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14話『メガネ君と鳥の夫婦』

「メガネ君~!」


「・・・はぁ」


「どーしたの?ため息ついちゃって!幸せ逃げちゃうよ~?」


「・・・君がため息の原因だと何故気付かない?」


「あれあれ~?美花ちゃんの可愛さに、思わずため息出ちゃったの~!?」


「・・・」


「?どうしたの?目つぶって黙り込んじゃって??」


「現実にやると俺が捕まるからな。思想の自由を行使している。今、頭の中で君を細かく切り刻ん・・・」


「わー!ごめんなさいっ!大人しくするから、R15じゃ効かないような残虐妄想しないでっっ!!」


「ったく。・・・結婚式、どうだった?」


「あ、メガネ君から話を振ってくれるなんて珍しい!さては私の振袖写メに興奮しちゃったな~?」


「・・・もう二度と訊かない」


「いやー!訊いて聞いて!すっごい美味しかったよー!伊勢海老のグラタンとか、フォアグラがのった牛フィレステーキとか、デザートブッフェとか!!」


「花より団子か」


「新婦さん、綺麗だったよ~!新郎さんも優しそうで、幸せいっぱいって感じだった!」


「女子って、外見に誉める箇所がない時に『優しそう』とか『いい人そう』って表現使うよな」


「・・・メガネ君ってサラッとものっそい毒吐くよね」


「俺は言葉をオブラートに包まん」


「むぅ・・・、そんなメガネ君の正直な所も好きなんだけどね。でも、本当に式も披露宴も素敵だったよ~!」


「よかったな」


「新郎新婦もラブラブで、羨ましくなっちゃった!」


「ふーん」


「ね、メガネ君。私達も早く結婚して、おしどり夫婦になろうね!」


「それは良いな」


「うんうん。・・・って、えぇ!!?」


「煩い。急に叫ぶな」


「え?だって、今、メガネ君、私とけっ・・・こんするって!!」


「結婚するなんて言ってない。おしどり夫婦は良いなって言ったんだ」


「え?え!?同じじゃないの!?メガネ君は私とおしどりみたいに末永く仲良く幸せに・・・」


「いや、本物のおしどりの話だ」


「へ??」


「おしどりは秋に求愛し、冬に掛けてつがいで行動するが、雌が産卵する頃にはつがいを解消する」


「え?え??別れちゃうの!?」


「その後、雌は独りで卵を産み、雛を育てる」


「え?旦那さんは育児に参加しないの!?」


「雛が独立した次の秋、おしどりはまた別のつがいを作って卵を産む」


「え?ちょ・・・、おしどりって、毎年違う相手と結婚して、子供作って離婚してるの!?旦那は妻が妊娠中に出て行って、養育費もナシで!?」


「養育費って・・・。まあ、そうだな」


「がーーん!!実態はそんなに(ただ)れてるのに、何でおしどりが仲良し夫婦の象徴みたいに言われてるの!?」


「つがいの期間は仲良く見えるからな。一般人に鳥の個体識別は難しいし」


「つまり、毎年別のカップルを見て、長年連れ添う熟年夫婦だと思った訳ね。うゎ~ショックだ」


「勝手な理想抱かれて勝手に失望されたら、おしどりもいい迷惑だな」


「しくしく。・・・メガネ君はおしどりみたいな結婚が理想なの?」


「同じ鳥類で言うなら、おしどりより孔雀が良いな」


「くじゃく?」


「孔雀は一羽の雄に対して、数羽の雌が・・・」


「いーやー!メガネ君がハーレム作るなんて、絶対ダメー!!」


『静かに!!』


「はっ!スミマセン・・・」


「・・・君の声のボリュームのネジは壊れてんのか?」


「だってメガネ君が浮気な事言うから・・・」


「一夫多妻制は浮気じゃない」


「めそめそ。私は一途で育児に協力的な旦那さんが良いな~。イクメンな鳥って居ないの?」


「イクメン度合いでいうなら皇帝ペンギンかな」


「南極に居るペンギンよね」


「そうだ。体長100~130cm、体重20~45kg」


「デカっ!小学生並じゃん!」


「皇帝ペンギンは一夫一妻制だ。普段は海で魚を捕食しているが、繁殖期には群れで海を離れて内陸の氷原に移り卵を産む。卵は雄が抱き、雛が孵るまでの九週間、雪しか食べずにひたすら温め続ける」


「えー!?九週間も絶食しながら卵あっためるの?」


「繁殖地の氷原への移動期間を入れると絶食は百日以上になる。この間、雄ペンギンは体重の40%以上を減らすという」


「ひぇ~!でも、雌は何やってんの?」


「数百キロの旅に出て、海で雛の餌を採ってくるんだ。雌は帰ってくると、餌を吐き戻し、雛に与える。それからやっと交代して雄は餌を採りに行く」


「ひぃ。大変だ」


「雛が卵から孵っても雌が戻ってない時は、雄はペンギンミルクと呼ばれる分泌物を雛に与える。それは胃液と胃粘膜が混じった白い液体だ」


「本気で身を削って子育てしてるのね・・・」


「こんな大変な子育てをしているが、皇帝ペンギンは繁殖期毎につがいが変わる」


「え!?やっぱり毎年離婚するの!?」


「まぁ、環境が過酷だからな。同じつがいの両方が翌年生きてる保障がないんだ。新しく探した方が早いだろ」


「うゎ~ん!いくらイクメンでも、そんな壮絶な別居婚堪えられないっ」


「安心しろ、君は皇帝ペンギンじゃないから」


「む~。ねぇ、もっとこう、普通に日本に生息してて夫婦仲が良くて協力して子育てする鳥っていないの?」


「いる」


「いるの!?」


「カラスだ」


「カラス!?・・・えー、あんまり良いイメージないなぁ・・・」


「そうか?カラスはとても頭の良い鳥だぞ」


「でもさぁ・・・ずる賢くってゴミ漁りする感じが・・・」


「ゴミ漁りは人間がそういう環境を作ったからだろ。カラスは一夫一妻制で、どちらかが死ぬまでパートナーを変えないという」


「え、そうなの?」


「つがいで行動する事も多く、子育ても協力して行う」


「あら、なんかいい感じ・・・」


「カラスには求愛給餌という行動があって、これは雄が雌に口移しで餌をやるという・・・」


「えぇ!?カラスって、旦那さんが奥さんに『あ~ん』してあげるの!?それいい!ちょーいい!!採用!」


「何を採用するんだ?」


「私達の目指す夫婦像よ!カラスの夫婦に決まり!」


「・・・は?」


「あ、もう行かなきゃ。じゃあね、メガネ君。今度一緒にご飯たべよーね!ばいばーい!」


「は?ちょっ、おい・・・」


・・・・・・


「何か、勝手な約束させられてないか・・・?」

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