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2話 「出会い」 中編

中途半端ですが、戦闘を入れると長くなるので3部構成にしました。

少し会話を増やしました。

 基地を囲んでいる柵の内側にある一際大きい建物に向かって2人が進んでいく。一人はグレン。もう一人は入り口で衛兵達に騎士と呼ばれたランスロットだった。


 ランスロットはグレンが兵士として戦っていけるのかどうかを確かめるための試験の付き添いとして同行していた。




 「兵士になりたいだと?」


 「そうです。俺達がなにを言っても聞かないんですよ。」


 ランスロットと呼ばれた騎士と衛兵の二人が基地の入り口で話し合っている。内容は少年の扱いについて。衛兵の二人は少年の無茶振りに困っていた。


 「そうか・・・それならば俺に任せろ。」


 それをランスロットは頼れる上司のように快く引き受けた。


 「あ、ありがとうございます、ランスロット様。」


 「このご恩はいつか必ずします。」


 「気にするな。この子供は俺が預かるぞ。」


 「はいっ、どうぞご自由に!!」


 そう言われたランスロットは話が終わるのを律儀に待っていたグレンに呼びかけて基地の中へと連れて行った。


 「それで、これからどうするんだ。」


 基地の中を少し歩いたところでグレンが問いかける。それをランスロットは思うところがあるのか少し間があってから答えた。


 「・・・ふむ、これからお前が兵士になれるかどうかを確かめさせてもらう。もし、合格することが出来たのならば兵士として働いてもいいぞ。」


 「本当か!!それなら張り切っていくぞ!」


 気合を入れているグレンを横目にランスロットは先ほどから考えていたことを再び考え始めた。


 ランスロットはどうやって子供を相手に戦おうかと考えていた。意気込む相手に殺さず無力化するのはなかなか難しい。しかし、騎士として戦場である程度経験をしているのでなんとかなりそうだとも考えた。


 問題はもう一つの思惑にある。それはこの子供がどれだけの力を持っているかだった。


 「(俺は正直この子供の実力を測り損ねている。先ほどの少年と衛兵との会話は街の子供達がよく言うことだから、俺自身は特に気にも留めなかった。しかし、衛兵を前にして、無邪気にも張り切っている少年はほんの一瞬だけ力を見せた。その一瞬で俺はまずいと思った。

原因はすぐに分かる。この子供はたとえ本人が多少力を見せようとしていただけだとしても、俺からみれば二人を殺そうとしているようにしか見えなかった程の殺気を一瞬で放っていたのだ。だから即座に割り込むしかなかった。そうしなければ衛兵の二人は死んでいたかもしれなかった。)」


 ランスロットは先ほどと同じことが起こらないようこうして付き添ってまで子供の動向に気を付けてもいる。


 これからどうすべきかを思案しているとあっという間に目的の建物の入り口にたどり着いていた。グレンはここかと尋ねたので、ランスロットはドアを開けて証明して見せた。そこには大勢の兵士たちがせわしなく動き回っていて活気があるのがここからでもはっきりとわかった。


 ここはクロスストリートの基地本部であり、各種任務の受付場所でもあった。任務の内容は師団規模の作戦ための徴兵だったり物資を運ぶ馬車などの護衛や小さなものでは魔物退治などがある。そして兵士達は任務の受託、準備、報告などをするためにあちこちを動き回っていた。


 ふと、いつもと違った忙しさを見てランスロットは思い出した。


 「(最近北部のロージアが落ちたんだな。それの各種引き継ぎや、穴を埋めるために南部のここからも派兵しているんだったな。)」


 「すまないな。いまはいろいろ大変なんだ。」


 「いや、ここまで来れただけでも良いもんだ。大抵はどこも門前払いだったからな。」


 「ずいぶんと見上げた根気だな。」


 「まさか。もしここがだめだったら実力行使にでるつもりだったし。一人で戦場に行ってみようと思っていた。」


 ランスロットはなんとも言えない気持ちだった。なにしろ、自分が止めなければ少なくない犠牲が出るところだったのだから。この子供がどこまで本気なのかは別として。


 「うむ、できればそれは避けて欲しいものだ。とりあえずお前が兵士に合っているかを確かめるために受付に行くぞ。」


 「分かった。」




 2人が受付まで歩いていく道すがら彼らの前にいた兵士達は道を空け周りからは感嘆と恐れの言葉が聞こえてきた。


 グレンはそれを見聞きして、この騎士が来てくれたのは本当に助かったと思っていた。先も言ったが首都などの兵士斡旋所や砦、騎士団などいろいろな場所を訪ねて行ったが、どこもまともに取り扱ってくれなかったのだ。せめて自分の身分を保障してくれるものがあれば違ってくるが、もうないものをねだってもしょうがなかった。だからここでも追い払われたら怒りにまかせて暴れてしまおうかと思ったが、なんとかなってよかったと。


 グレンはランスロットの気苦労も知らずに呑気に考えているとすぐに受付のひとつについた。


 「あら、ランスロット様。珍しいですね、騎士であるあなたさまがここにいらっしゃるなんて。」


 そう言って対応したのは受付嬢をしていた一人の女性だった。

 

 「すこし用事があってな。すまないが闘技場を貸してくれないか。あとレイヴン隊長も呼んでくれ。」


 「はあ、闘技場に、隊長ですか?…もしかして兵士の適正試験ですか?」


 「そうだ。こいつが受ける。」


 そうしてランスロットは斜め後ろにいるグレンを差す。

 

 「えっ!子供じゃないですか!ランスロット様、どうなされたのですか!?」


 「子供とはなんだ。これでも戦えるぞ。」


 受付嬢は驚く。ランスロットを一目見ようと集まっていた周囲も驚きを隠せない。彼らは兵士なのだ。背後にある国、人を守るために戦っているのだ。だから子供を戦場にだすことはためらわれている。しかし目の前の尊敬する騎士はあろうことか子供を兵士にしようとしているのだ。さきほどは感嘆がほとんどを占めていたざわめきが一気に猜疑心に包まれた。


 「すこし、思うところがあるだけだ。それに、実力があるかどうかを確かめるためにレイヴンを呼ぶんだ。・・・どうせならレイヴンと戦わせよう。奴を相手に何分か持つのであれば、素質ありということだ。」


 さらに周囲が驚く。レイヴン隊長に敵わなければ諦めろとなにも知らない人が聞いたならばそう言っているように聞こえるが、逆にレイヴン隊長に敵う実力を持っているかもしれないという事実に驚きを隠せない。

レイヴン・フレズベルグ。この基地の実質の司令官であり、たたき上げの軍属。自ら前線に赴き、たとえ相手がCTRであろうと一歩も引かず、撃破したこともある実力者だった。それと互角に戦えるかもしれないと尊敬する騎士は言ったのだ。


 「ほう、それほどお前がのたまうのならばいっちょやってみようじゃないか。」


 その場にいた全員が年季のある太い声の方のした方を向くと、そこには今話題にあがったレイヴン隊長がいた。


 「隊長!!」


 「若いもんばかりで盛り上がっているのは見てられないぞ。嬢ちゃん、闘技場の方よろしく頼む。」


 受付嬢は話を振られたことに気付くと


 「はっ、はい!すぐに手配します。」


 慌てて受付嬢は受付のカウンターの奥に駆けていった。


 「では、ワシは準備をするので先に闘技場の方へ向かっといてくれ。」


 そう言って自身も廊下の奥へと消えていった。


 周囲の人々は呆然とそれを見ていた。そして誰かが、闘技場へ行くぞと言うと次々と散らばって各々支度をし始めた。その際グレンに向けて一応エールを送っている者もいた。そうして嵐が通り過ぎた後、取り残されていたのはグレンとランスロットだけだった。


 ランスロットは済まなそうな感じに言った。


 「祭りごとがあるとこうしてみんなで楽しむのがここのやり方だ。戦争中は娯楽が少なくてな。そのうち慣れる。」


 グレンは呆れた口調で疑問を口にする。


 「まだ兵士にもなってないんだが。それより任務とやらをほったらかしにしていいのかよ?」


 「それは、問題ないはずだ。いまちょうど大規模な作戦が終わってしばらくは小競り合いが続くだけだろう。ただ受付の一人は残すべきだな。」


 そう言ってランスロットは闘技場の方へ歩き出した。それにグレンはついて行きながら先ほどのレイヴンと呼ばれた老人のことを考えていた。


「(見た目は60近い爺さんだな。頭も白髪が占めていたし。しかし、あの豪胆さや身のこなしは侮れないだろう。ただでさえ歴戦の猛者のような雰囲気だったんだ。それらが加われば化け物になるだろう。でも、勝ててない相手じゃない。)」


 そうグレンは淡い確信を抱いた。




 闘技場は熱気に包まれていた。観客席は戦士や魔法使い達の服装で色とりどりで満員になっている。明らかにあの場にいなかった者達も試験を見に来たようだ。そして、どこからともなく、このようなイベントの時に現れる出張販売も有志が出し、それも順調に売れているようだ。


 そんなお祭り状態の闘技場の中心にある試合場にはげんなりした様子のグレンがいた。


 「(さすがに、これは盛り上がりすぎだろ…。そうなると簡単に勝っちゃうとまずいな。いや手を抜いて勝てる相手じゃないだろうし。どうすりゃいいんだ?)」


 そう自問自答していると、グレンの正面30m程先の扉が開け放たれた。


 そこから全身を黒に近い灰色のフルプレートで覆われ、巨大な斧、おそらくハルバートを肩に乗せたレイヴンが出てきた。レイヴンだと分かったのは彼が顔だけ晒していたからだ。それでも彼の鎧から醸し出される鋼の筋肉は隠しようがなかった。それらから放たれる気は常人ならば気圧されるだろう。


 「待たせちまったようだな。この騒ぎが苦手か?」


 「いや、こっちから押しかけて来たんだから仕方ないさ。」


 レイヴンの気を受けてもグレンは平然と応える。


 「そう言ってくれるならありがたい。しかし子供が兵士になるための試験を受けるとはな。」


 「無理な話なのか?」


 「いや、兵士は随時募集中だ。ただ多くのものは子供は笑って平和に暮らしていて欲しいと思っているのじゃがな。」


 「戦争中なのに甘いな。」


 「許してやってくれ、はははっ!!。…そろそろ始めるとしよう。」


 「分かった。ルールとかはあるのか?」


 「いや、わしと戦うだけだ。どちらかが倒れたらそこで終了じゃな。」


 「分かった。」


 「では…始めるとしようか!」


 「じゃあいくぞ!」


 そう言うや否やグレンはレイヴンが動き出すより早く目にも止まらぬ速さで駆けだした。



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