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 「……」


 結局後から聞いた話では、大和君は女の子達の力も借りて、無事シーラさんを救出。


 現在は意識を失って、治療施設の病室で眠っているが、命に別状はないそうだ。


 僕は朝になり、脅威が去ったという連絡を受けてからすぐに大和君の病室に向かった。


 だがその足はとてつもなく重い。


「よかったっていう事なんだろうけど……」


 それでもこのぶつけるところの見当たらないやる気と、やるせなさをどうにかしてほしい。


 僕は一人ため息を吐いた。


 やる気満々で待っていただけに、ほぼ戦果なしとは穴があったら入りたい気分である。


「コレくらいしかとりえがないのに、いざって時に役立たずとか……」


 どうにも、合わせる顔がないなとぼんやりとしていたら、見知った顔がこちらに歩いてくるのが見えて、僕はハッとした。


「あれ? 時坂君にホルスト君にべぇだ君?」


 僕は彼らの名前を呼んだ。


 彼らは、ぼんやり薄汚れていて、疲れ果てた様子だった。


 ゾンビのように歩いてくる三人を見て僕は首をかしげた。


「ど、どうしたの三人とも?」


 声をかけると、時坂君とホルスト君とべぇだ君は無言で僕の顔を見て、声をそろえた。


「「「……別に」」」


「そ、そうなんだ」


 そんな一言に尋常ではないプレッシャーを感じ、僕は詳しく聞くのはやめた。


 だがそれでも言っておかねばならないことがある。


 僕はドキドキと胸の音をうるさく感じながら、三人に向かって言った。


「あのさ! みんなで大和君のお見舞いに行かない!」


 だが僕が言うと、ピクリとゾンビだった彼らが止まる。


 そして誰かが言った。


「おい。山田。今から打ち上げするぞ」


「え?」


「いいか? これは決定事項だ」


「ええ?」


「そうそうお菓子食べるよ。脳みそが蕩けそうなほど甘いやつ」


「えええ?」


 そして僕はようやく気がつく。


 彼らのその手にはお見舞いの品と思われるものがそれぞれ大量にあったのだ。


「ついでだ、大和の野郎に挨拶しておくのもいいかもな……謝りたいこともあるしよ」


 そしてばつが悪そうに時坂君の言ってくれた台詞に、僕は心のそこから感動していた。


「う、うん! 大和君もきっと喜ぶと思うよ!」


「やめろって、そういうのいいから」


「それはいいな。時坂の謝罪を見てやろう」


「お前趣味悪いぞ……」


「そうか? 最高の見世物だと思うが?」


「えーホルちゃんも似たようなこと言ってたジャン。ダメだよ一緒に謝らないとさ」


「……まさかそのホルちゃんとかいうの、私のことじゃないだろうな?」


「え? そうだけど?」


「今すぐやめろ」


 楽しげに話す三人様子を見て、嬉しい一方、僕はぬぐぐと唸った。


 なんだかみんなまた仲良くなってる!


 なんだか取り残されてしまった気分である。


 しかしここでめげてはいけない。ここは一つ大和君も含めて和解して、いっそう仲良くなれるようにがんばるべきだろう。


 僕らは、そうこうしているうちに大和君の病室にたどり着いた。


「えっと、ここがそうだよ!」


 僕はあらかじめ聞いていた病室の番号を確認して扉を開ける。


 しかし、扉を開き、その向こうにあった光景に愕然とした。


「はいあーん♪」


「あーむ」


 リオンさんがウサギに剥いたりんごで大和君にあーんをしていた。


「ちょっと! あんまり動かないでよ。拭きにくいじゃない!」


 そしてなぜか早乙女さんはタオル片手に大和君の足を拭いている。


「……お花置いておくね」


 そして花瓶に花を生けながら、マリーベルさんが大和君ににっこりと微笑んでいた。


 シーラさんはさすがに参戦はできず、気を失っているようだったが、同じ部屋の隣のベッドで寝言を呟いていた。


「むにゃむにゃ……大和君」


 いや、驚愕というのは少し違うかもしれない。僕はこの光景を予想していたはずなのだ。


 むしろ、この光景を作り出すことがわかっていて、今回の戦いをした節さえある。


 ある意味これは必然とも言うべき、僕達の望んだ光景なのだろう。


 ただ、もう少しだけ後に来る物だと思っていただけで。


 わいわいと仲がいいのか悪いのか騒がしい病室。


 その喧騒の中で、大和君は僕達に気が付いてはいない。


 だがしかし、気が付かなくってよかったとも思う。


「……」


 僕は青い顔でそっと、友達の顔色を伺った。


「ま、まぁわかってたけどな。こんな感じになんだろうなって。見舞いの品は……ここにおいて置いとけば気がつくよな?」


「……メッセージでも書いておこうよ。邪魔しちゃ悪い」


「……病室だ、これ以上騒がしくするのもな。それに今日はさすがに疲れた」


 少なくとも言葉は前回よりも大人びて聞こえるが。


 ギリッッ……!


 やはりそこには少女マンガのライバルキャラみたいな音を立てる男達の姿があった。


「あっはっは……」


 僕はほろりと泣けてくる。


 新しく始まった日常は、濃いものになるだろう、そういう予感はしたのだが。


 現実は僕の予想を遥かに上回るほど退屈しない学園生活にはなりそうだった。


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