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第96話『落日に消えゆく花弁となって(前編)』

「うむ、受理した」

あれから、可も不可もなく反省文を書いた俺、ひでおくん、サル、アリスの実行委員の四人は生徒会の一室……もとい麻里さんの根城にいた。そして、俺ら四人の前にいる麻里さんは反省文を両手で持ち、偉そうな顔して居座っている。

「受理した、じゃねぇだろコラ。何で、主犯のアンタが受理する立場なんだよ」

ハッキリ言おう。メガネやサルはともかく、俺やアリスさんは彼奴の悪巧みに巻き込まれた立場なんだぞ。それなのに、目の前にいる合法ロリは鼻の穴を大きくして、偉そうな態度で俺らを許す立場なんだよ。絶対、納得いかねぇ。

「ふむ……耕司君は納得いかないと? 俺にももっと出番をよこせよ、と?」

「そんなことは一言も言ってねぇ」

「ああっ!! 麻里さん、俺は納得いかねぇぞ!!」

すると、今度はサルがモノホンのエテ公より真っ赤な顔して、興奮する。何でそこでお前がここぞとばかりにしゃしゃり出てくるんだ。

「うん? 何かなサルサル?」

「ああっ……何でっ、何でっ……! 俺の周りにはこんなに美幼女がいっぱいいにるのに俺は……俺のっ、俺の股間はぴっかぴかちゅーなんだよ!!(通訳:何で僕ちゃんはいまだに童貞で包茎なんですか教えておさない人)」

…………。

場が凍った。うん、とりあえず美幼女とか言ってる時点で奴が色々と終わっているのは理解できたな。

「……さて、耕司君? あちしのどんなところが納得いかないのかな? ほれ、言ってごらん? ほら、言ってみな? そら、言ってみなしゃれ? さあさあさあ?」

麻里さんはサルのカミングアウトをスルーして、何故かイケてない乳を俺に向かって張り、そう言う。……何だろう、その得意気な顔に思いっきり、往復ビンタをいれて思いっきり泣かせてやりたい。

「……ふむ、僕も納得できないですね。麻里タソ」

ひでおくんはメガネをくいっと上げて、そう言う。

……だからぁ……こいつはサルの回し者か?言っておくが、大道芸人の事じゃないぞ。

「ほう、ゴキちゃんも納得いかないか……あちしの何が納得いかないかね?」

「ええ、納得いきませんね。僕の……僕の股間の祈祷師が右斜めに傾いているのです……これが納得せずにいられますかええいられませんとも。ねぇ? 祈祷師君? 『ウン、ナットクデキナイヨボク、ホラ、コンナニニョッキニョキ』ほら、彼女もそう言ってる」

メガネは己の愚息に向かってそう言う。

どうでもいいが、人前で自分のちん●に向かって一人二役で会話する奴、始めて見たな。

「え? ゴキちゃんのお肉棒って女の子だったのかにゃ?」

……何かこのロリも喰いついてるし。ていうか、可愛い顔してお肉棒とか平気で言う女子って何かリアルにヒクな……。

「『ホラ、ボク、オンナノコダヨ、コンナニニョッキニョキ』ほら、彼女もそう言ってる。『ボク、テレヤサンナンダヨ、ダカラコンナニニョッキニョキ』ほら、彼女がそう言っているんだから間違いない」

さっきからニョッキニョキしか言ってねぇじゃねぇか。

「……ねえ、いつまでこのくだらない寸劇は続くのかしら?」

アリスさんは俺の顔を見ながら溜息を吐き、そう言う。俺に聞かないでくれ。

「『ムウ、アリスチャンノイケズゥ、ニョッキニョッキ』彼女は怒っているようですぞ? 『アリスサン、ボクハニョッキニョッキダヨ』そう、アリス、君はにょっきにょぽーにょ!!」バキッッ

「……うっとうしい」

アリスさんの至近距離から放った裏拳はメガネの顔に食い込み、メガネは水を失った魚のように生徒会室の地面に沈んでいくのであった。……相も変わらず容赦ねぇなアリスさん。

「…………」ガクガクプルプル

アリスさんの凶行を間近に目撃していたサルはビビって漏らしていた。

……人前で、女子相手にビビってションベンを漏らす男子って初めて見たな。

「ま、まあまあ落ち着いて……ははは、は」

同じく目の前でアリスの凶行を目撃していた麻里さんは蒼白な顔でアリスさんを嗜める。……もしかして、こいつも股間がゆるゆるなんじゃねぇだろうな。

「まあ、耕…村上の言うことも一理あるわよ。あたしも納得いかないわねこの仕打ち」

アリスさんは腕を組みそう語り始める。

「大体どうするのよ、あの馬鹿げた騒ぎの所為で私達のクラスの出し物、禁止になったみたいじゃない」

そうなのだ。

予想以上にあの騒ぎは学内に知れ渡り、秩序を乱す結果となった(まあ、秩序を乱すような格好をした輩が大半騒いでいたからな)。もともと、問題児の多い俺達のクラスは目を付けれており、今回の事も含め、下された処分は……。






『今年のクラスの出し物禁止』






という何とも……いかんしがたい重い処分となった。

「うう……それに関しましては大変申し訳なく……あちしも相当に根を回したわけでございますが……」

麻里さんは後ろ指を指されたハムスターのように縮こまる。

普通のクラスメートなら怒り狂い、原因となった麻里さんをタコ殴りするだろう。しかし、俺らのクラスは普通ではなくて。そもそも、学園祭に関心のない連中ばかりだ。『学園祭? 出し物? ちょーだりぃ……』『はあ? そんなの勝手にしてよ……まじめんどい』……そんな声がちらほら。俺も奴等ほど露骨ではないが、学園祭にあまり関心が無い、というよりあまり良い思い出が無いから形だけは実行委員とかやっていてもあまり乗り気が無い。メガネやサルは何を考えているか分からない違う意味で危ない連中なので真意は計り知れないが、アリスさんはどうだろう。これはあくまで俺の想像だが彼女も俺と同じような考えだろう……いや、それ以上かもしれない。彼女の過去を聞くに、学園自体があまりいい思い出じゃないかもしれない。兎にも角にも、俺のクラスには出し物が禁止になったからと言って波風を立てる奴はそうそうおらず。……ただ、気がかりなのは。

「私は……別に良いけれど、あの子達は……夏美や百合達にはどう説明するのよ……」

アリスは苦虫を潰したような顔して、ブツブツとそう呟く。

そうだ、俺も気がかりなのは夏美や百合ちゃん……それにお祭り大好き宮子あたりもそうだろう。普段から相手に対して気を遣うあいつらは今回のことを聞いて、怒りはせずに受け止めてはくれるだろう。しかし……気持ちはどうなる?所詮これも俺の想像だが、きっと……。

「「「…………」」」

重い空気となる。

……どうすりゃあいい?いや、もう事後なのでもうどうすることもできないのだが。かといって、麻里さんを必要以上に責める気にもなれないし、このパックリと開いた穴を塞ぐ代わりのモノも思いつかない……。そもそも、代わり何て……出し物が禁止になったという事実、そこは変わりないのだ。






「……あ、あちし、考えたんだけどさ!」

重い空気を断ち切るかのごとく、麻里さんは自分の机を両手で叩き何かを言おうとする。……どうせ、ロクでもない事なのは目に見えているんだ。聞くだけ損、とは考えずにここは聞いてやってもいいか。時間もあることだし。……いやねぇな、時間。もう学園祭は三日後だ、早くしゃべれロリっ子。

「却下」

「にゃっ……にゃにも言ってないよアリスちゃん?!」

どうやらアリスは俺と同じような考えではなかったようだ。

「……と言いたい所だけれど、まあ、話すだけ話して見なさいよ。真夏に忍び寄る小蠅の羽音みたいな感じで聞いておくから」

「な、何かびみょーに疎外されてる感じでおぢさんはちょっち傷付くれど……言うね? 言っちゃうよ? 言ってもいいよね、ね、ね、ね?」

「早く言いなさいよこのロリ助!!!」ダンッ

アリスさんは妙に言い出さない麻里さんに業を煮やしたのか、麻里さんの机を拳で叩き、怒り狂う。イラちかアリスさん汗。

「ヒッ」

「ハウゥ!」(←エテ公)

「ヤァアヨ! オカサナイデェ!!」(←メガネ)

「何でお前らまでびびってんだよ」

しかし、相当にキてるなアリスさん……。

「わ、分かった……えっとね、あちしの個人的な事なんだけれど……皆が幸せな気分になれるちょっとした悪巧みを考えているの!」

麻里さんは穢れを知らない子供の様なキラキラした瞳で、先刻のテンションとは裏腹に生き生きとした様子でそう語り始める。悪巧みって……まあ、最初っからそうやって正々堂々とカミングアウトしてくれる分、隠されるよりはマシだよね……な、わけねぇだろ。

「ふふん、なるほど……メガネな僕を幸せにする、か。それは……相当に大変ですよ? ……僕の乳首を食べて下さい」

「頭何か湧いてんのか、お前」

「まあまあ、いいじゃないか耕司……まずは、俺達の麻里さんの話を聞いてみようぜ、な?」

サルは俺を制すようにそう言う。

俺達の麻里さんとやらに関しては深く考えないとして、このアフォエテ公が急に普通になられても戸惑う。

変態なら変態らしく、最後まで変態を貫いてくれ。常軌を逸する行動も困るが。

「とりあえず、三つ考えてきたからきいてちょ。まずねー、『学園爆破予告大作戦』!!」

…………。

何か、早くも同じ轍を踏んでいるような気がする。

「なるほど……校内に仕掛けられたプラスチック爆弾の爆風によって校長の服をはじき飛ばし、我らが校長をマッパマンにし、校長の学園での求心力を失くして、この学園を会長の手で牛耳るわけですね」

メガネはうんうん唸りながら、そう呟く。

そのトンデモ発想はお前のどこから湧いて出てくるんだよ。股間からか?お前の股間から何か白い粉でも出てんのか?

「何で校長限定なんだよ。あんなデブハゲおやじの暑苦しくてムンムンな加齢臭漂う裸体を衆人に曝け出して、誰が得するんだよ。……なんて、残念でしたね俺得だよ! そして、幼女も捨てがたいですね」

サルはすかさず、メガネにツッコむ。

ツッコむところが盛大に間違えている様な気がするのは俺の気のせいか。そして、コイツがある意味、重度のビョーキなのは俺の気のせいか。いいや、きっと気のせいじゃない。

「あのな、お前ら力技で話を進めようとするな。おい、麻里さん。あんたも……」

「ううむ、ゴキ茶ちゃんもサルサルもおしいところついてるんだけどにゃ~~……ちょっと違うのだ」

……おしいのかよ。

「あのハゲおやぢ、下半身に赤フンを装着しているからねぇ……ちょっとやそっとの衝撃じゃあ、吹き飛ばないにゃ」

「なんとっ、赤フンを装備してたか……野郎、闇属性の背後霊ガーディアンを味方につけやがったか……へへッ、こいつぁ、長期戦を覚悟しておかないとな……」

「ふむ……せめて奴の股間装備がミスリルアーマーだったのなら……僕の『もっとメガキュン♡ソード』で対処しきれるのだが……耕司キュン、後衛下半身守護を頼む!」

「お前らは一体何処で誰と何と戦っているんだ」

学園爆破はどこにいった、おい。

「ね、ねぇ……耕司。私何だか頭がものすごく痛くなってきたんだけれど……薬ない?」

アリスは額を軽く押さえながら、俺に向かって言う。

先刻からやけに静かだと思ってたが、この所為か。成程、奴らの毒気に充てられたんだな……。

「……あるよ、ほら」

俺はみんな大好きバファ●ンをポケットから取り出し、アリスに手渡す。

「……何で、そんなズボンのポッケに頭痛薬を常備してんのよ。あんたもしかしてこれ、危ない……」

「何でだよ、ただの頭痛薬だよ……アリス、お前が欲しいって言ったんだろ」

……俺もたびたび、頭痛を起こすからな。原因は……言わなくても分かるだろ?

「そう、とりあえずありがと……それは良いとして、ねぇ? あんたらって、普段からこんな感じなの?」

アリスは顔だけ俺の方に向き、メガネとエテ公と合法幼女の三人に指さし、そう言う。

「こんな感じ、って言われてもな。これが平常運行と言うか何というか……『ぼくら、ぶじいきしてます』みたいな?」

「そう……」

アリスはスカートの下からぬんちゃくを取り出す。

ぬんちゃくを両手に装備すると、目先の三匹の獲物モンスターに目を向ける。

……目が座っていた。






「はい、じゃあ次いきまーす……」

「「はーい……」」

学園爆破なんたら大作戦は、無事アリスの手により廃案となった。

心なしか先刻より、三人の瞳に光が灯っていないような気がするが、まあ気のせいにしておこう。

「次のあちしの案は『輝かしい我らが高宮学園の頂、そう……見よ、あの屋上で皆で花火大会ですゾですゾ☆大作戦』だよ」

麻里さんは余計な事を言わず、さらっと作戦名を俺たちに伝えた。

……作戦名で既に内容を説明しているようなもんだな。……長ッ、語呂悪ッ、語感悪ッ。

「ふうん。いいんじゃないっすかァー……まっ、風情があって楽しそうだし。『AKIなのに花火ィ? 俺達、カジュアルでイケメン~マジウケるぅ、ギャハハハハッ』みたいな?」

サルは鼻をホジホジしながら、半ば投げやりにそう言う。何で反応が急に冷めてんだよ。

妄想の世界と現実の世界のギャップから、何もかもが投げやりになったのか?それはタダのヒッキーくん(玄人)だぞ。

「……ふむ、しかしなんだね会長。屋上で学園の生徒全員が一斉にロケット花火を放つのはいささか危険かと……」

メガネは真面目な顔して、そう語る。

「何で、そんなド派手な大会になるんだよ。怖すぎだろ、何処ぞに一斉攻撃して戦争でも仕掛けるつもりか。普通に考えて、数人が屋上で花火を上げて、他の奴らは高みの見物……そんな感じだろ、な?」

俺は麻里さんに同意の意味で振る。

「…………………………う、うんうんそうだよね」

「おい、今、メガネの案を『ちょっといいかも』とか思ってたろ?」

ここには(色んな意味で)危険思考な奴らしかいないのか。

「でも問題は山積みよ」

普通(?)な人格に戻ったアリスは腕を組み、そう言う。

「問題?」

「ええ、まず大量の花火の予算……どこから、抽出するの?」

予算……か。

確かに、学園から予算を下してもらうのはすっごく難しい。

この状況だしな。学園側が問題児の、よく分からん作戦に予算を出してくれるとは思えない。

「フヒヒ、それはねアリスちゃん……部費をちょっぴりちょろまかし……アッ、うそうそ、にゃははっ、あ、アリスちゃん、そんな悪鬼のような顔してあちしをにらまないでほしいな~~……」

「とても冗談には聞こえなかったけれどね……じゃ、どうするの?」

「えっと……ワシ……ワシ、の姉が経費を全部出すッ!!!」

……姉の脛かじりかいっ!

「まあ、あの人、教師以外にも裏でそのクチのお仕事もやってそうだから懐があったかそうだかんね~~……ほら、顔的に『汚水の花道』って感じかにゃ? 鞭持って、全裸の男共をニヒルな笑みで従えている、みたいな?」

麻里さん……。

本人が目の前にいないからって滅茶苦茶に言ってやがるな……。

けれど、あの人の人間性からしてその言葉を完全に否定しきれないところもあるから何とも悲しい所だな……。

「ふ~~~~ん……」

アリスは見下したような、明らかに軽蔑の眼差しで麻里さんを見据える。そりゃそうだわな……。

「けれど、別の問題もあるわよ。花火だから当然、火を使うわよね。校内の火の使用は禁止よ」

「? 許可とれば問題ないじゃん」

「……とれると思ってるのかしら? 『問題児』の私達が?」

ぎゅううううううにゅうううううう

「い、いはいいはいいはいいはい! やめぇええええ~~!!」

アリスは麻里さんの頬をギュッと掴み、これでもかと言わんばかりに横に伸ばす。

何も考えていないお気楽お子様に鉄拳制裁と言ったところか?傍にいたメガネは物欲しそうな表情でその二人のやり取りを見つめている。

「予算、火の使用の危険性、学園側の許可……現実的に可能そうに見えても実はハードルが高いのよ」

予算は何とかなりそうなもんだが……学園側の許可、か……うーむ。

「しかしよーアリスさん。麻里さんはもともと悪巧みでやろうって言い出したんだろ? だったら許可など必要なく、勝手に俺らでヤッチャえばいいじゃないか。屋上で花火? 上等だよ、エロゲーでもやってたし」

エロゲーを引き合いに出すなよ……。

「何よ、その自分勝手な論法は……あのね、いざ何かあってからじゃあ遅いのよ? もし万が一、無許可で火を使用して火事を起こしたら誰がどう責任を持つの? これは私達だけの問題じゃないのよ」

アリスが言ってることは正論だ。

ましてや、火事となればごめんなさいでは済まない。もし、誰かが命を落としたら……形あるものが焼けるのは立て直せば済むかもしれないが、命は不可逆的な存在だ。失くしたものは取り戻せない……アリスはそういう事を言っているのだろう。大げさではなく、現実的に冷静にアリスは目先を見つめている。かつて、守れなかった家族を重ねて……。

「何だよ、火事がナマポのもんだよ。俺達の心を熱くして、学園を火の海に沈めてやろうぜ、ファイヤァアアアア!!!!!!」

「ナマポじゃなくてナンボ、な。心をファイヤーするのはいいが、学園をファイヤーするのはだめだろ……」

「カッコいい……」

麻里さんはキラキラした瞳で熱くなったサルを見つめている。

おい、麻里さん。そんな幻想から早く目を覚ました方が良いと思うぞ。数秒後には絶対後悔していると思うからな。

「……っ、馬っ鹿じゃないっ……! もう、あんたらで勝手にしなさいよ!!」

「お、おいっ」

アリスさんは髪を掻きむしり、イライラした様子で生徒会室から出て行った。

「なっ、何だよあいつ……いきなり切れちゃって、失礼しちゃうわ、ぷんすかぷんすか」

アリス……。

あいつ、やっぱり……あの事を引きずって……。

「うん、今のはサルサル、気味キミが悪い」

「うんうん、サル君、黄身キミが悪い」

「えっ!? か、会長?! つい、今俺のコト尊敬のまなざしで見つめていましたよね!? ていうか、人のコト気味が悪い、黄身悪いって……どういうことだってばよ! おやぢギャグかよ!?」

……まずい、な。

アリスは未だ心に爆弾を抱えたままだ。

信用していないわけではないが、アリスはふとした拍子で、儚く、脆く、いとも簡単に崩れてしまう……そんな土台の上に立っているようなものだ。俺が、支えてやらないと……妹の代わりにはなれないかもしれないが、絶対に……。俺は、居ても立っても居られない気持ちとなり、アリスに続いて生徒会室から出ていく。

「なあ、耕司お前は……って、お前も出家プレイかよ!!」






「きゃっ……」

おっと!

生徒会室から出た直後、胸に何か小動物がぶつか……って。

「ゆ、百合ちゃん……か」

「耕司……さん」

俺のシャツをぎゅっと掴み、上目使いで見つめる百合ちゃん。

ち、近いぞ……。不覚にもドキッと……って、違う違う。な、何でこんな所に百合ちゃんが?

ていうか、も、もしかして今の俺達の話聞かれてた?

「百合ちゃん……」

「…………」

俺が声を掛けても、百合ちゃんは動きもせず黙って俺を見つめるのみ。

……?どうしたんだ、百合ちゃん?何で何も……あっと、それより今はアリスだ!今、見失うとまずい!!

「ご、ごめん、百合ちゃん、俺もう行かな……」

ぐっ。

進まない。後ろからの抵抗……これは。






「えへへ……そっちに、行っちゃ…………だめ、ですよぅ……」






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