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「なん……だとぅ?」
僕は人の告白と言う奴をガッツリ目撃した。
そして、この唐突な展開をモロに喰らった少女は、単純に混乱していた。
先ほど以上に顔は真っ赤になり、瞳の焦点が定まっていない。
発汗が多く、呼吸も荒かった。
僕は思った。
これ単純にさっきよりもやばいんじゃないだろうか?
心の乱れというのなら、今ほどまずい状況もない。質は違うがそれでも嵐の前兆とも取れる。
何かきっかけがあれば、爆発しそうな状況を僕ははらはらしながら見守っていると、混乱したマリーベルさんは、ホルスト君の腕の中から離れた。
そしてもう今すぐ爆発するんじゃないかというほど真っ赤な顔で言った。
「……その! ……私……今、好きな人が……いるんです」
超展開から5秒。
彼女の口から出たのは蚊の鳴くような声の、しかししっかりとした拒絶だった。
僕はがちょんとあごを落とした。
「……!」
言葉にならない。
人がフラれた瞬間をがっつり見てしまった。
ホルスト君に表情はなく、僕はオロオロするばかりだ。
さっきの話を聞いていると、ホルスト君も大丈夫だろうか?
ざっくりと傷つけられたに違いないホルスト君は、ありとあらゆる意味で心配である。
「……そうか」
ホルスト君は無表情のまま、マリーベルさんに歩み寄った。
感情が一切読み取れない表情を見上げ、マリーベルさんは顔色を青くする。
恐らく、自分がなにを言ったのかようやく今気がついた、そんな表情だった。
ここに来て双方最大級の暴走、そうなってもおかしくはない。
僕は地球と太陽。最大級の力が解き放たれる光景を想像した。でも単純に僕には首を突っ込める話題でもなくって、身をすくめたが、そんな事態にはならなかった。
ホルスト君は怒るどころか、にやりと不適に笑って見せて、マリーベルさんの頭をなでた。
「うん。知っている」
「へ?」
「まぁ今の要領だ。遠慮の必要などどこにもない。言うべきことはしっかり言ってやればよい」
「ううん?」
ホルスト君は告白してフラれた割には、さわやか過ぎた。
想い人に向けるというよりは教師のようなそんな彼に、マリーベルさんの返事にも混乱が混じっていた。
「今断った時、きちんと必要だと思ったのだろう? まぁひょっとするといいすぎたかもと不安になったか?」
「う、うん」
「だがそういうのは必要なんだ。人間、心の本当に大切な所は簡単には変わらない。必要な時は自分で傷つけるんだ。能力に頼らずにな」
「え、えーっと……」
「敵なら単純に能力で吹き飛ばしてしまえばいいだろうが、そうじゃない時ほど気をつけるべきだろうな。まぁ今日の所はこんなところだ」
講義を終え、満足げに頷くホルスト君である。
そんな彼にマリーベルさんはいよいよ我慢できなくなったのか疑問を口にした。
「いえ、その……そうではなくって」
「ん? ではなんだ?」
「さっきの……告白……だったの?」
そうだよねっと僕も横で頷いてしまう。
しかしホルスト君は真顔で爆弾を落とした。
「ん? まぁそうだ。冗談だが」
「……」
それを聞いたとたん、マリーベルさんの頬はふぐのようにぷくりと膨らむ。
「ん。まずいな」
そして怒りに震える彼女の能力は解き放たれた。
暴走ではなく、彼女の怒りを存分に乗せて。




