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番外編その37『ゆるキャラはお好き?』 

「なあ、耕司……なめ●ってすんげえ卑猥だよな……」

昼休み明けの授業中、腹が満たされ胃の方に血が流れ、うつろうつろ眠くなってくる時間帯。

俺の隣に座って、ノートに何やら落書き(宇宙人?)をしていたサルが俺に向かってそう呟いた。突然唐突にサルが奇怪な言動しだすものだから眠気が一瞬にして吹き飛んでしまった。

「……いきなりお前は何を言っているんだ」

「いや、さあ……最近、JSとかJCとかJKとかJDとかJBとかJRとかが大好物な、なんてーの? ゆるキャラ…いるじゃん、な●こ」

「その略号を怒涛の如く並べるのやめろ。分かりにくいし、『俺の中のちょっと流行りのイケてる(お察し)』とか思ってるかもしれないけど、全然恰好よくねぇから」

言いたくもないが、JSは女子小学生、JCは女子中学生、JKは女子高生、JDは女子大生ってところか。JB…って何だ?女子ババア?JRって……おいおい、企業名をモロに出すなよ。

「まあまあ、聞いてくれよ……で、さあ……なめ●ってすんげえ卑猥だよな……」

ループしとるやんけ。

「もう、さあ……名前からしていやぁあんばかぁああん耕司くぅうううあぁんってな感じジャン? わかる? この淫らな性少年の気持ち?」

「おいこら、お前の妄想に俺を勝手に出演させてんじゃねぇ」

「で、あの卑猥な形状と愛らしい表情を兼ね備えたな●こ……かぁ~~想像するだけで、ムラムラする、コキ下ろしたくなるぜ!!」

サルはそう言いながら、鼻をヒクヒクと動かし、両手で何か棒状のものを上下に擦るジェスチャーをする。

……あれか、これが俗にいう『エアーオ●ニー』っていう奴か。実際のその光景を目の当たりにするとクラスメイトとして何とも言えない居た堪れない気持ちになってくるな……。

「……そうか、是非一人で気持ち良くなってくれ。おやすみ」

俺は机に伏して、すぐさま夢の世界へ旅立とうとした、目の前の現実からオサラバするために。

「おいこら、耕司くーん!? 起きなさいよ!! あたしの話はまだ終わってませんよ!! ほらっ、あたしが一人で気持ち良くなっても仕方ないでしょ?! あんたも気持ちよくしてあげるから!! ほーらっ、起きなさい耕ちゃん!!」

サルは夢の世界へ旅立とうとする俺を背中を揺らして、妨害してくる。

「おい、やめろ……」

「ほーらっ! 起きなさい!! 耕ちゃん!! いい加減にしなさいよあんた!! あんた、誰のお尻の穴から生まれたと思ってるのよ!! あだぢよぉお゛おおおおボェえええ゛エエエ(←※ダミ声)」

「だからやめろと言ってんだろ、コラァ!! お前は俺のおかんか!!」

しーん……。

俺がサルに向けて、怒鳴り散らすと一瞬にして教室の中が静まった。……しまった、授業中だった。しかも、麻美さんの。好色家の麻美さんの獲物を狙うような目線が背中からひしひしと感じる。

「……んふふふ、さっきから二人ですっごい楽しそうな会話をしているけど……お姉さんが保健体育の実演演習もかねて耕司君とサル君のなめ●を思いっきり嬲ってあげようか? じゅるじゅるじゅる」

麻美さんは教卓に座って、怪しげな眼光で俺達を見つめながら舌先をカメレオンの如く高速に動かす。こ、コエェ!!

「「ぜ、全力で断るっ」」

そうして、俺とサルはちゃっかり席に座り、奴と目を合わせぬよう授業中は伏せていた。

「(……あとで、覚えとけよサル)」

「(アヒ♡ペロッ♡)」

サルはチェシャ猫みたいな顔を俺に向ける。

すごく破棄したい、こいつを。

「お、お兄ちゃんったらもう……///」(夏美さん)

「耕司さんも……年頃ですもんね……///」(百合さん)

「な、何がな●こよ……し、シネバいいのにラヴコメ野郎……」(アリスさん)

……何か会話が筒抜けなんですけど。

ていうか、何で俺が一人恥かいたみたいな雰囲気になってんの?全然、納得いかないんですけど。






「やあやあ、先刻のな●こ談話……大変興味深い話だったよ。サル君は僕のなめ●に興味があるのかい?」

全ての終わりし放課後。

メガネは俺とサルの会話を盗み聞きしていたのか、俺達に向かってそう問う。

「ぼ、僕のな●こって何だよ……それじゃあまるで俺はホモホモくんみたいじゃねぇか。ちげえよ、ただな……俺達ってゆるキャラが必要だと思わないか?」

「ふむ……? ゆるキャラとな……確かにあれはよくよく凝視してみればオカズに使えなくも……」

「ちーがーうーのー! そういう、シモ系の意味じゃねえ!! ていうかおかずっておまっ」

さっきいきなり、なめ●うんたらかんたらでシモ系の話から入ってたじゃねぇか。シモ系の権化が何言ってんだよ。

「よく分からんがサル、どうして急にゆるキャラなんてお前のような害悪なツラに到底似合わなさそうな言葉が出てきたんだ?」

「今すんげえ侮辱されたような気がするけれどまあいいや。俺らさ、童貞ジャン……だからさ、ゆるキャラが必要かなって思って」

「脈絡もクソもねぇな」

「……ふむ、成程……ゆるキャラは僕らチェリーボーイズが癒し癒されイヤラシの空間を提供してくれる一種の道具となりうるというわけだねサル君。しかし、どうだね……僕もある意味、ゆるキャラみたいなものだと思わないかね」

メガネは右手をワキワキさせながら、そんなことを仰る。

「どこがだよ、お前はただ股間がゆるキャラなだけだろ」

「フフッ……」

メガネ様は前髪をかき上げ、鼻で笑う。

褒めてねえのに、その誇らしげな佇まいと笑みは何のつもりですかメガネ君?もしかして自虐的な笑いかそれは。

「まあ、理由はともかくよ……耕司、サル、俺と一緒にゆるゆるでぷるぷるなキャラを考えてくれよ」

どんな相談だよ……。

「ふむ、まずはゆるキャラを生み出す上で大事な事はそのキャラの背景だね……たとえば『ひこに●ん』は彦根城から生まれた童貞だしね」

「いや、『ひ●にゃん』は童貞ではないだろ」

「そうだな……あと、『ふな●しー』なんかは船橋から生まれた童貞だもんな」

「いやいや、『ふ●っしー』も童貞ではないからな」

「サル君がさっき言ってた『なめ●』も『おさわり探偵小○里奈』から生まれた童貞だね」

「な●こがおさわりってエロ! 超エロ!! やっぱり最高だよな童貞」

「お前ら童貞童貞って言っときゃ済むとでも思ってないか?」

自分たちが他のゆるキャラ達と同じ土俵の上に立とうとしているのが見え見えだな。童貞という楔で。

「何だよ、じゃあお前は路上で『ふな●しー』と『オカザ●もん』が交尾しているところを見たことあんのかよ」

『なっ、なっななななっしー! 荒ぶる果実力をその身で存分に味わうななななっししししいぁあああああ!!』(ベッドの上では敵無しの梨の妖精)

『うっうおんうおんうおぉおおおんうぉんっ、はっ、ふっはっ……梨がっ、梨のエキスが拙者の中に入ってイクうぉおおおん!!』(ベッドの上ではハメられ太郎なOKAZAKI)

……。

見たくねぇなそんな絵面。締め出せそんなエロゆるキャラ。

「見たことねぇよそんなもん。大体、ゆるキャラはお前らみたく性的な目で見ねぇし、愛らしい動作とキャラクター性で人気があるんだろ?」

「愛らしい……ねえ、ブフォッ」

何で今、笑われたんだ。

「まあ、耕司キュンの言うことも確かに理に適っているね。しかし、耕司キュン……可愛くて愛嬌があって……さらにエロかったらそれはもう最強だとは思わないかね」

「ナニが最強なんだよ……バーサーカーモードに変身でもすんのか」

「まあ要するに分かりやすく例えるとだな……いくら喘ぎ声が上手なえーぶい女優がいても、カンパン(※完全にパイ●ン)だったら萎えるだろ? ちょっとくらい残っている方が興奮するだろ? それと同じだよ」

例えがおかしいし、意味が分からない。

「まあ、とりあえず身近なゆるキャラを探してみようじゃないか耕司キュンサル君。僕らのゆるキャラはそれから考えてもいいだろう?」

……。

うん、まったくもってこの趣旨を理解していない俺がここにいる。





次の日の朝。

「というわけで、夏美タン……僕らのゆるキャラになって下さい」

「……え?」

「いきなり何言ってんだ、お前」

教室に入ると、上半身裸のサスペンダー姿のメガネが夏美の目の前で土下座をしていた。

……何だこの、不思議な変態光景。今、来たばっかりなのに、早くもおうちに帰りたくなってきた。

「頼むっ、この通りだ上野! 毎日お前が履いている下着の色と柄とホクロの位置を教えてくれるだけでいいから!!」

メガネの隣でピエロ姿のサルがこれまたメガネと同じく夏美の目の前で高速スライディング土下座をしていた。

……サル、お前の前世に一体何があった。

[え、えっと……お兄ちゃん? こ、これは何かな……意味分かんないよ……」

このキチ●イ光景に、さすがの夏美も理解できないのか顔を引きつって俺に問う。

「大丈夫だ安心しろ、俺もまるで理解できていない」

「大丈夫だ、安心してくれたまえ夏美タン……既に君のゆるキャラネームは此方で決めてある……題して『てへぺろちゃん』だ」

「て、てへ……? ぺろ……?」

「まあ、コンセプトとしてはだな……紙芝居風にやると『こ、これが……お、お兄ちゃん……のぺろっ……』」(サル)

「『お、お肉棒……ぺろっ……て、てへっ……な、舐めちゃった///』」(メガネ)

……。

アウトアウトアウト-!スリーアウツ!永遠にお前らをチェンジ!!

「『もっと……もっと、もっとちょうだ』ぶふぅっ」(メガネ)

俺はとりあえず、エロゲー紙芝居をおっぱじめるメガネとエテ公を殴っておいた。

殴っておけば、一周回って常人に戻ってくれることを祈るとしよう。

「お兄ちゃん……肉棒って何?」

「とびっきりの魚肉ソーセージの事だよ」





これまた次の日の朝。

「というわけで、宮古サン……僕らのゆるキャラになって下さい」

……。

あれあれ、おっかしぃな……さっきもこんな頭の悪そうな発言を聞いた様な気がするが……もしかして、デジャビュかこれは。

「いいよ~」

いいのか……。

てか、宮古の場合は失礼かもしれないが頭の方がゆるキャラのような気がするが……。

「……で、ゆるキャラって何するの? もしかして、宿題代わりにやってくれたりとかお小遣いくれたりとか肩をもみもみしてくれたりとか私のアッシー君になってくれたりとか毎日家に来て朝ご飯と晩ご飯を作ってくれたりとかトロピカルジュースを持ってきてくれたりとか……してくれるの耕司君?」

「お前は何様のつもりなんだよ……」

「むぅ~~私はお子様だよ!! なんだよ~、耕司君は私に奉仕してくれないの!? 耕司君のマザコン!!」

……何で母親溺愛者呼ばわりされたんだ俺。

「安心しんしてくれたまえよ、宮古君……夜の営み、慰め、慰められ……ワタクシたち……」

「「三獣士ケダモノにお任せあれ」」

サルとメガネはまるで執事の如く手を脇腹に添え、宮古の前で跪く。

ノリノリだなこいつら。あと、その三獣士ってのはもしかして俺もカウントされてんのか。

「えぇー……何か、エビ臭そうだからやだー」

宮古は引きつった顔で鼻を摘みそう言う。

……エビ臭そうって何だ。





さてまた次の日の朝。

「というわけで、アリスさん……僕らのオナペットになって下…ひゃいん♡」

もはやゆるキャラ関係ねぇ!!ただのセクハラだった!!

アリスさんはメガネがセリフを言い終わる前にすでに己の鉄拳をメガネとサルにぶちかましていた。

……あ、飛んだ。

人間がタケコプターの様に回転しながら飛んだり、人間の首が窓に突き刺さるって割とシュールな光景だな……。






番外編その37『ゆるキャラはお好き?』 永遠に完。






……あ、そんなオチ?

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