じゃんけん(千字)(童話)
今日も五人の子供たちは野原で遊んでいました。
「ねえ、電車ごっこしよう」
「電車ごっこ? 知らないよ。どうやるの」
「誰かが運転手になって、みんなはその子の後をずっとついていく遊びだよ」
「運転手はどこへ行ってもいいの?」
「いいよ。そして他の子は、絶対にずっーと、運転手についていかなくちゃいけないんだよ」
途端に不平の声があがりました。
「ええ~、水たまりとかも」
「もちろん」
「泥の中とかも」
「もちろん」
「薮の中とかも」
「もちろん」
「でも、面白そうだね」
「試しにやってみようか」
そこで先頭の運転手を誰にするか、じゃんけんで決めることになりました。
「じゃんけん、ぽん」
グー、チョキ、パーが混ざっています。
「やり直し。じゃんけん、ぽん」
やはり、グー、チョキ、パーが混ざっています。
「もう一度。じゃんけん、ぽん」
それでも、グー、チョキ、パーが混ざっています。なかなか決まらないので、一人の子が提案しました。
「三種類だと決まらないから、グーかパーのどちらかしか出さないようにしようよ。いいかい、じゃんけん、ぽん」
全員、パーを出しました。
「あいこか。もう一度。じゃんけん、ぽん」
やはり全員パーです。そこで別の子が提案しました。
「みんなパーを出すから、あいこばかりだ。グーかチョキしか出しちゃいけないことにしようよ。いくよ、じゃんけん、ぽん」
全員グーを出しました。
「あいこか。もう一度、じゃんけん、ぽん」
やはり全員グーです。またまた別の子が提案しました。
「パーもグーも駄目ってことにすればいいんじゃないかなあ。いくよ、じゃんけん」
「待ってよ、そしたら、チョキしか出せなくなって、あいこばかりになっちゃうわ」
「あ、そうかあ」
五人は困ってしまいました。そうこうしている内に日は傾いて、遊ぶ時間が少なくなっていきます。と、一人の子が手を叩きました。
「そうだ、先頭を決めようとするからいけないんだよ。縦じゃなく横になって並べば、じゃんけんをしなくても済むんじゃないかな」
そこでみんなは横一列になって手をつなぎました。
「いくよ、それー!」
傾きかけた夕陽に向かって、五人は走り出しました。引っ張ったり引っ張られたりしながら、それでも満面の笑顔を輝かせ、まっすぐ横一列になった子供たちは、お互いの手をしっかりと握りしめて走っていきました。




