なら何かすべきではないのかと、僕は食い下がる。


 ホルスト君は反応に困ると表情に出ていたが僕の肩をつかみ声を潜めた。


「まぁ待て……よし。山田よ。お前にも一つ教えてやろう。マリーベルの奴には教えなかった続きだ」


「う、うん?」


「心の大切な所はそう変わらん。が―――常に変わり続けるのもまた心なんだ。今は、教師役もまたよしだろう。あいつはそれを望むだろうからな。だが、最後までそうとは限らない」


「と、いいますと?」


 僕は訊ねた。するとホルスト君の口元の笑みから自信が溢れた。


「まだ嘆くには早すぎるということだよ。いいか? この世は何が起こってもおかしくはないんだ。私などこの間死んだかと思えば、気が付けば今学生をやっているんだからな。そう慌てて結果は求めんよ。だがな本当に必要なものはけして諦めん、最後の瞬間までな。それが王の心意気というものだ」


「……ファラオ」


 僕そんなホルスト君にいつもはまったく感じないファラオをちょっぴり感じるたのだった。


 ただ、妙に青春めいた時間はすぐに現実に引き戻される。


 ぽんと肩を叩かれ、僕とホルスト君が振り向くと、そこにはにっこり笑う礼先生がいた。


「説明を、してもらってかまわないか?」


「「……」」





 簡単な説明の結果、集められたのは男子全員だった。


 僕らの前には腕を組んだ礼先生がいて右の眉毛をピクピクさせている。


 長い長い状況説明は、僕らの磨り減ったメンタルを磨耗させるには十分だった。


「わかった……君らの迅速な対応は高く評価できる。しかし過程にいささか難がある」


「……なんでボクらまで?」


「主犯はこいつらだ俺達は無実だ」


「見事な連携で、クラスメイトを暴走した茨の真ん中に投げ込んだそうじゃないか。小言の一つも聞いていきなさい」


「……」


「……」


 額には青筋が浮かんでいる礼先生に、時坂君もべぇだ君も口を閉じた。


「君達……学校の修繕もタダではないんだ。少しは自重してもらいたいものなんだが?」


「すまんな。まあ許せ」


「ゴメンナサイ」


「ところで、大和君たちはどんな感じでしょうか?」


 僕は運ばれていった気絶した二人の安否を尋ねると礼先生はため息をついて教えてくれた。


「二人はメディカルルームでチェック後、自宅で休養だ」


 だが自宅という言葉を聴いて、一つ思い出すことがあった。


 このお説教の原因となった事態についてである。


 今現在、ここにいいるのは教師である礼先生と疑惑を持った、男子生徒のみ。


 後のメンバーは、すでに後片付けに従事している。


 僕のうかつな発言で、今後の人間関係に重大な亀裂を生じさせかねないだけに、ここは一つ僕が切り出すべきだと手を上げた。


「すみません。礼先生。男子寮に大和君がいないんですが、どこに住んでいるのか聞いてもいいですか?」


 ザワリと疲れた雰囲気から一転、若干殺気立つ男子。


 あまり歓迎すべきことではないだけに、事情を聞き出すのは難しいかと考えていたが、案外あっさり礼先生は肯定した。


「んん? ああ。大和は今女子寮に住んでいるよ」


 これには男子全員驚いた。


 見るからに動揺し、視線を彷徨わせる。


「彼は教職員用の私の部屋に今のところ住まわせている。そのうち何らかの手は打つつもりだが、しばらくは現状維持だ」


 一体どういう状況なのか掴みきれなかった僕は、事情の説明を求めた。


「な、何でそんな事に?」


 するとなぜかジト目のなった礼先生は、簡潔に説明した。


「男子寮を到着早々改装した生徒がいてな。部屋を一つぶち抜いて二部屋を一つにしてしまったんだ。当然一部屋足りなくなる。そこで大和 学とは血縁で保護者ということになっている私が寮長をやっている女子寮に彼が住むことになったわけだ。住人全員の同意はあるが、倫理的にはあまり表沙汰にすることではないので気をつけるように」


「……」


「……」


「……」


 僕らには思い当たる節があって、はっとした。


 僕らの部屋よりも部屋一つ分広い部屋に心当たりがあったからだ。


 僕らの視線は自然とホルスト君に集まってゆく。


 するとホルスト君の視線はついっと逸らされた。


 男子は彼に襲い掛かった。


「お前のせいじゃねーかホルスト!」


「ちょっと何してんだよ! このアホファラオ!」


「ええい! 仕方がないだろう! あんな狭い部屋に住めるものか!」


「……僕も今日は帰っていいかなファラオ」


「いや! 帰るな! お前も手伝え!」


「ハァ……私はもう行くぞ」


 本日、二度目の喧嘩は荒れそうであった。


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