番外編その32『腐女子はお好き?』
「というわけで、耕司キュン。このエロ本を少しの間預かっておいて欲しいんだ」
「いきなりだなオイ、何がどうして俺がお前の性欲処理本を預からないといけない展開になった」
休日のうららかな午後、自分の部屋でゴロゴロしていると来訪のチャイムが鳴り、ドアをあけると待っていたのは美人なお姉さんでも美少年でもロリでもツンデレでもなく、両手に大量のエロ本を抱えたメガネだった。
「実は……妹にこのエロティックでヘビィな本が見つかってしまってね、」
「お前今、さらっとトンデモ発言吐いたな。お前に妹がいたことに驚きだよ」
「13人の妹のうちの一人の末っ子のマアサに見つかってね」
「何だお前の妄想か」
「『うぅ、おにぃちゃまのばかばかばかぁ!こんなので一人で気持ちよくなるくらいなら私で気持ちよくなるのですぅ!』と嫉妬心むき出しで僕に掴みかかってくる始末……見てくれたまへよ、この頬に残った引っ掻き傷。ヤレヤレ、マッタクコマッタチャンダゼ」
「痛い、激しく痛い。お前も、俺の心もな。あとコマッタチャンはお前だ」
あー、何で休日なのにこんなアウチでイタタなお方に絡まれてんだろ俺。そろそろゴールしてもいいかな?
「お願いだよぅ、耕司キュゥン!ちょっと使いすぎてシワシワになっちゃってるかもだけど、その上からまた使ってもいいから!この本が耕司キュンと僕を繋ぐ絆の証となるのだよ!」
「想像するとすげぇ嫌だなその絆、ていうか使用済みの本を俺に寄越すんじゃねぇ」
「ちなみにサル君もご賞味済みの一品です、耕司キュンを含めて3人でぶっかけです」
「なぁ、そのメガネかち割ってもいいかな」ポキッ、パリーンッ
「あプっ、割った!耕司キュン言う前に片方のレンズ割ったよ!」
「うるせぇ、帰れ」バタンッ
「あぁ!そんな…………」
『お願いだっ!耕司キュン、一緒にイコウヨ!イッチャオウヨ!ピリオドの向こうへ!!!』
「入れ、馬鹿野郎!」バキッ
「フヒヒッ、耕司キュン激しいっ(///)」
「気持ち悪ぃこと言ってんじゃねぇよ!さっさと入れ!」
全開なホモ☆らんぐれっちをかましてくれやがったメガネをとりあえず無理矢理部屋に連れ込んだ。……いや、別に変な意味でじゃねぇぞ。只、あのままオタッキーメガネを部屋の外に出してたら寮生に変な誤解を受ける可能性があるからだ。
「……と、冗談はこれくらいにして本題に入ろうか耕司キュン」ギュッギュッ
「おい、どうでもいいがその大量のエロ本をドアのポストに詰め込むな。女子に変な誤解受けるだろうが」
メガネは急に真面目な顔して俺にそう言う。……何だコイツ。まぁ、暇だし聞いてやってもいいがどうせロクな事じゃないんだろうな。
「真剣な、話なんだ……」
「……なんだよ」
メガネは急にシリアスな表情で語り始める。
……本当になんなんだコイツ。まさか、本当にそういう系の話なのか?
「耕司、キュン……」
メガネは顔を上げ、壊れそうな右手でそっと俺のこめかみにゆっくり触れる。
俺はその吸い込まれそうなメガネの奥に光る瞳にその場から動けなくなり、ゆっくりと彼にこの肢体を預けt
「オゥフ!」バキッ
思わずメガネの顔面に思いっきり拳を入れた。
き、きめぇー!何だコイツ!全身に鳥肌がたったじゃねぇか!
「お前、死にたいんだな。おし、殺す」ポキポキ
「やっ、ま、待ってくれ!耕司キュン!今のは僕が悪かったニダ!」
「うっせぇよ、とにかく蹴るからそこでたってろ」
「い、いや!僕の説明が悪かった!ま、まずは彼女を紹介しよう」
「彼女……?」
彼女って何だ。って、それで反応する俺もどうなんだ。
「デュフフ、こんにちは」
「うおっ!?」ビクッ
突然、部屋の押入れが開いたかと思うとそこから女が登場した。
「なっ何だよ、これ!誰だよこいつ!つーか、どっから出てきてんだよ!」
「うん、耕司キュン。突然、不躾で悪いが紹介するよ。彼女は腐女子連合第三支部経理部長に所属する腐女子扶助子だよ」
「ウォフwwwはずめますてwww扶助子でふwwwうぇwwwうぇwww」
「いや、はじめましてとかじゃなくて……ていうか完全にネタキャラだろコレ」
「親がいないと生きていけないお年頃wwwデュフwwwテラワロスwww」
そこは笑えるところじゃねぇだろ……
「彼女は昨年のアブノーマル腐女子賞を受賞した猛者でね。まさに、腐女子中の腐女子といったところだ」
「かれこれ、拙者一ヶ月風呂に入ってないでござるwwwうぇwwwうぇwww」
腐女子ってそういう意味じゃねぇよ。ていうか、さっきから変なご飯が腐ったような臭いがすると思ったらお前かよ!きたねぇなもう!
「で?扶助子さんが……何?何なの?俺に何の用なんですか?ていうか、ほんと健康衛生上に(主に嗅覚的に)キッツいんで帰ってくれませんか?」
「まぁまぁ、そうおっしゃらずにwww実は某、村上殿に調査してもらいたいことがあるのでふよwww」
「あん?」
扶助子は俺に一冊の薄い冊子を手渡す。
何か、この薄いの……どこかで見たことあるような……嫌な予感を肌で感じながらも拍子に視線をやる。
『ずっとおホモ達でいようね』
俺は両手で本を引き裂いた。