72話 代理人2
「この度は大変申し訳ございませんでした。」この人物が園長先生だった。私は問題ありませんと伝え、加賀美の代理人として再度名乗ると、園長は後ろを振り向いて誰かを呼んだ。すると廊下から1人の男の子が現れた。私は相変わず事態を飲み込めていなかったが、園長は自ら状況を説明し始めた。話によると、加賀美先輩の依頼でこの子を、ある場所に連れて行く予定だったが、自分の方が身動きできなくなってしまい、急遽こちらから迎えに行く流れになったということだった。私は行き先を教えてもらうと、園長はメモ用紙を私に手渡した。その住所は都内の私も知っている大手の撮影スタジオだった。
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私とその子どもは保育園前のバス停で待機していた。私の体にこびりついた泥はようやく乾き、叩くとボロボロと落ちていった。
「…おじさん、俺のことは心配しなくて良いからさ。先に帰って良いよ。」その子どもは私に向かってそう言うと、ボールを蹴るふりをした。私はそれは無理な相談である事を伝えた。
「…分かった。俺、京太郎。」と自己紹介されたので、私も自分の名前を名乗った。私は京太郎にこれからどこに行く予定なのか確認すると、分かっていると即答された。次に向こうで誰が待っているのかを尋ねると、お姉ちゃんと言われた。私はその調子で、京太郎と話すことがなかった為、ただ質問を繰り返した。そして、2人はバスに揺られながら目的地へと向かった。
スタジオから1番近くにあるバス停で降りると私と京太郎はスタジオ前のコンビニエンスストアに入った。京太郎はバス停に着く2分前にお腹が空いたと愚痴を言っていたのだった。京太郎がパンコーナーでいくつか食べたいパンをピックアップしている間、私はレジ前のベンディングマシーンで珈琲を淹れ一息ついた。すると、突然、京太郎の叫び声が聞こえたので、直ぐに駆けつけるとそこには1人の女性が京太郎の腕を捕まえていた。
「いたた、痛い!お巡りさん、知らない人が捕まえに来たよ…あ、お兄さんっ!」京太郎は半泣きになりながら、その女性から手を振り払い、私に向かって走って来た。
女性は私の姿を見るなり、厳しい顔つきで近づいてきた。
「そこの、見ず知らずの貴方…どいて!私はその子に用があるの…!」
「…あ、いや、すみませんが、実は私にも理由があって、この子を保護しなくてはいけません。もうすぐ、そこまで連れていけば、仕事は終わりですので、一旦私に預けては頂けませんでしょうか?」私も自分が京太郎を送り届ける任務が100%終わっていないことに気が付き、京太郎の手を握って、前から迫りくるその女性を牽制した。
「…え、そうなの?てっきり加賀美さんが行くのかと思ってた。」とその女性は途端に姿勢を戻し、キョトンとした顔で言った。




