第78話『魔力』
以心伝心って言葉がある。
考えている事が、言葉を使わないでも互いにわかるって意味。
学校のクラスメイトの一人にこんな事を言われた事がある。
『アリスとエリスちゃんって……電波?テレパシー的なものを享受し合ってる感じ?』
……何か馬鹿にされている感が否めないが。
とにかく、私が言いたい事は『私とエリスがよく似ている』ってこと。
容姿だけでなく、趣味から好きな食べ物、服装etc……
双子なんだから当たり前といっちゃあ当たり前なんだけど。
でも、そう見えるのは周りだけであって。
実際、私達の場合はエリスが私に合わせている…というより、エリスは私の見よう見まねで合わせていることが多い。
私が喫茶店でエスプレッソを頼んだ事があった。
すると、エリスは『う〜ん、じゃあ私もそれにするよ』と。
…しかし、エリスは実際、苦い飲み物は苦手なのだ。(案の定、一口飲んだだけでギブアップだった)
デパートで私がジーパンを買ったとき。
すると、エリスは『お姉ちゃんのジーパンかわいいね』と元々、自分が選んでいたワンピースを元の場所に戻して私と同じジーパンを買った。
…はっきり言ってワンピースのほうが可愛らしい服装だと思う。(私はボーイッシュ系の服装が好きだ)
この他に挙げるとキリが無いから止めておくが、ともかくエリスはよく私の真似をする。
そんな所も可愛らし気があっていいと思うが、私は時々そんなエリスの姿を見て切なくなる。
無理に私に合わせようとするエリスを見て………胸が締め付けられるというかなんというか……そんな気持ちになるのだ。
だから、私はエリスに対してよく『もっと自分の意思を持ちなさい』……と思うだけで口には出さないが。
でも、エリスの無邪気な笑顔を見てなんだかどうでもいいような………何だか気恥ずかしいが幸せな気持ちになるのだ。
だから、私は嬉しかった。
初めて、エリスがその……自分の意思で私に打ち明けてくれた台詞。
「………お姉ちゃん、お姉ちゃん……私………私、あの人の事………好きになっちゃったみたい………」
………はずなのに。
嬉しかった、はず……なのに。
その反面、私は素直に喜べなかった。
嫉妬……そんなものではない。
だって、私はあの男がだいっ嫌いだもの。
そう、だいっ嫌い………なはず、自分でそう言い聞かせている。
でも………なんでだろう……?
その真逆な感情も私の中で芽生え始めているのは………?
怖い………
怖い………
怖い………
自分が自分でなくなるようで………
アリスという人格が『別のアリス』という人格で埋め尽くされるようで………
それが怖い………
これは………あの男の『魔力』……なのだろうか?
………
今の私の胸の内にあるのは不安だけだ。
エリスもあの男の『魔力』にやられてしまったのだろうか………?
それとも………
もしかして、いつもと同じように自分の意思でなく、私の真似を………?
ゾク………
そんな事を考えていると急に寒気が走った………
私の考え過ぎ………なのだろうか?
あぁ、もう……何が何だか分からなくなってきた。
「………」
ふと気付くといつの間にか家の前に居た。
……あぁ、あれからエリスと公園で会って……それで結局、無言で帰ってきたんだ………いや、多分エリスが一方的に話をしていただけで私はそれに対して適当な相槌を打っていただけだ。
「ただいま〜」
エリスは誰も居ないのに挨拶をした。
「おかえりでちゅ〜♪」
いた。ちびっ子先輩(麻里先輩)が。
「あ、今日もうちで晩御飯食べていくんだ?麻里ちゃん?」
「うん!うん!アリスちゃんの料理はコンビニ弁当とまではいかないけどおいちーからねぇ〜〜にゃふふ♪」
なんだか殴りたくなってきた。
「………」
「あっ、嘘だよ!(汗)嘘ぴょ〜ん♪……あ〜〜〜!!!その目は信じてないなぁ〜〜〜!?アリスちゃん!?………いや、ホントだよ?アリスちゃん?信じて?お願い?麻里ちゃん信じてくれないと泣いちゃう、えぐっ」
………あからさまな嘘泣きだった。
「………ふん」
そんないつもと変わらない麻里先輩を見てちょっと和んだ。
………気………使ってくれたのだろうか?
まさか………麻里先輩に限って………ね。
しかし、この時、まだ私には分からなかった。
エリスが口にしたあの台詞の真意がーーーーー




