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ポスト君の観察日記

作者: ケマ オサム(モーバー輝ひさ)

 オイラは郵便ポスト。住宅街の中の駄菓子屋の前に立っている、どこにでもあるただのポスト。けど、ただなんとなく立ってるようでちゃんと周りを観察しているんだ。この前も、こんなおもろいことがあったんだ

それは雨の日の出来事であった。夜の10時頃くらいか。一人の男の子が駆け込んで来た。雨の雫で顔はびしょびしょだが、明らかに雨とは別の水滴が頬を流れていた。

男の子は駄菓子屋の軒下に入ると座り込んだ。微かながらすすり泣く声がする。見た感じ、小学生低学年くらいであろうか、髪の毛は短くかりあげられていて、学校指定らしい白い靴を履いていた。

「親とでも喧嘩したのかな」ポストは心配そうに彼を見つめた。

「ニャー」

どこからか猫の泣き声がする。

「ニャー」まただ。一体どこからだろう。男の子は顔を上げ、あたりを見回した。すると、子猫がポストの裏で震えて立っていた。少年は立ち上がるとその猫に近づいた。子猫は逃げるそぶりを見せず、その男の子の成すがままに抱かれた。男の子は子猫をそっと抱き上げるとそのままひざの上にのせ、さっきまでいた屋根の下に座った。

子猫はずぶ濡れの体を少年の体にこすりつけ、少しでも乾かそうとしていた。男の子は子猫の頭を優しくさっすていた。

「お前も迷子か」声はどこか悲しそうに男の子は、子猫に語りかけた。

 すると突然、子猫は男の子のひざから立ち上がると雨の中を走っていった。目でその子猫を追うと、向かい側にある電柱の影から一匹の猫が出てきた。どうやら、子猫の母親のようだ。

 母猫は子猫の顔をさするとそのまま子猫を連れて暗闇へと消えていった。男の子は、ただそれをじっと見つめていた。静かに、そして、少しだけ羨ましく思いながら・・・。


「起きろ」男の子の前には大柄な男が仁王立ちしていた。すでに雨は上がり、男の子はいつのまにかその場で眠ってしまっていたのである。

「心配かけやがって、帰るぞ」男は男の子の頭をなでた後、そのまま後ろを向き歩き出した。男の子は少しの間その背中を見つめていたが、ゆっくりとその背中を追いかけ、家路へとついた。


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