40
その日僕、山田 公平は朝の散歩から帰ってくると、空から太陽が降ってきた。
「ええっ……」
朝だというのに僕の脳天に直撃である。
赤々と燃える炎で視界が埋まる。
数秒でそれは収まったが、周囲の地面がごっそり削れてしまって、僕は犯人の心当たりに文句を言った。
「いきなりなにするんだよホルスト君。おはようございます」
「おはよう。それで?……あー、その現象はどういう理屈だ? お前服も焦げてないじゃないか」
見上げた先には寮の屋根の上で腕を組んでいるホルスト君の姿があった。
自分で言っておいてひどい言い草さと思ったがそれは一先ず置いておこう。
どういうことだと言われても、攻撃された時は大体こんなものだった。
「んー。制服何着も新調するほどお金もないし、都合がいいかなって思う?」
「ものを考えないにもほどがあるだろう。それにお気楽にすぎるわ。空気を読まないか」
「空気……」
いくら僕でもいきなり朝から火の玉を落としてくる人に空気を読めないかどうかを指摘されるのは納得できない。
「ホルスト君こそこんな朝早くから屋上で何してるの?」
僕が不満を隠さず、微妙に顔に出しながらそう尋ねると、ホルスト君は昇る朝日に向けて目を細めた。
「ん? ああ。いい朝なのでな。朝日を眺めていただけだ。そうすると頼まれもしないのに学園の敷地を見て回っている下々の者を見つけてな、声でもかけてやろうと思ったわけだ」
「……声をかける以前に、必殺技投げかけてちゃダメだと思うんだけど」
「そう言うな。私達にとってはほんの遊びのようなものだろう?」
「いやでも、寮の前に大穴開いちゃったし」
声をかけてくれるのは正直嬉しいが、小言の一つも言っておいていいだけの火の玉だった。
僕はともかくアスファルトがぐずぐずに溶けているんだから学校の設備にも優しくないだろう。
呆れてアスファルトに目をやる。ホルスト君は電話を掛け始めた。
「私だ、少々寮が壊れてな、今すぐ来てくれ。ああ、至急だ」
「……今のは?」
「なに修理を頼んだだけだ。明日には、もう工事は終わっているだろう。部屋も改装しているしな」
「す、すごいね」
としかいえない。
にやりと笑ったホルスト君はあくびを一つして屋根からベランダに飛び降りた。
ホルスト君はファラオで太陽で社長らしい。
大人びているかと思えば、案外ノリもよく。馬鹿なこともする。
どうにも能力もなぞが多いが、それ以上に彼という人間がつかめないという印象だった。
「……なんなんだろう。よくわかんない」
ひょっとすると、ある意味では僕以上に。
僕は感想を呟きながら首をかしげた。




