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「経過報告は以上です」
薊 マイは複数のディスプレイに映る顔に報告を終える。
提供したデータは、画面の向こうの彼らにとっても有益なものであったようだ。
『ふむ……予想以上だ素晴らしい。今回のアクシデントは思わぬものを引き出したということか』
『特に今まで表に出ていなかった彼らはすさまじいな。超能力研究所の秘蔵っ子。先祖返りの異能者。正体不明の宇宙人。……データを見ても信じられん』
「みな強力な能力ですよ。各機関からデータは受け取っていましたが、実際の数値はそれを遥かに超えています。現時点でのアプローチでは再現はほぼ不可能。シーラさんの能力も不確定な要素ではありましたが、未知の領域を引き出せたと言えるでしょう」
『死後の世界か、目の当たりにするとぞっとするな。個人の能力でこのようなことが可能とは』
「死霊の研究が進む現代です。死後の世界も、もはや幻想ではありません」
『さっそく学園の成果が出たという事か。だが我々が直面している事態はこういう事なのだろうね。人である彼らでさえ我々の理解を超えているのだ。我々が予想もしえない脅威などいくらでもこの先出てくるという事だ。人類進化の新たなる可能性の模索とは、君の協力がなくば、実現などしなかったろうね。薊君』
「ありがとうございます。引き続き彼らの観察は続けていきますよ。今後も皆様のご期待に添えるデータを提供できることでしょう」
大まかな報告を終え、一息つく。
しかしディスプレイ越しの彼らには、どうしても致命的に気になるところがあるようだった。
『それでなんだが……一つわからないところがあるんだが? 質問イイかね?』
「はい、なんでしょう?」
『その……この山田とかいう、彼は……なんなんだね?』
そしてその質問は的確にデータの穴をついていた。
「ああ……彼ですか。彼についてまだ不明な点が多いですね。どこかの期間に所属していたということもないようですし」
『竜動寺の引っ張ってきた子だろう? 例のおかしな街から連れて来たという』
『未確認の災害の形跡は多数散見されるのに、なぜか被害が極端に少ないってあの街か』
「ええ、そうですね……彼は、しかしここに来てからすでに成果を上げています」
『しかし資料によると、普通の学校で行われている、EPS検査にも身体検査でも計測不能とある。どういうことなのだ?』
「そうですね。簡易検査で手に負えるものではなかったという印象ですね」
『いやしかし、なんでもないのに怪獣を一撃で開きにはできんだろう? 解析の結果は?』
「不明です。なぜか強いとしか言えません」
『いや、なぜか強いってことはないだろう。記録によると手からビームまで出したそうじゃないか』
「はい。そのような器官があるわけでもなく。それまでそういった能力があったという報告もありません」
『ならなぜビームが出る?』
「それも現時点では、不明としか言えませんね☆」
『いや……☆とか出されてもね。君の頭脳と学園の機材を持ってしてもかね?』
「失礼。ええ。どういうわけかビームが出ます。他にも瞬間的に光速に近い速度を出し、幽体相手でも平気で殴り飛ばしますよ」
『いや、さすがにそれは……原因の特定ができてもいいんじゃないか?』
「それでも原因不明なのですよ。まぁ今のところはですが」
『それはいったいどういうことなんだ?』
「学園にある機材でいくら調べても、共通の結果が出ないのです。その都度能力は変化します。このあたりが彼が能力不明とされた理由でしょう。身体能力が極端に高いかと思えばむらがあり、攻撃手段すら一律ではない。検査時は、データ上普通の人間の平均値でしかない場合すらあるのです。しかしどんな敵が現れようが倒してみせる。なんにせよまだ学園生活は始まったばかりです。更に言えば未知とはこの学園において歓迎すべきものですよ。それを解き明かすために私がここにいるのですから」
ディスプレイの向こうの彼らは手元にあるデータを再び眺めて、うなずく。
『ふむ……確かに』
『それでは期待しよう』
『まだ圧倒的にデータが足らない、そう言う事でしょう』
「ご理解いただき感謝します。ええ、私も人類の更なる発展のために微力を尽くしましょう」
ディスプレイから人の顔が消えてゆく。
薊 マイは穏やかな笑みを浮かべ、暗いディスプレイに向かって頭を下げた。




