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「……よし! 馬鹿ども! 今日はオレのおごりだ! 飲め!」


「「「かんぱーい……」」」


 と、まぁちょっとした事件があっても僕らに何か変化があるわけでもない。


 僕、山田 公平は、実にフラットな心境で。淡々とジュースを飲んだ。


 ビンの飲み口をすっぱり切って提供してくれている時坂君はまさしく大盤振る舞いだと僕は思った。


 おそらくは機嫌がいいらしい時坂君は、自分の持っている炭酸飲料を一気に飲んで涙目になっていた。


「やっぱりお前らつけて行ったんだろう。ほんっと馬鹿だなお前等ら」


「そこうるさいよー。結局くたびれ損だったんだ」


「合流も出来なかったしな」


「合流できなかった? なんかロボットがよくわからない間にぶっ壊れたって聞いたんだが? お前らがやったんじゃないのか?」


 時坂君が困惑していると、ホルスト君は言葉を濁す。


「それは……」


「山田君が……」


 そしてべぇだ君は出来る限りこちらを見ないようにしているらしい。


 時坂君は不思議そうな顔をして、僕を見ていた。


「ああ、山田がやったのか。まぁご苦労さんだ」


「うん。僕は偶然居合わせたんだけどね」


「「!!!」」」


 すると僕の返事に反応して、ホルスト君とべぇだ君がすごい勢いで振り返ってきた。


「元に戻ってる! どういうことだ!」


「筋肉は! 筋肉はどうしたの!」


「いやー、なんか落ち込んだら元に戻った」


「そんな馬鹿な!」


「君ってホントに人間なの!?」


「いやだなぁ。ちゃんと人間だよぉ」


 自分達は光になったり火の玉になったりするのに、ひどいこというなって感じだった。


 筋肉だもの、しぼむ事だってあるさ。インパクトないって言われたし。


 この中で唯一よくわかっていない時坂君からはあきれ果てた目で見られるし。


「まぁなんでもいいけどよ。あんまり馬鹿なことばっかりやってると、本気で女子にも馬鹿だとみなされるぞ」


 時坂君は言う。


 だがそれを聞いたホルスト君はピクリとかすかに反応して。


 べぇだ君は、ゆっくりと時坂君を見て言った。


「……いいよねーよゆうだよねー。今回女の子と仲良くなった人は」


 その場の空気が凍りついた。


 僕はケンカが始まりそうだと身構えた。ところが思ったよりも時坂君の対応は、冷静だった。


「は? いやそんなことねぇから」


「いやそれはないでしょー。アレからもよく話すんでしょ?」


「まぁな……まぁでも、友達?」


「ほっほう。友達か」


 ホルスト君も便乗し、べぇだ君も調子に乗り始めたようだった。


「へー……どう思いますホルストさん。あれは謙遜なんですかね? いやみなんですかね?」


「自然に自慢じゃないか?」


「そ、そんなことないと思うよ? ホントに仲良くなったんだよ。友情だよ」


「……」


 だがなぜか、僕が口を開いたところで、時坂君の無表情が微妙に崩れたのだ。


 話題の中心だったからだろう、その変化にホルスト君もべぇだ君も気が付いて、今度は僕の方に非常に切ない表情で非難が殺到した。


「……お前も自然に心を傷つけるなぁ」


「……ひどいことをことを言うよね」


「えぇ! なんで!」


 何かとてもまずいことを言ったらしい僕が動揺していると、時坂君が自ら割って入った。


「いや間違ってねぇから。今回のことはちょっとしたオレのうざいおせっかいで――早乙女に迷惑かけたってだけの話なんだ。友達っつーのもまぁ少し怪しい位だよ……」


 台詞の端々に影が見える時坂君により慌てる僕。


 僕とホルスト君とべぇだ君は、三人よってジャスチャーで審議。


 よくわからなかったので小声で第二審議である。


「どうしよう。時坂君が卑屈になっちまったよ?」


「仕方ない。ああまで友達と断言されては」


「ぼ、僕のせいなの!?え?ゴメン!」


「おまえらなぁ……もぉいいわ」


 ゴトリと適当な机に突っ伏して頭を打ち付ける時坂君は、最初のテンションが空元気だったらしいと僕もようやく気が付いた。


 べぇだ君は時坂君を励ますことにしたようだった。


「ゴメンゴメン。でも友達は友達だと思うよ? そういえばさ、自分の能力とかって教えたりしたの?」


 時坂君もまだ口を利く余力はあるようでべぇだ君の質問に答えた。


「……ばれたな」


「あらー……」


「お前の想像したようなことはなかったけどな。能力なんて、そのうちばれんだよ、隠したってな」


「そりゃそうかもしれないけどね」


 ホルスト君も何か悲しいことがあったのだろうと、うなずいた。


「まぁそのうちばれるのは仕方ないだろう」


 僕は三人の言葉にちょっとだけ眼に涙を浮かべてうなずいた。


「うん……外面だけ取り繕ってもダメだっていうのはよく学んだ」


 だがその結果得られた教訓は生かしたかった。


「……だけどさ、僕は能力がばれても引かれたりしないと思うよ?」


 大いに引かれたその後も現に友人である彼らはいつも通り僕を招いてくれているのだから。


 すると時坂君はあごを机につけ、彼らしくも無い力の無い声を出す。


「引かれるってのよりも、隠し事して後ろめたいよな……まぁ」


 でも時坂君の表情は、悲しいというよりもむしろ――。


「でもよぉ……もし。俺があいつに本当の能力を隠したのは嫌われたくなかったからだって正直に言ったら……あいつなんて言ったんだろう?」


 ため息とどこか遠くをみるような切なげな表情。


 そして口をついたそんな台詞。


 時坂君はすぐにはっとして頭を上げる。


 そこには血の涙を流すべぇだ君と必死に抑える僕とホルスト君がいた。


「ち、ちくしょう! 心配して損した! 青春だよ! あいつは間違いなく今青春をしてやがるよ! うらやましい!」


「まって! 何も! うん! 時坂君は悪くない! 彼はまったく悪くないんだ!」


「なんというか……ああまで堂々と青春されるとなぁ」


「でも! でも! くやしいじゃないか! 切ないじゃないか!……くっ!」


 べぇだ君はしかしガクリとその場にうなだれて、今度ははらはらと涙を流し始める。


 しかしべぇだは顔を上げ、今だかつてないほど優しい笑顔で時坂君を見ると親指を立てて言った。


「わかってるよ。ボクもホントはわかってるんだ。大丈夫ボクは君を応援するよ……友達だもんねトッキー!」


「いや! そういうんじゃねぇから! そしてトッキーでもねぇから!」


 自分の一連の台詞と、そして周囲の反応を解析し、理解すると。


 時坂は火が付いたように赤くなった。


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