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だけど前向きに考えたところで、そんな都合よくは行かなかった。
「どうも肝心の方法が思いつかない。それが問題だ」
そりゃそうだ、だってこいつは僕の短い人生においても常に付きまとう命題だ。
自分でだってよくわかっていない上、この国で定めた能力に、僕のあてはまるものはないと来ている。
こいつはかなり胡散臭く、戦っていればなにかと目立つ。
それを踏まえてこの胡散臭さを払拭できる工夫とは?
ふと、僕は外を見るとあまりの驚きで悩みすら真っ白になった。
「……!!」
そこには上半身裸のマッチョな校長が、汗を飛ばしながらでっかい金棒で素振りをしているじゃあないか。
「……ああ、今ちょっと気分が軽くなった」
ひょっとするとここにいだけで僕の胡散臭さは軽減できているのかもしれない。
上半身裸でおびただしい汗をかく校長は、驚異的なわけのわからなさだった。
しかしあのわけのわからなさを前にして、僕は気が付いてしまったのだ。
そうだ、こういう悩みは人生経験豊富な大人の……先生にも相談してみるべきだと。
それが巨大棍棒で素振りする大人であったとしても、いや、だからこそここに突破口がある気がする。
今の僕の悩みを聞く相手として、あの絶対この場にそぐわないのに平然と普通に筋トレしている校長はピッタリなんじゃないかとさえ思った。
「校長先生! ちょっといいですか!」
「ん? どうしたね? 山田君! 随分と必死な顔をしているじゃないか!」
「そうなんです! 実は~かくかく云々」
事情を説明すると、校長は僕の顔を覗き込みうむと深く頷くとその場に胡坐をかく。
僕もそれに倣って座り、じっくり話し合う体制が整った。
「なるほど。得体のしれない力のせいで、怖がらせてしまうと。だから君は、彼らを怖がらせないために自分の力の正体を知りたいとそう言う事かな?」
「ええ……でも、自分じゃわからないし、解明されるのを待っていられません。どうすればいいかわからないんです」
難問を口にしているとわかっていると、自分でもどうかと思った。
僕が肩を落すと校長は力強く僕の肩を掴んだ。
「そうか。ならば自分で強さに理由をつけてしまえばいいんじゃないか?」
「へ?」
一瞬なにを言われたかよくわからなかった。校長はしかし自信ありげにスキンヘッドを輝かせていた。
「私も君と似たような経験で悩んだことがある! 私の若い時は、そう世間に特殊な能力は知られていなかった! だが私は自分の力が人よりも遥かに強い事を自覚していたのだ! なぜ力が強いのか、誰も教えてくれない! そこで私は自らの身体をさらに鍛える事にしたのだよ!」
「ぎゃ、逆じゃないんですか!?」
僕は校長の奇抜な結論に心底驚いて問いただす。
すると校長は、ニカリと笑って親指を立てた。
「そうだとも! 私は体を鍛えているから力が強い! 格闘技をやっているから力が強い! 強さに理由があるとそうみんな知っていればそれは異常な事ではないだろう?」
「なんと!……」
僕の目からうろこが落ちた瞬間だった。
確かにその通りだ。人間鍛えれば力が強くなる。当たり前の事だ。
ただなんとなく力が強いでは納得できなくても、筋トレをしているから、格闘技を習っているからそう前置きしただけで説得力が生まれているじゃあないか。
「それだけのことで安心することもある! きついことをするには努力しなければならない! 努力は真摯に取り組まなければならない! そして真摯に物事に取り組める人間は信用できる! 更にいうならこの肉体がそれを証明するというわけさ! こうやって連想し人格などを人は想像できるわけだ! この比重は実はとても大きい!」
「な、なるほど! という事は……」
「ああ、君も体……鍛えっちまえよ!」
まぁそういうことになってしまうか。
だけど念のため、僕は尋ねた。
「僕が体を鍛えたら、もうみんな怖がらないでしょうか!?」
「……ああ! 大丈夫だ! ついでに私が秘伝の拳法も教えてあげよう!」
「ええ! 拳法ですか!?」
「そうだ! 私は少し力を付けすぎてしまってね! 普通では使いこなせないオリジナルなんだが、君ならきっと使いこなせるだろう!」
それはある意味青天の霹靂であった。
試練は降って湧いたものだったが、こいつをやり遂げることによって僕は大きな物を手に入れる、そんな予感がある。
だからこそ僕は頭を下げた。
「……! 校長先生! 俺! やります!」
「よく言った! ではまず、秘伝のビルドアップ方から伝授していこうか! 私の事は校長先生ではなく師匠と呼ぶように!」
「ハイ師匠!」
こうして僕の修業は始まった。




