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第87話『罪は罪に終わり、善は善に終わる』

※ダークっぽい仕様になっております。ご注意下さい。

(※???視点)

罪は罪に終わり、善は善に終わる。

そんな一連の世界の成り立ちはいとも簡単にある一点で崩れ去る。

罪は善に終わり、善は罪に終わる。

矛盾、非常に矛盾している。

罪が何をどうして、善になり得るのか。

善が何をどうして、罪になり得るのか。

奴らは考える、どうしてそんな矛盾が許せるのか、と。

じゃあ、逆に考えてみろ。

罪が何をどうして、罪になり得るのか。

善が何をどうして、善になり得るのか。

愉快愉快。痛快、愉快。片腹痛くなる。

矛盾、そんなものも矛盾だ。何故なら、それは為しえた者が決める事じゃなかろうて。

結局、起因と結果は結びつかない、と。

じゃあ、何が正しい?何が間違っている?

そんなもの知りえるわけがない。僕に聞くのが間違っている、人間よ。

そんなどうでもよい事にいちいち人間は悩み、苦しみ、憎しみ合う。

だから人間は実に面白い、他の動物とは実に違ったアクションを起こしてくれる。

罪、善、罪、善、罪、善、罪、善、罪、善。

そんな標識はいらぬし、むしろ邪魔だ。

そこの人間にとって、犬っコロの糞を踏む事は罪か、罪なのか?そうか、貴様にとっては確かに『罪』だな。お気に入りのおニューのスニーカーが糞で汚れてしまったのだからな。けけっ。

じゃあ、もう1人のそこの人間、お前にとっては罪か、罪なのか?違う?面白い?ははっ、お前も残酷な事を言うの、ならそれはお前にとっては『善』だな。面白いものを見れて得したの。かかっ。

ほら、見ろ。『罪』や『善』等、所詮、そいつ、人間ひとりの認識で成り立つもの。

外部には一切関係ない、勝手にしてくれって。

だから、そんなもの僕には関係ない、関係ないって。

関係ないが、面白い人間がおる。

それは、『罪』や『善』等といった範疇を超えて、支配する者。

すなわち『罪』、『善』を両方含むもの、聞こえはそう悪くないと思うだろ?

違う、その認識は甘い、甘ちゃんだよ。

そうじゃないんだ、その人間の真に恐ろしいところ、それは『区別がつかない』こと。

今、自分が何をやっているのか、それが『罪』『善』にどう繋がろうと僕にとってはどうでもいい事だが。

分からないんだ、いや分かろうとしていないんだ、他人を、自分を。

これほど怖い者はいない、だってミエテイナインダヨ、タニンモ、ジブンモ、ヒトミニウツルケシキモ、ナニモカモ………

だから、そやつの行動には一貫性がない。

狂人、そやつにはそんな言葉が良く似合う。

名前?知りたいのか?そんなキ●ガイの名前を……?

うーん、そうか………

………………

………………

………………

……あっ、待ってた?

……いやぁ、そのなんていうか………

………………

……すまんっ、忘れたっ!!!なははははは………











この狂った世界は所詮、ギブ・アンド・テイク、僕が言いたいのはただそれだけだ。











学園祭前夜祭終了後、私と浩二は家に帰ってきた。

浩二を我が家に泊まらせてあげようと、私から浩二に提案した。

浩二は笑顔で『いいのっ?!ラッキィ〜♪』と騒いでいた。私はそんな浩二の反応を眺めて何だか嬉しい気分になった。何だろう、すごく……すごく、気分がいい。いつの間にか私の中では既に浩二は傍にいなければならない存在になっていた。それは、それは多分、前の私では想像もつかなかったことだろう。でも、もういい。決めたんだ、私はこの人の後について行くって。そんな、恋する乙女のような、ていうかそうなんだけどっ!口にするのも恥ずかしいけれどっ!そんな気持ちで浩二と一緒に夜の帰り道を歩いていた。

「………………」

「………………」

しかし、私達は帰り道で会話を交わす事はなかった。

けれど、それは決して気分の悪いものではなくて、その証拠に私はじっと横目で彼の様子を見る。

「…っ」

ふいっと、彼は頬を人差し指で掻きながら私とは反対方向に顔を背けた。何、この初々しい反応。

何てかわいい、何てかわいいのかしら………ちょっと見つめただけで、赤面。

中学生みたい、って中学生よね私達。

「………っ」

今度は浩二がお返しとばかりに私を見つめきた。

むっ、むぅ……やるじゃない、じょ、上等じゃない。

わっ、私は!私はあんたみたいなマセ子供ガキじゃないんだからっ!

「………………」

「………………」

……じっと、じっと見つめられる。

…な、何コレ。な、何なのよコレ!だ、だめっ!こ、こんなの、こんなのっ、恥ずかしすぎるっ!

もう、無理っ!降参!降参!ギブギブギブ〜〜〜!

「…っ」

私はついに恥ずかしさの余り、浩二から目を離してしまった。

そして、チラッと横目で浩二を見ると………

「………」

顔が笑っていた、それはもう飛びっきりの素敵な笑顔で。くっ……むかつくぅ。

もういい、開き直ろう。そう思いながら私は浩二に顔を向けた。

「………んっ?!」

振り向いた瞬間、私の視界に現れたのは浩二の顔。

そして、湿り気を帯びた唇が私の唇を塞いでいた。幾度となく繰り返される濃厚なキス、忘れられない味、でもそれは決して不快なものではなくて、求めてしまう。何度も、何度も、何度も、何度も………忘れないように、二度とこの味を忘れぬように。息苦しい、でも何故か求めてしまう、繰り返し繰り返し………確かめるように。






この想いが壊れぬように、そこにある愛を忘れぬように……二度と、忘れぬように。






私と浩二はあのキスから無言のまま、歩いているといつの間にか家の前に着いていた。

何だろう、まるで時間が飛んだみたい……それは不思議な感覚だった。

意識が浩二に向いていたからだろうか?歩いているという感覚がほとんど無かった。そうしてようやく、意識を我が家に向ける、電気は……消えている。そして、腕時計を見る。アナログ時計は既に24:00を示していた。もう、そんな時間……おそらく、時間的にエリスは部屋で眠っているのだろう。そして、私はまた意識を浩二に向けた。

「……もう、家だね」

「……ええ」

浩二の顔は何か名残惜しいかのような………そんな顔だった。

「今日は……本当に楽しかったよ、アリスちゃん」

浩二は笑顔でそう言った、それは何の混じりけの無い純粋な少年の笑顔だった。

「そんな、私だって………」

言葉が続かない、そんな純粋に嬉しそうな顔を向けられては。

頬が次第に熱くなっていくのが分かる………うっ、ううぅ……何で、私ってばこんな、こんな………

「何年ぶりだろう、こんな楽しい日々は………何だか救われたような気分だよ」

浩二は夜空を仰ぎながらそう言う。

「お、大げさよっ……!そんな、私、たいしたことしてないし……」

「いいや、僕にとってはたいしたものなんだよ、アリスちゃん」

「……えっ」

一瞬、ドキッとする。変わった……?声色が今までとは別ものだったから。

「言ってなかったっけ?僕の両親ね、昔殺されたんだよ」

「……っ」

淡々と、無表情で浩二はそんな事を口走った………

「う、嘘……ごめん、私……」

何故か私は謝ってしまった、別に謝る必要は無かったけれど……何か、いたたまれない気持ちになった私はとにかく謝った。

「あははっ、別にそんな事アリスちゃんが謝る必要ないじゃない。僕の家の事情なんだからさ」

「そ、そうね……でも、ごめん」

「あははっ……でさ、無かったんだよね、こういうの」

「………」

「僕は……僕は、そんな君の笑顔を忘れない」

「えっ……(///)」

また、頬が熱くなるのが分かる………

「そう、今の表情。僕は君のそんな表情が好きなんだ、君の怒っている顔、笑っている顔、悲しんでいる顔、みんな、みんなひっくるめて全部好きだ」

「っ(///)」

これは、これが浩二なりの……告白なんだろうか?うっ、うぅ、そんなはっきり言われたら……黙っているわけにもいかないじゃない………わ、私も返事を……

「わ、私はっ、あんたのこと……っ!」

「でも、俺にはそんな顔ができない、作れない」

「っ?!」

私は言いかけた言葉を飲み込んだ。

「わからないんだ、人の表情が」

……?何を……言っているの………?浩二……?

「顔が無い、と言った方が良いのかな。俺の横を通り過ぎる人間、俺の周りでだべる雄雌、教壇でひたすらお経を唱える教師の馬鹿共、そんなやつらの顔が無いんだ、いや俺からみたら無いように見えるんだ。無機質、そうそれは無機質。耳から入る情報は声、鼻から感じ取る情報は匂い、肌から感じる情報は触感、でも唯一、俺に無いもの、それは目から入る情報、視界は認識できても顔の表情は認識できないんだ」

無機質な、無表情で語り始める浩二………その姿に私は寒気を覚えた………

「全部が欠落していたらこんな不快感は覚えなかっただろうね。だから、笑っちゃうんだ、俺。もう、諦めようって。笑うことに関しては小さい頃に覚えた、というより両親から学んだ。困ったことがあったら何でも笑っちゃえ。子供ながらにそんな事を考えたんだよね、俺。ははっ」

「………」

私は、私は……呆然と立ち尽くしていた、というより怖かった、彼が。

濁った目で私を見つめながら意味不明な事を語る彼が、とてつもなく怖くなった。

「だから、俺は知りたかった、表情が。君のような、いや、『君達』かな?感謝しているんだ!……はっきり、表情が現れるような子を探していた、でも見つけた、救われたんだ、俺は!俺は!オレハオレハオレハオレハ………!ハハッ!ハハハハハハハハハハ………」

私は、もうその場から逃げたかった。でも、動けなかった。

「ダカラ、こんな笑い、ワライ、ワライ……こんな嗤いだけを与えてくださった両親に今でも感謝しているんだ」






「オレハ両親をコロシタ」






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