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第54話『蘇る過去のキオク』

(※鈴奈視点)

・・・・・お寺で雨宿りを始めてから1時間経った・・・・・


けれども相変わらず、狂ったように雨は空に浮かぶ暗雲から滝のように降り注いでいた・・・・・・


そう・・・・・まるで、私の今の心境を表したかのように・・・・・・


「・・・・・・」


・・・・・何を見るのでもなくじっと外を見つめていた・・・・・・


・・・・・寒い・・・・・さっきまではそう思っていたが、もうとうにそんな感覚も通り越して私の体は何も感じなくなった・・・・・・


・・・・・なんならイメージしてみようか・・・・・


・・・・・暖かい所でゆっくり・・・・・そうだな・・・・・クリームシチューなんてどうだろうか・・・・


・・・・・夏子伯母さんが作るクリームシチューはおいしかったな・・・・・


・・・・・何を馬鹿な・・・・・なんて都合の良い考え方をしているんだろうか・・・・・私は・・・・・・


・・・・・私はあの人を自分から突き放したじゃないか・・・・・


・・・・・自分の実の『お母さん』じゃないからという理由で・・・・・


・・・・・ああ、分かっていた・・・・・


・・・・・これは単なる八つ当たりだっていうことを・・・・・


・・・・・お母さんやお父さんが帰ってこない・・・・・


・・・・・募る不安・・・・・


・・・・・幼いながらも私に優しく接してくれる夏子伯母さんやお兄ちゃんにどこかイライラして・・・・・


・・・・・なんでお母さんやお父さんの話はしないんだろう・・・・・


・・・・・仮にも自分の妹の子供を預かっているんだ・・・・・


・・・・・電話くらいしてもいいじゃないか・・・・・


・・・・・何も無い・・・・・


・・・・・私はなんとなく分かってしまった・・・・・


・・・・・自分の両親に何か大変なことがあったっていうことを・・・・・


・・・・・それにしても・・・・・眠い・・・・・


・・・・・昨日は早く寝たのにな・・・・・


・・・・・少し寝ようか・・・・・?


・・・・・このやけにうるさいハーモニーを奏でる雨音が消えてくれるまで・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・











・・・・・


地球上に生き残っているのは私1人ぼっち・・・・・・


ニンゲンは所詮、1人じゃ生きていけない・・・・・


単に衣食住の問題だけでなく・・・・・・なんていうか・・・・・そういうのじゃなくて・・・・・


・・・・・精神面?って言ったほうがいいだろうか・・・・・・?


寂しい・・・・・つらい・・・・・苦しい・・・・・


いや、違うな・・・・・そんな感情を持ち合わせてる方がまだ幸せだ・・・・・


・・・・・本当に怖いのは・・・・・


・・・・・『何も感じれなくなった自分』・・・・・


・・・・・まさにそんな感じだった・・・・・


・・・・・今、その光景を目の当たりにしている・・・・・


・・・・・過去の自分を・・・・・


・・・・・私は見ている・・・・・






・・・・・周りの喧騒や車の音がやかましく聞こえてくる・・・・・


・・・・・だけど・・・・・


私が立っている領域はなぜかそこだけ台風の目のように・・・・・・


まるで時が停止したかのように・・・・・


『無風』状態だった・・・・・・


『・・・・・・』


私はそんな光景をじっと見つめていた・・・・・・


・・・・・眼前・・・・・いや、私の領域に広がるのは・・・・・・


ーーーーー血の海ーーーーー


赤い・・・赤い・・・鮮やかな色が・・・・・・私の領域を侵していた・・・・・・


『・・・・・・』


・・・・・そして・・・・・


その鮮やかな赤の中にまるで打ち捨てられた人形のような・・・・・・


・・・・・いや、集点が合っていない目が・・・・・


・・・・・一瞬、私を見つめたような気がした・・・・・


・・・・・お母さん・・・・・


・・・・・お父さん・・・・・


・・・・・赤く絵の具で塗られた私の両親は・・・・・もう、すでに息が無かった・・・・・・


私の領域の外をふと見ると2台の車が互いにペチャンコになっておりもう、元の外見の形を留めてはいなかった・・・


『・・・・・・』


・・・・・けど・・・・・


私には何も感じられなかった・・・・・


・・・・・だって・・・・・


私の傍にはお母さんやお父さんがいるんだよ?


きっと・・・・・きっと・・・・・ちょっと眠たいだけなんだよ・・・・・・?


きっと・・・・・きっと・・・・・


・・・・・本当は泣きたかった・・・・・


・・・・・大声を上げて思いっきり泣きたかった・・・・・


・・・・・だけど・・・・・


・・・・・『何も感じられない』・・・・・


『・・・・・・』


・・・・・私は・・・・・見つめるだけ・・・・・・単に見つめるだけ・・・・・・


・・・・・そこで・・・・・・


・・・・・私の記憶は途切れた・・・・・











・・・・・


ザーザーザーザーザー・・・・・


「・・・・・ん」


・・・・・1時間ほど寝ていたんだろうか・・・・・


・・・・・しかし・・・・・外の雨はまだ降り注いでいた・・・・・


・・・・・かなりうっとおしい・・・・・


・・・・・少しくらい弱まっていてくれてもいいじゃないか・・・・・


・・・・・でも・・・・・今更、愚痴を言ってもしょうがない・・・・・


・・・・・今はそれより・・・・・


・・・・・完全に思い出した・・・・・


・・・・・まさか、夢で思い出すだなんて思わなかったけど・・・・・・・


「・・・・・・」


・・・・・やっぱり・・・・・


・・・・・お母さんとお父さんは・・・・・


・・・・・


・・・・・あの頃は出なかった涙・・・・・


・・・・・今、ここで・・・・・


・・・・・洗い流しても・・・・・いいだろうか・・・・・






「ぅ・・・・ぁ・・・・・う・・・・・ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」






・・・・・やかましい雨音に負けず・・・・・


私のあの日に出せなかった感情を・・・・・


今、ようやく出せた・・・・・どんどん溢れかえる気持ちを・・・・・・外に出さずにはいられなかった・・


・・・・・ああ、コレが・・・・・


・・・・・『泣く』っていう感情なんだ・・・・・











・・・・・


ようやく落ち着きを取り戻した私はある決意をするーーーーー


ーーーーー『謝ろう』ーーーーー


あの人やお兄ちゃんは・・・・・・やっぱり、私の『家族』だった・・・・・


・・・・・本当のお母さんじゃない・・・・・?


・・・・・そんなの関係ない・・・・・


・・・・・ようやく、分かった・・・・・


・・・・・たとえ、世間がそれは本当の『家族』じゃないと罵ろうが・・・・・


・・・・・私の中では、夏子伯母さんもお兄ちゃんも家族だ・・・・・


・・・・・それで充分じゃないか・・・・・


・・・・・それだけでいい・・・・・


・・・・・きっと、今頃、お兄ちゃんも夏子伯母さんも私を必死で探しているはずだ・・・・・


・・・・・行かなくては・・・・・


「・・・・・」


・・・・・何より・・・・・


・・・・・謝りたかった・・・・・


・・・・・ただ、それだけ・・・・・


・・・・・受け入れられなくてもそれはそれでしょうがない・・・・・


・・・・・それを運命と信じよう・・・・・


・・・・・私がまいた種なんだから・・・・・






「・・・・・もう、私は逃げない」






・・・・・


そして、私は暗い雨の中へ・・・・・走り出していた・・・・・・











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