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9話『メガネ君とラーテル』

「メガネ君メガネ君メガネく~ん!」


「・・・煩い。去れ、居ね!」


「いや~ん!いつにも増して冷たい態度!ゾクゾクしちゃう!」


「寒気がするなら帰れ」


「心配してくれるなんて嬉しい!これって愛ね、愛!」


「・・・どうしたら、そういう解釈になるんだ?」


「うふふ。めげない・諦めない・びくともしない心の強さは美花ちゃんの長所!」


「激しく傍迷惑な長所だな。つーか、自分を名前でちゃん付けすんな」


「たまに言わないと忘れちゃうでしょ!メガネ君が毎日呼んでくれればいいのに」


「呼ばないし呼びたくない」


「女子の名前を気安く呼ばない硬派なメガネ君も素敵!」


「だから、どうしてそんな解釈に・・・、ったく、君の神経はラーテル並に頑丈だな」


「ラーテル?」


「・・・知らないのか?」


「何それ?どんな物?」


「物っつーか・・・これだ」


「動物図鑑?・・・えっと、この頭と背中が白くて足が黒いイタチみたいなのがラーテル?」


「そうだ。アジア大陸やアフリカのサバンナに生息する雑食哺乳類で、The must fearless animal・・・つまり、“世界一怖いもの知らずの動物”としてギネスブックに登録されている」


「えぇ!?そんな精神的な理由でギネスブックに載っちゃうの!?」


「載っちゃうくらい、とんでもない動物なんだよ、ラーテルは」


「どこがそんなにとんでもないの??」


「そうだな・・・ラーテルの体長は1m弱だが気性が荒く、自分の何倍もあるライオンや水牛、人間なんかにも、捕食こそしないが平気でケンカを吹っ掛ける」


「えぇ!?無謀な・・・」


「更に、ラーテルの頭と背中の皮膚は、柔らかく伸縮性に優れているのに物凄く強靭で、ライオンの爪や牙、ヤマアラシの針も通さない」


「ら、ライオンに噛まれても平気なの!?」


「余裕だな」


「丈夫だね、ラーテル・・・」


「そして、雑食のラーテルは果物や野菜、ネズミやトカゲ、他の動物の屍肉・・・とにかく何でも食う」


「あ、悪食だ・・・」


「コブラなんかもバリバリ食う」


「え!?コブラって、毒蛇でしょ?捕まえる時、噛まれたりしないの!?」


「勿論、噛まれる」


「ひぃ!」


「しかし、ラーテルには蛇の神経毒への耐性があって、毒で痺れて倒れても、数時間後には元気に復活する」


「えぇ!?コブラの毒でも死なないの!?凄い!」


「ラーテルの和名は『蜜穴熊(ミツアナグマ)』、これは英名の『Honey badger』を直訳したもので、要するに、蜂蜜好きのアナグマって意味だ」


「蜂蜜も食べるんだ・・・」


「その名の通り、蜂蜜好きのラーテルだが、実はそれほど蜂の巣探しに長けている訳ではない」


「大好きな食べ物を上手く探せないの?なんか残念ね」


「そこで、ミツオシエという鳥の力を借りる」


「鳥??」


「ミツオシエはラーテルと同じく蜂蜜が好物の鳥だが、蜂の巣の中に突っ込んで蜜を奪う程の力はない。だから、蜂の巣を見つけると、ラーテルの周りを鳴きながら飛んで蜂の巣まで誘導し、ラーテルが蜂蜜を食べた後のおこぼれに預かるんだ」


「ラーテルもミツオシエも蜂蜜食べれてウィンウィンだね!」


「共生関係ってやつだな」


「ラーテルなら蜂の巣なんか簡単に壊せちゃいそうだもんね!」


「・・・それがそうでもない」


「え?」


「ラーテルは頭や背中は強い皮膚に覆われてるが、他の部分はそうでもないらしい」


「・・・と言うと?」


「顔なんかは攻撃されると普通にダメージを受けるらしい」


「・・・って事は?」


「蜂の巣に突っ込めば、大量の蜂に刺される。顔や・・・それこそ体全体を」


「ひぃ!痛くないの!?」


「勿論痛い。それでも突っ込む」


「えぇ!?」


「痛さで悶え苦しみながらも、蜂蜜を食らって食らって食らい続ける」


「ひえぇ!ラーテル無謀過ぎ!!」


「どんな敵にも引かぬ、媚びぬ、省みぬ。それがラーテルだ」


「凄すぎだよ、ラーテル。・・・でもさ、無敵のラーテルにも例外があるんだね!」


「何がだ?」


「ミツオシエよ!何でも食べちゃうラーテルだけど、共生してる小鳥には優しいんでしょ?ちょっとギャップ萌えよね!」


「・・・勝手な幻想を粉々にして悪いが・・・」


「何?まさか・・・」


「ラーテルは、蜂の巣の在りかを教えに飛んできたミツオシエを当然のように捕食しようとする」


「えー!?せっかく蜂蜜の場所教えてくれるのに、その前に食べようとしちゃうの!?」


「そこがラーテルのブレないところだ。鳥も蜂蜜も、同列に餌は餌なんだよ」


「がーん!!」


「ミツオシエは自分が蜂蜜を食べたい故に、ラーテルの猛攻を必死で躱しながら、蜂の巣に誘導してるだけなんだ」


「・・・命懸けの自己中な共生関係ね・・・」


「それが自然界の掟だ」


「はぁ~。なんか、ラーテルが壮絶過ぎてビックリだったよ。早速マミにも教えとこ!」


「・・・毎度、要らん情報を送るなよ」


「いーの!メガネ君に私はラーテルに似てるって言われちゃった♪って書いとこ!」


「・・・今の話聞いて嬉しいのか?ラーテルに似てるって言われて」


「嬉しいよ!だって・・・」


「?」


「メガネ君、ラーテル好きでしょ?」


「・・・!」


「好きな人の好きな物に似てるって言われたら嬉しいよ。あ、バイトの時間だ!もう行かなきゃ。メガネ君、またね!」


「・・・おう」


・・・・・・


「ちっ。あいつたまに鋭いんだよな・・・ムカつくっ」

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