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「おい、どういうわけか液状だぞ? 高い火力で一気に焼くか? どれ、我が太陽の威光を見せてやる」


「絶対やめろよー。こういうもんだから」


「む、そうなのか?」


 もんじゃ焼きを食べる時の小さなへら、正式名称はがしという。


 時坂君ははがしでもんじゃをこそぎ取り、食べる前に言った。


「でさ。お前らさ、実際この学園どう思った?」


 そして食べる。表情が変わり、二口目に挑戦したところを見ると気にいったようだ。


 するとホルスト君は横からシャカッともんじゃをこそぎとると口に入れ、質問に答えた。


「そうだな、思っていたよりも拍子抜けと言ったところか」


「……オレのもんじゃ」


 今度はべぇだ君ははがし二個もちで結構な量をとり、口に放り込む。


 その速さは目にも留まらない、警戒していても防げる物ではないだろう。


「ボクはおおむね満足かな。能力云々の話は面倒だけど、女の子は写真で見るよりずっと素敵だったしね!」


「お前そればっかな。だからオレのもんじゃ……」


「大事な事だと思うけど?」


 ぷぅっと頬を膨らませるべぇだ君であるがおそらくもんじゃが熱いのだろう。


 では僕も一口。


「だから! これオレのもんじゃだからな!?」


「あ、ゴメン」


 おいしそうだったからつい。


 時坂君はちゃかちゃかともんじゃを集め、四角く自分の能力でまとめて口の中に放り込んだ。


 あら、それ邪道。


「ぐおっふ」


 その報いとして相当熱かったらしい。悶絶する時坂君にホルスト君とべぇだ君が大爆笑だ。


 僕はラムネを一本買ってきて、一気飲みした時坂君は赤面して仕切りなおしていた。


「うおっほん……オレはもっと殺伐とするもんだと思ってたんだよ。だがけっこう普通に学校してるのがなんか不気味じゃねぇか?」


 はがしで僕らを次々差してゆく時坂君だったが、べぇだ君にはあまりピンと来なかったらしい。


 指先に光を灯し、その光を怪獣型にして空中で動かして見せた。


「そうかな? 結構危ない奴も頻繁に襲ってくるし、普通ではないでしょ。この先能力開発とか、戦闘訓練だってあるみたいだし」


 べぇだ君が言うように、確かにもう何度か戦うことはあった。


 ガイダンスによれば、この先普通の高校と同じように最低限の一般教養は行われるが、戦闘訓練のような授業もあるようである。


「でもそれこそ、オレらみたいなのにはいつものことだ。まだ様子見か知らんが……なんにしろ始まったばかりだって事はお互いに気にしておこうぜって話」


「……」


「……」


「……」


 だがそう言われると僕らも黙ってしまう。


 確かに、時坂君の言うことはなんとなくわかる。


 僕以外の誰もが、最初からそのつもりで来ていたと聞いた時、僕も知らなかったなりに納得はしたのだ。


 僕すらそうなのだから、戦うことが得意だという自覚はここにいる誰もが持っていると思っていいだろう。


 だからこそ、ぴりりとした緊張が僕らの間に生まれた。


 その時、僕の頭はわしっと掴まれ、なでられて、僕らの視線は一点に集まった。


「強さを君らに求めている、確かにそんな側面もあるが……それだけがこの学園の存在理由ではない」


「校長先生?」


 振り返ると、そこにはエプロンをした校長先生が立っていた。


 校長先生は太い指で時坂君を指差した。


「時坂君! 君の疑念はもっともだ! だがね? ただ戦う力だけを求めているのならあえて学園などにする必要はないとそうは思わないか?」


 確かにその通り。その部分には時坂君も頷いた


「まぁ……だが現にここには戦闘能力が高いやつが集められている。その事実はかわんねぇ」


「そうだとも。ここでは戦うこともまた日常だ。だがそれだけではない」


「ほほう。竜動寺殿。ならばなぜ、初日に色々とけしかけた? 駅前ではずいぶんくだらないことをするものだと思ったが?」


 ホルスト君がなにを言っているのか僕にはわからなかったが、ちょっと考えて。


 一番最初にやって来た日、彼らが駅周辺で戦っていたところを思い出した。


 アレって偶然じゃなかったのか。


 なるほどだからあんなに騒がしかったのかと僕は妙に納得した。


 校長先生はどんな顔をするのだろうと思ったが、びっくりするほど堂々とした物だった。


「無論、君達の事をよりよく知るためだ。ここを学園としたのは君達に様々な交流の機会を得てもらうためだからね。時に学び、考え、行動し、影響しあえばぶつかることもあるだろう?」


「そう聞くとなんだか普通の学校っぽいね、やり方めちゃくちゃだけど」


 べぇだ君はほほうと唸り頷く。


「うん。やり方はともかく」


 僕もある程度は納得して頷いた。


 結局こんな変なことが沢山起こるのが当たり前の時代なんだ。


 実家に居たって毎日戦っていた。


 そして周りの顔ぶれを見ればひとりでいるよりずっと頼もしいのは間違いない。ひょっとすると今までと違った生活がここにはあるかもしれないという希望も湧いてくる。


 校長先生はとりあえず大きく頷いて話をシメに入った。


「硬く考える必要はないだろう? 学校で大いに青春して、たまにこの店に菓子でも食べに来るといい! その時はいつでも歓迎しよう!」 


 それを聞いたホルスト君はまったく納得した風ではなかったが、ひとまずそれ以上の質問はやめることにしたようだった。


「ふむ……どこまで本気で言っているのかは知らないが、今はひとまず不問にしておこうか」


「ああ! だが今語ったことは真実さ!」


「ははっ。真実など語る者次第だろうに。まぁよい。その時が来れば自ずと答えは出るだろう」


 それでいいかとホルスト君が時坂君に視線を投げる。


 すると時坂君は不満そうな顔ながら頷いた。


「そうだな……じゃあその時までせいぜい学園ってやつを楽しむことにするよ」


「ハハハ! それいいね! 青春ドラマも僕は結構好きだよ?」


「青春つーほど、普通に学生やれる気はしねーけど」


「仮に出来たとして、大和の奴がいる限り灰色の青春になりそうだが」


「えーそれはやだよー。それこそまだ始まったばっかりじゃないか!」


 和気藹々と話が弾み始めたことが嬉しくって、僕も話に混ぜてもらうことにした。


「じゃあ僕達、今のところモテナイーズということで……」


「「「その名前はない」」」


「えー」


 総ツッコミである。


 なかなかいいネーミングだと思ったのに残念だ。




「うぁ……本当に駄菓子屋がある」


 僕が密かに落ち込んでいると、聞き覚えのある声が店の中に入ってきて、全員に緊張が走る。


「よ!」


 僕に手を上げて挨拶していたのは、話題の大和君だったのである。



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