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1話 「入部」

お久しぶりです。

部員の数を5人から4人に変更しました。

よろしくお願いします。

俺には前世の記憶がある。

人格も確かにある。

新たに生を受けた世界は俗にIFと呼ばれる世界だった。

何がもしもなのかは直ぐに分かった。

女性に対する美醜感覚が前の世界とは大きく違ったからだ。

いや、大きくと言っては語弊があるかもしれない。

それは大きくでは収まらない程の差があり、言うならば反転していると言った所だろう。

話は変わるが前世の俺は不細工だった。

しかしそこまで酷かった訳では無い。

下の上程度ではあったし、それを補える程の頭の良さがあった。

そのお陰かどうかは知らないがしっかりと生き抜く事が出来た。

そう考えると顔が良いだけの男よりは遥かに良かったのかも知れない。

しかし、女性と結ばれる事は無かった。

縁がなかったとまでは言わない。

仕事は人と比べて良く出来ていたし、後輩の女性からは頼られたりもした。

しかし、男に生まれたからには女性と結ばれたいと思ってしまうのは仕方が無かった。

だから生まれ変わり、美醜が反転していると気付いた時は、前世で年寄りまで生きていたとは思えない程酷く興奮した。

しかし俺はイケメンだった。

しかも今まで見た事が無い位にイケメンだった。

俺は絶望した。

しかしそれが杞憂に終わったのはその直ぐに後だった。

何故なら美醜が反転しているのは女性だけだったのだから。

さて、話は変わるが男がモテる要素としては顔が良い、頭が良い、そしてもう一つ、運動神経が良いの3つが基本だと思う。

この内2つはある。

しかし1つ足りない。

俺は絶対に女性にモテたかった。

その為にはどんな苦労だってする気でいたし、万全を期す為には早くから始めた方がいいと思っていた。

だから俺は小学生の時に柔道を習い始めた。

それ以外にも剣道、空手、ボクシング、思い付く限り全てやった。

一通り極めた頃には、俺は近所では有名になっていた。

しかしそれが良くなかった。

俺は不良だと思われてしまったのだ。

これではモテない。

そこで俺は高校生になるのを切っ掛けに噂の届かない所で一人暮らしを始める事にした。

幸い親は俺を信頼してくれているし、割と裕福な家庭なのでそこなで問題は無かった。

そして俺は今日も、高校に通うのだった。


2つ大事な事を忘れていた。

1つはこの世界にあるもう一つの特徴。

「美醜感覚ライセンス」通称「びーセン」。

B専と同じ読み方から皮肉って「ブサイクライセンス」と呼ばれたりもする。

これはその名の通り持ち主の美醜感覚を5段階、つまり「A」「B」「C」「D」「E」の五つのランクに分けた物で、男性だけに発行される物だ。

これは容姿に恵まれていない女性を対象とした結婚詐欺が多発した時期に、詐欺を減らす為に実施された物で婚姻届を出す前に相手に対してきちんと提示しなくてはいけない法律になっている。

「A」に近付けば近付くほと美人、「E」に近付けば近付く程ブサイクが好きという事になっており、男なら誰しもが小学生の時に検査を受けている。

勿論俺は「E」だ。

重要なのはここからだ。

近年の少子化を受け、政府はどうにか出生率を上げる為の苦肉の策を考え付いた。

びーセンのランク「D」「E」を所持している男性は重婚が認められたのだ。

つまり、結婚出来ない女性をどうにか結婚させようと言う訳だ。

これにより俺は合法的にハーレムが作れる様になったのだ。

そして、もう一つ、大事な事がある。

それは俺の名前だ。

俺の名前は河依かわい しょう、後に美醜感覚以外は完璧な男として話題になる男だ。


俺は高校に行く為に通学路を歩いていた。

最近入学したばかりだからそこまで見慣れた道では無かったが、早くもその新鮮さは失われようとしていた。

しかし俺の心は浮ついていた。

何故なら今日どの部活に入るかを決める日だからだ。

因みに俺は部活を見学したりは一切していない。

ある部活の話を聞いてからその部活に入る事を固く心に決めたからだ。

そんな事を考えている内に俺が通っている学校が見えてきた。

俺が校門に近付くにつれ周囲も騒がしくなってくる。

実に青春な感じがするが原因の5割は俺だ。

今日は何時もより騒がしいから、恐らく俺がどの部活に入るかを気にしているのだろう。

だが安心して欲しい。

確実に君達と一緒では無いから。

俺は下駄箱で靴を脱ぎ、そのまま4階にある一年生の教室に向かった。

俺は2組だが、引っ越して来て友達も居ない俺にはクラスなどあまり意味は無い。

教室のドアを開け軽く挨拶をしたら、真っ直ぐ自分の席に向かう。

クラスメイトの視線、特に女子の視線を感じるが今日も誰も話しかけて来なかった。

鞄を降ろし、席に着いた俺はおもむろに振り返った。


「菅原、今日は何を読んでいるんだ?」


菅原すがはら 千聡ちさとは俺の席の後ろにいる女子で、この世界で言うブサイクだ。

毎日の様に小説を読んでいるが、その内の半分以上はライトノベルだ。

しかし頭が良く、最初のテストでは俺と並んで学年1位だった。

入学初日に話しかけた相手だが、いきなり話しかけたせいかプチパニックを起こされて困ったものだった。

周囲もプチパニックだったが。

しかし毎日話しかけたお陰で最近は落ち着いた反応を返してくれる様になったことは大きな進歩だった。


「今日も、ラノベ。」

「ほう。今日はどんな内容なんだ?」

「異世界召喚された、勇者が、ハーレムを作る、話。」

「テンプレだな。」

「うん。」


菅原はあまり良く喋る方では無いが、俺は落ち着くから好きだった。

と言うか、女性として好きだった。

当然だ。

俺から見れば美人だし、何より話が合う。

何度か告白しようかとも思ったが、今告白してしまえば恐らく本当にパニックになってしまうだろう。

だから慣れてくれるまでは待つ事にした。


「俺もラノベを読んでみたんだがなかなか面白いな。」

「どんなの、呼んだの?」

「俺が初めて喋りかけた時に読んでいた乙女ゲームの悪役令嬢が逆ハーを築く話だ。」

「覚えて、たの?」

「まあ、お前の事だったからな。」


そう言うと菅原は顔赤くして俯いてしまった。

ふふ、可愛い奴め。


「そう言えば、部活はどうするんだ?」

「ん、文芸部に、しよっかなって。」

「あー、やっぱりか。」


そう言うと菅原は悲しそうな顔をした。


「ああ、いや、すまん。そういうつもりで言った訳では無かったんだ。」

「大丈夫、分かってる。」


この学校の文芸部は他の文芸部とは一味違う。

何故なら部員が全員ブサイクな女子だからだ。

何故そうなったかは知らないが、今ではブサイクな女子は皆その部に入るらしい。

理由は簡単、気を使わなくて済むから。

周りがみんなブサイクならいじめられる心配も無いし、集団で居ればいじめの対象にもなりにくいしな。


「河依くんは、何処に、するの?」

「秘密だ。ただきっと菅原が驚く様な部に入るとだけ言っておこう。」

「気になる。」

「そんな目をしても駄目だ。」


勿論俺が入ろうとしている部活は文芸部だ。

ブサイクしか居ないとはつまり俺から見た美人しか居ないという訳だ。

そんな感じで菅原と話しているとチャイムがなった。

授業も休み時間も特に目立ったことが無く進み、あっという間に放課後になった。

ここから一年の生徒はそれぞれが入部したい部活に入部届けを出しに行く事になっている。


「河依くん、また、明日。」


そう言って菅原は教室を出ていった。

まあ明日になる前に合うんだが。

俺は教室の全員が入部届けを出しに行った後に教室を出た。

無駄な騒ぎは起こしたくないからな。

文芸部の部室は1階の隅にある。

俺は部室のドアを開け中に入った。

当然注目が集まる。

全員の視線が俺に向いて、そして、停止した。

俺はグルッと部室を見渡した。

部室には机がいくつかと椅子がいくつか、本棚にホワイトボード、そして机の上にはお菓子が数種類置いてあった。

部員は4人、その中の1人は菅原だが後は全員知らなかった。


「すまない、部長はどなただろうか?」


そう言うと如何にもドジっ子と言った感じのオーラを放った女性が立ち上がり、そしてこけた。


「ぎゃふん!」

「あー、大丈夫か?」


そう言うと彼女は素早く立ち上がった。


「はは、はい!大丈夫れす!」

「大丈夫に見えないんだが。」

「いえ、本当に大丈夫なので。私が部長の狭川さかわ 朋恵ともえです。それで、どんなご用でしょうか。」

「ああ、入部届けを出しに来たんだ。」

「え?」


そう言うと狭川さんはその場で停止してしまった。

段々再起動し始めていた部員達も同様に停止し、菅原は本を滑り落とした。

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