2話『メガネ君とパンダ』
「めっがねくぅ~ん!」
「・・・また来たか」
「えへへ。何読んでるの?」
「ナチュラルに隣の席に座るな。・・・論語だ」
「うゎ、漢文だ!しかも、送り仮名も返り点もない!」
「慣れれば普通に読める」
「慣れるまで読まないよ、普通は!」
『静かに‼』
「ひっ、すみません・・・」
「・・・君は何度怒られる気だ?」
「うぅ、大人しく本読んでよう。メガネ君、お薦めある?」
「どんなジャンルが希望だ?」
「んっと、可愛くって読みやすくて頭が良くなる本!・・・って、そんなの無いよね」
「アレだな」
「あるの!?・・・ってか、動物図鑑じゃん!」
「気に入らないなら読むな」
「あ、動物の写真かわい~!」
「・・・結局読むのか」
・・・・・・
「わぁ!メガネ君見て見て、大発見!」
「何だ?」
「ほらここ。パンダって肉食目なんだって!」
「そりゃ、あいつらああ見えて熊だからな」
「でも、パンダって笹しか食べないんでしょ?」
「たまに昆虫や小動物を食べる事もあるらしいが、主食は笹だな」
「笹ばっか食べてるのに肉食動物なの?草食動物じゃなくて」
「分類上は、そうだ」
「じゃあ何でパンダは肉食なのに笹食べてるの?」
「それは謎だ」
「謎?」
「氷河期の食料不足から、豊富に生えていた笹を食べるようになったという説があるが・・・」
「ふむふむ」
「そもそも、肉食獣の腸を持つパンダにとって、笹のようなセルロースの多い植物からの栄養摂取は効率が悪い」
「ええと、食べてもあんまり栄養にならないって事?」
「そうだ。それなのに当のパンダは巨体で消費カロリーが半端じゃない」
「ああ見えて熊だからねぇ・・・・」
「だから、一日中笹を食ってゴロゴロ寝てなきゃ生きていけないんだ」
「えぇ!?あれって、ただダラけてた訳じゃないんだ!」
「君と一緒にするな」
「くぅっ、痛いとこ突かれた!」
「パンダは景色に溶け込む為に体毛を白黒に、笹を掴みやすい様に前足の形まで進化させ・・・」
「・・・」
「そこまでして、あまり栄養のない笹を食い続ける珍獣だ。肉食獣の食生活をしていればもっと生きやすいのに。俺には理解出来ん」
「・・・私には、ちょっと解るな。パンダの気持ち」
「は?」
「きっとパンダは笹が好きなんだよ。栄養効率とか、生きやすさとか・・・そんな事どーでも良くなっちゃうくらい大好きなんだよ!」
「非論理的だな」
「好きってそういうものだよ。私だって、読書苦手だしお喋りだしで図書室には不似合いな存在だけど、メガネ君が好きだから毎日ココに居続けてるんだもん!」
「・・・有馬」
「・・・メガネ君」
「俺は笹扱いか?」
「え!?ちが・・・っ」
「そういえば、君はパンダに似てるな」
「え?どこ?可愛いところ!?」
「主に体型」
「がーん!酷いよメガネ君!私、標準だもん‼」
『静かに‼』
「ひぃ、ゴメンなさいぃ」
「学習能力の無い・・・」
「しくしく。今日はもう帰る。メガネ君、また明日ね」
「来なくていいぞ」
・・・・・・
「少し言い過ぎたかな。・・・明日フォローしとくか」