3話 私の課題
多くの企業に不足しているのは人だ。
私が所属するワンダラスコープも例外ではなく、常に人材を必要としていた。ただし、調べる/考える作業を人工知能が担うようになった昨今において、総合的な動きができるゼネラリストのような人材が必要とされることは稀で、多くの企業は人工知能が示した指標に対し、迅速にタスクフォースを構築し、関係者との調整ができるスペシャリストこそが望まれていた。
私は特別なスキルや能力を持ち合わせている訳ではなかったが、自分なりに考えた結果が人工知能がアウトプットする方法や答えと似ている、ただそれだけの理由で、この会社に採用された。
ワンダラスコープは「進化するアイドルの創造」をミッションに国際ビジョナリーカンパニーオブザイヤーを何度も受賞する企業だが、表向きには独自に開発する人工知能を国内外の様々な企業や自治体に提供するシステム会社であった。
そして、ワンダラスコープが手掛けた人工知能が関わった企画は言わば約束された地だった。私たち人側は人工知能がアウトプットしたデータを基にやることを最短でやる、それだけだった。
何か問題があったらそれはオペレーションが予定期間内に完了しなかったか、又は外的要因か、その2つしかないと結論付けられた。だから出来ることを全てやって脱落しないよう心がけた。
今回私が抱えている新規プロジェクトはまだ公開されていない、来月から始動する新たなオーディション企画だった。