第91話『リアルツンデレは天然記念物なのです』
週明けの月曜日。
何とかアリスさんを高宮学園学生寮に連れて帰り、もとの平穏な日常に戻ったが……
「そう簡単にいかないわなぁ……」
昼飯のから揚げを口に頬張りながら俺は自然とそんな事を呟いていた。
「んぁ?何が簡単にいかないんだ?耕司」
そんな俺の独り言を目ざとく、サルは俺に尋ねる。
「何でもねぇよ」
「ふーん、まぁいっか。あ、それはそうと簡単にいかないといったら学園祭……一週間後だよな。俺達のクラス……まだ、出し物も何にも決まってねぇよな……どうする?」
「どうするも何も……どうしようもねぇよ。あと一週間、いや実質六日間……絶望的だろ。無理だよ、ムチャだよ。ブッチしようぜ」
ていうか、俺達のクラスは何で誰もつっこまねぇんだろう……呑気すぎるだろ(汗)
「ポッチ……だと?お前は揉むよりしゃぶる派か、もみもみ〜〜〜より、ぺろぺろぺろぺろ〜〜〜か?お前、エロイな、ハァハァ」
「……何を言っとるんだお前は」
サルは両手をワキワキと動かしながら舌の先端を出して上下に動かしている……こいつ、AVの見すぎだろ。
「やだ、何こいつ、きもーい」(女子A)
そんな醜いサルの姿をたまたま目撃した近くに居合わせたクラスの女子に見事に引かれていた。
ガラガラガラガラーーーー
引き続き飯を食っていると、突然教室の前のドアが開いた。
「やぁやぁ、皆の衆、元気にしとるかね〜」
アホチビロリっ子先輩、八尾麻里先輩が教室に入ってきた。あの呑気そうな、何ていうか何も考えてなさそうな顔はいつ見てもイラッとくるなぁ………何だかいぢめたくなってくる。
「………っ(///)」
そして、麻里先輩の後ろに女子生徒……って、誰?何かでも何処かで見たことあるような………紫色のツインテール、そして白と赤地の制服……どうやら高宮学園の生徒ではないようだ。
「うおっ!耕司見ろよ!かがみんだっ!かがみんだよっ!実物大のかがみんが俺達の学園にやってキターーーーーキャッホーーーーーウ!!!!!」
その女子生徒を見たサルは何故か興奮しながら小躍りし始めた………か、かがみん?
「あれ?ナニナニ?知らないの?たかりゃん?この子、ら○☆すたの柊かがみちゃんだよ〜、おっくれてるぅ〜〜〜」
俺が不思議そうな顔でその女生徒を眺めていると麻里先輩が小馬鹿にしたような顔で俺に声を掛けてきた。
「知らねぇよ………あと、その『たかりゃん』ってのは何だ」
「何だ、耕司キュン?知らないのかね、会長のコスプレはTo○eart2のまーりゃん先輩だぞ」
そして、今度は……誰?金髪オールバックの男……頭にはハートマークのバンドを装着している……何か、黄色い……とりあえず、上着も下も黄色い。何か黄色い人が俺に声を掛けてきた。でも、この声はどこかで聞いたことある………まさか。
「おい、お前……メガネだろ」
「おれは人間をやめるぞ!ジョジョーーっ!!おれは人間を超越するッ!」
「聞けよオイ。それにメガネ、安心しろ、お前は既に人間という範疇を軽く超越している」
「UREYYYYーーーーやかましいっ、このきたならしい阿呆がァーーッ!!ふんッ、おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」
「会話しろ、おい」
何だコイツは……そして、サルを見ると……さっきの……かがみんとか言ったか、その子にまだ話しかけ……いや、セクハラを働いていた。
「ね、ねぇねぇ?かがみん?きょ、今日のお、おぱんちゅ……の色、お、おおお教えてくれないか?プひひ」
サルは頬を染めかがみんに下着の色を聞いていた……何だアイツは。あんなキャラだったっけ?完全なるオタクじゃねぇか。
「………」
かがみんはじっと、その場で顔を伏せていた……震える?伏せているので表情は覗えない。
「お、お〜〜〜い?か、かがみ〜〜〜ん?あ、あれ?す、拗ねちゃった?あ、あははッ!いきなりおぱんちゅは失礼だったかな?じゃ、じゃあ、さ……その、小ぶりのおっぱい揉ませ……」
バキッ
「アウチョー!!!」
「こ、小ぶりで悪かったわねぇーーーーー!!!!!!(泣)」
バキッドガッガスッバコッポキッ
……一瞬の出来事、それは一瞬の出来事だった。まず、サルの顎にアッパーが一発。さらに教室の床に倒れたサルに足蹴り一発二発三発………あとは言わずもなが、フルボッコ。振り下ろされる雨のような鉄拳、当然サルはそれに抵抗できず、ただただ防戦一方。数十秒後、サルは床で大の字で倒れていた。その表情は……なぜか、ムカつくほどの清々しい笑顔で満ちていた。
「この声……ま、まさか……お前、あ、アリス………か?」
俺の声に反応したかがみん……いや、アリス(?)は俺に顔を向け、キッと睨んできた。
「そ、そうよっ!!!私はアリスよっ!!!わ、悪いッ?!も、文句あるの!?」
アリスは真っ赤な顔で俺を睨んできた………恥ずかしさの余りその瞳には涙が溢れていた。
「い、いや……悪くは無いが、むしろ……」
「な、何よぉ……」
「………」
「………」
「……な、何か言いなさいよっ!な、何よっ!『むしろ……』何よっ!!!い、いいわよっ!!!ど、どうせこ、こんな……こんなファンシーな制服私には似合わないわよぉーーーー!!!」
ガラガラガラガラガラーーーーー………
「あっ……(汗)」
アリスはそのまま逃げるように教室を飛び出していた。隣にいたメガネ(ver.DIO様)は『おぁ……リアルツンデレの到来だ……』とか何とかブツブツ呟いていた。
「あ〜ぁ、アリスちゃん逃げちゃったじゃん……たかりゃん!何で止めなかったのっ!」
俺とアリスさんの光景を傍から眺めていた麻里先輩はぷく〜っと頬を膨らませながら俺に突っかかってきた。
「知りませんよ………どうせ、麻里先輩、あんたがアリスに無理矢理あんな格好させたんだろ?それに俺はたかりゃんじゃねぇ」
しかし……アリス、元気になったんだな。ちょっと最初は驚いたが良かった。
「にゃふふ、それはどうかにゃ〜〜〜?まったく……たかりゃんはちっとも女心を分かってないねぇ〜〜〜……そんなんだから永遠のヘタレキャラってよばれるんだぞ!」
「……何だそれは。だから、俺はたかりゃんじゃねぇっつってんだろ、誰がヘタレだコラ」
グリグリグリグリ〜〜〜〜〜
ちょっとさっきから調子に乗っている麻里先輩にグリグリ攻撃をかましてやった。
「にゃあ!にゃ〜〜〜やめろぉ!暴力反対ぃ〜〜〜鬼畜ぅ〜〜〜」
グリグリ攻撃をかましていると、麻里先輩は少し涙目になってきた。……クラスの女子の視線が少し痛い。仕方なくやめることにした。
「……ところで一体、あんたは何しにきたんだ?」
「……にゃふふ〜〜〜、聞いて驚くなよ耕司君!このクラスの学園祭の出し物が決まったんだよ!」
無い胸を張って会長は威張っていた。……ほんと、こりねぇな……コノヒトは。
「決まったって……あんたが勝手に決めたんでしょ?俺達の総意を無視する気かよ」
「その出し物とは………これだっ!!!」
「UREYYYYーーーー」
「聞けよ、お前ら」
メガネ(ver.DIO様)はどこから持ってきたのかホワイトボードを裏返し……そこに書かれていたものとは………
『参加型大規模コスプレ喫茶!!!』
……ちなみに、字がさかさまになっていた。