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6人のアイドル候補生!  作者: 8-digit
第1章
7/88

6話 宮代亜美の初見

宮代亜美はその日、いつもと代わり映えのない朝を迎えていた。


父親は、いつも忙しく、亜美のライフイベントを優先できない自分を罵りながら、結局入学式でさえも出席することはなかった。しかし、亜美は、そんな父親に少しも腹を立てず、むしろ煩わしさがなくて気が楽だった。


亜美は父親が既に出勤してしまった後の家でひとり、トーストを焼いて、ミルクティーを飲む。これが日課だった。勿論、その日も例外ではなく、いつもより甘めのミルクティーを飲んでから学校へと出かけた。


入学式は進学校らしく、壇上では、各業界の代表者が順に歓迎の挨拶をしていた。例えば、その日の新聞の記事で読んだ、日本で最も使われているインターネットのショッピングモール進天の社長や、地元の議員、有名な漫画家など、そして、最後に言葉を述べたのは、ワンダラスコープという会社の副社長だった。


いつも新聞を読む亜美だが聞き覚えのない会社だった。


亜美のクラスは1年1組だった。入学式が終わるとクラスではどこもオリエンテーションが行われていた。1組では、先ず担任の先生から自己紹介があった。年齢は30代?黒髪、ショートヘアの可愛らしい先生だった。先生が、学校のルールや行事、中間・期末試験の時期、そして部活動など、一通りの説明があった後、


「それでは、皆さん、机を下げて、椅子だけ中央に持って来て下さい。これから自己紹介をしてもらいます!」と2回手を打った後、元気よくアナウンスした。


その瞬間、亜美は背筋が凍りついた。


私が一番嫌いなイベントきたーーー、亜美は表情を出さないよう無言でそう言った。この手のイベント発生時に必ずエンカウントするのは自分の順番がだいぶ後になってしまうことだった。どうせなら最初にやって安堵しておきたいのに…。宮代の頭文字は、まみむめもの「み」、あかさたなはま、「ま」の列、どう考えても後の方だった…。亜美は仕方なくノートを開けて自分の言うことをテキストでまとめようとしたその時、


「それでは、あいうえお順だと少しつまらないので、先生がランダムにあてていこうと思います。あ、でも自己紹介と言っても立ったりしないで大丈夫よ。先生がファシリテーション役になるから質問したり、意見を聞いたりする時に答えて下さい。」先生はそう言って、説明を加えた。


亜美は安心した。そのやり方なら、自分でも大丈夫かもと、そう思えた。そして、クラス全員が教室の真ん中の方に自由に着座すると、先生はタブレットに向かって、


「それでは始めます。」と言って、教卓の上に設置した。


その後、先生は世間話、最近のニュース、話題の動画、そして好きなアイドルの話まで、終始和やかに行われた。唯一気になった点は、先生は生徒が何かを発言する度にタブレット上で何かをタップしていたことだった。自分への質問は、今日登壇したゲストについて気がついたことはありますか?という内容だった。


その時、1年2組から大きな笑い声が聞こえてきた。


「し、失礼しました〜。」誰かの申し訳無さそうな声が聞こえてきて、亜美はリラックスした気分になった。


そして、亜美は、今朝読んだ新聞の内容を参照しながら、今日来賓したゲストがどのような会社で何をしているのかについて説明した上で、今後の授業で、もっとこういう人たちから話を聞く機会があると学校生活の意義が高まるのでは、という意見を述べ、クラスから小さな拍手が起こった。


亜美はその日、ただのクラスメイトから、頼られる存在へと昇華した。

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