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1話 「争いの日常」 前編

前回主人公を登場させるといったが、ちょっとしかでてない。

戦争において脇役は活躍するもんですよ。(いろんな意味で)

追記:セリフの枠を一部変更しました。

1189年 秋 アイリ・スタ国中央部


 「敵を足止めしつつ、前線を維持せよ!」


魔法派の指揮官らしき人間が周囲の部下に命令する。爆発と粉塵によりどれだけ聞いているかもわからない中で、それでもそれが絶対とでもいうかのように指揮官らしき人間は命令する。


 周囲の兵士達もその命令は嫌というほど分かっていたから魔法で障壁を展開する。なにしろいま激を飛ばしている指揮官で四人目だ。他の三人は、今頃CTRによって踏みつぶされているだろう。

死んでいった奴らは皆同じ命令を飛ばしていた。それだけになおさら引けなかった。そう思った矢先、指揮官の頭が骨と肉片とともに爆ぜた。それに遅れて体中を銃弾が通過していった。CTRの銃弾はあっさりと人間の体を裂いていったのだった。

周囲の兵士達はその肉塊に構わず次の指揮官という的を自ら買って出て、再び戦線を構築しなおして戦闘を続行する。


 そんな中、兵士達の中でも最前線で戦っているうちの一人である魔法使いの男は、一瞬の油断も出来ない戦場の転機を嫌々思い返していた。


遠く地平線から轟音を立てて黒い影が現れた。そう、CTRの一群が戦場に現れたんだ。


 最初の命令は敵歩兵大隊を叩き、中央部における戦線を維持することが目的だった。

 こちらは千人近くを砦から動員して意気揚々と出撃した。敵を見つけると密かに包囲し、一斉に奇襲を仕掛けた。敵は数が多いとはいえ、歩兵程度の銃弾なんて弾ける魔法使いがほとんどで、さほど苦戦せずに殲滅していった。

 中には日頃の恨みをぶつけるかのごとく一部の兵は敵の四肢を裂いたり、動けない敵兵を火あぶりにしたり、串刺しにしたりもした。そうして健在している敵の数があとわずかにまで来たところで、多くの兵士達が楽観していた。久しぶりの勝ち戦だと。


 しかし、突然の轟音と駆動音によって、戦場の様子は一変した。轟音だけならば、飛行機か戦車だと判断し、皆気を引き締めて確実に対処できただろう。しかし、轟音と共に聞こえてきたのはCTRの駆動音だった。CTR独自の駆動音を聞いた途端皆が戦慄する。


「この音は・・・」


「くそ、最悪じゃねえか。」


 皆が思っただろう。CTRに敵うわけない。と。魔法は特殊な装甲に弾かれ、逆にCTRの火器を魔法で防げず、防御結界を貫き骨を肉を絶っていた。そして、10mもの巨体が時速50kmで突っ込んでくるその恐怖に。


「っ! 諸君、稜線を形成し陣形を整えろ。奴らに対して、上半身だけだしての縦列横隊だ。的を絞らせず、突撃を防げ。」


「無茶を言いやがって。それしかないのは分かってるけど。」


「無駄口を叩くな。早くしろ!」


 それでも歴戦の兵士達の反応は素早かった。魔法の使えない戦士達は前衛に出て、敵を引き付ける。そして、中衛には魔法使いが控え、前衛が引き付けた敵を、一斉に攻撃する。運が良ければ、銃火器や腕の一本は取れ、動作に支障をきたすことが出来る。


敵が突撃体勢から、足を止め銃撃に移行した。障壁なんて簡単に割られるがないよりましだった。問題は、こちらの火力である。確実にCTRを仕留められる人間はこの場にはいなかった。だから全体の数を減らすことなんてできない。


 そうこうしている内にこちらが一方的に数を減らしていく。後衛に治癒魔法使いや支援魔法使いが控え、傷ついた者や戦っている者を助けているが、助ける兵士達が一撃で肉体を吹き飛ばされては、命を救うことも出来やしなかった。


 嫌なことにCTRには魔法よりも射程距離があるらしく、さらに後衛が隠れることのできる地形や障害など雀の涙程度なので、魔法を行使すれば、居場所が割れ確実に仕留められるので、恐怖でいまでは逃げ出すか、少しでも生存確率をあげるために前線に出て煙幕に隠れるかの二択しかできない。魔法使いの男は戦士ではないが、前線が崩壊しないよう途中から前衛へと変わっていた。それほどまでこの戦いは悲惨だった。すでに半分はやられたと思う。


 「(これほどの惨状においても撤退する気は、ないだろうな。恐らく、他の連中も同じ考えだろう。)」


 目の前の現実を受け入れないだけかもしれないが、それでも命を懸けてでも魔法というモノを守るように教育を受けてきたのだ。魔法がなくなれば、生活が立ち行かなくなる。せめて一矢ぐらい報わないと気が済まない。そう思って気を引き締めなおす。


 ふと、仲間の様子が気になり確認しようと横目に見る。戦場において孤立するのは、非常にまずい。とくに乱戦時は、気づけば周囲は敵しかいない状況になっていることもある。それは死を意味する。だから、一瞬左右を確認した。


 たしかにまだ仲間はいて前線を構築していた。しかし、その中にいつの間にか大人のように見えるがまだまだ子供の少年がいた。そしてその少年は列を抜けてあろうことかCTRに向かっていたのだ。


 戦場に、それも最前線に子供が迷い込むのはおかしい。自分のいる舞台は全員顔見知りだ。子供なんていなかった。ならば最近多くなった徴兵制によって強制的に連れてこられたのかもしれない。


 何時の間に増援が来たのかもわからないが、CTRと対するのは死にたがり屋だけだ。少年が戦っていい相手ではない。


 たとえ魔法使いであろうと、兵士として女子供を参加させるのは問題ない。すでに国はそういう仕組みになっており、前線に参加する魔女や学生もちらほらと見かけていた。


 それでも、どこにあるのか分からない良心から、そんなことはさせまいと思ってしまった。だから少年を助けようと駆けようとした。


 そこで気づく。助けようとした少年の異常さに。


 少年の身長は170cm前後だろう。見かけによらず童顔で、服装は魔法使いにみえない私服で、腰に2本の刀を納めた鞘を差している。防御結界は発動させていない。それだけならば、死にたがりのガキにみえる。


 しかし少年の足はゆっくりと確実にCTRに近づく足運びで、CTRはいまだに気づいていない。

それほどまでに少年は静かで気を逸らせば見失いそうだった。それに少年は落ち着いていた。爆発と怒声が響く戦場の真ん中をまるで散歩をしているかのように歩いていたのだ。そしてCTRを見つけると、口角が上がったように見えた。それは悪魔のような狡猾な笑みに見えたが、思い返してみれば悪魔そのものだったと思う。




 CTRは虐殺の限りを尽くしていた。戦場においてCTRに敵う存在はないに等しい。だから操縦者も安心して敵に囲まれていく。そしてなぎ倒していく。


 一機のCTRが右手のマシンガンを放った。すると放った先にいた味方を鼓舞していた指揮官らしき人間の頭を吹っ飛ばした。そして足を止めた指揮官の近くの魔法使いに向かって、傍らにいたもう一機のCTRが右手のライフルで狙撃し、撃たれた魔法使いは胸の空いた屍となった。


 「ガッツ3、そっちは何人殺した?」


 「50人ぐらいだ。まあ、死んでないのもいるがな」


 ガッツ3と呼ばれた人間の乗っている機体はマシンガンを装備して、先ほどから寄ってくる敵の兵士達に向けて撃ちはなっている


 ガッツ3と交信したのはガッツ2で、こちらはライフルを装備した機体で、一人一人狙撃していっていた。


 「そりゃそうだな。こっちは38人だ。確実に頭と胸を狙ってな。」


 会話を交わした2人は殺していく人間をまるで狩りをしているかのように数えていた。冷酷なのではない。あくまで戦場の狂気を吸いすぎただけだった。


 「ガッツ2、3。無駄口をたたく暇があるなら一兵でも多く殺せ。」


 二人の会話に嫌気が走ったのかガッツ1が割って入ってきた。


 「へいへい。」

 「わかってる。」


 応答して2人は無線機を切る。


 ガッツ1である隊長は苦虫を噛み潰しながら思う。


 「(急遽小隊を作れといわれて組んだらはずれだと。所詮寄せ集めの志願兵なんてクズばっかだ。…だが俺が上に行くためにはこんな小隊長なんて役でもやらなければいけないとはな。虫唾が走るわ。)」


 「ん?」


 なにかに気づいて正面に顔を向けると目の前に、魔法使い達がいう防御結界すら発動させていない子供がいた。おかしな光景だが、少年兵なんてすでに何度も目にしているので手が鈍ることはない。


 「(馬鹿が。戦場にのこのことやってくるとは。防御結界を発動させずに来るとは魔法使いもいかれたようだな。)昇進のためだ。死んでも恨むなよ。」


 ガッツ1もまた狂気に呑まれていた。それを本人は自覚せず、欲望のために殺そうとする。右手のライフルを向けて引き金を引こうとしたとき、子供の体がぶれた気がした。


 だが子供は目の前にいる。なにかの勘違いだと思った。


 ガッツ1は引き金を引こうとしたがそれよりもはやく、目の前に光が迫った。


 瞬間、ガッツ1の機体は突然力を失って膝を付き、爆散した。


 「「っ!!」」


 ガッツ2、3は息を呑んだ。ガッツ1の機体の信号が突然途絶えたのだ。そして直後の爆発。これの意味することを二人はすぐに理解できた。


 2機はガッツ1の機体があった方を向いた。そこには燃えているCTRの残骸と刀を鞘を納めてる場違いにも程がある少年が佇んでいた。

次でアニメにおける1話は終わると思います。

そしたら回想をいれると思いますのでご了承ください。

ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。

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