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プロローグ

 どことも知れない荒野を幾条もの光が飛び交う。片方の陣営側からは火であり水であり風が指向性のある形として。もう片方の陣営側からは鉄の雨が。

 互いの陣営へと襲い来る嵐は、しかし片側しか被害が出ていなかった。人間の止まない悲鳴が多いのは火や水を放つ者達の方だった。


 この世界では魔法はすでに過去のものとなっていた。

 

火や水、それらを放つものは魔法使いと呼ばれている人間達で、原初の時代から戦場の華だった。それが今は一方的に蹂躙されている。もう片方の陣営の、鉄の銃弾が魔法による防御を無にしているのだ。

全身を鋼鉄の鎧に覆われており10mを余裕で越えている巨体が何十と立ち並び火線を放つ。その一挙一挙の重い動作が魔法使い達に対して圧倒的な差を知らしめていた。


 両陣営の惨状は明らかに違っていた。布や皮を使用して魔法に耐性を付けた服装である魔法使いの方は皆汚れていた。爆発による粉塵のせいではあるが、それでも無傷な分まだましな方だった。少なくない数の魔法使いは、片腕がなかったり、両足が吹き飛んだり、酷ければ腹に大穴が空いている者もいた。それらほとんどの傷は鋼鉄の巨体によって一方的に負わされた傷だった。


 片や、鋼鉄の鎧を纏っている巨体はいくつか腕や足が動かなくなったり、部分的に吹き飛んだ程度の被害は出ているが、動きを止めるものはなくおおむね健在であった。それは、魔法使い達の魔法をほぼ無力化できるほどの装甲と、人間を紙のように裂くことが出来る武器を持っていたからであった。


 圧倒的武力を前に、魔法使い達は徐々に後退していく。ゆっくりと、少しずつ。しかし、多くの者は背を向けない。敵に背を向けてでも逃げ出せば助かるかもしれないのに、彼らは逃げ出さなかった。逃げれなかった。逃げれば彼らの存在意義がなくなるからこそ。彼らはいま勝ち目のない戦争をしている。それは戦争という名の革新を強いられているのでもあった。




 創造歴1188年。魔法国家アイリ・スタに対して、地方都市であるアトランス、アカリファ、ストライシアを中心とした都市群は宣戦布告をした。


 国家内の都市が宣戦布告。というには語弊があるかもしれないのは、この時、国内では魔法派と機械派と呼ばれる二つの勢力が長年対立していたことに起因する。


 魔法派は古来より魔法至上主義であり、それらを信じる人間達を中心として、国を築いてきた。それはこの世界では当たり前のことだった。そのため、国の西側、内陸部にある首都ガンダルムは魔法使いたちによって治められ、多くの人間が魔法を習い、日常生活で使っていた。

魔法が使えなくても、武器を使い、魔物などを討伐する人間も一応こちら側に属していた。それは魔法と同じく普通ではないもの、神秘の存在である魔物を認めているからでもある。


 一方、機械派はと言うと、アトランスなどの都市に住んでいる魔法を使えない人間達が中心となっていた。

 アトランス、アカリファ、ストライシアは国の東側、海に近い地域の都市である。海が近いため海の向こうにある国と貿易が盛んで商業が発達していた。しかし、彼らは魔法が使えないからといって差別はされないものの、このように端に追いやられたという劣等感を持っていた。暗に差別されてきたのではと疑心暗鬼になっていた。

 それは魔法を研究する人間は俗世と関わることは少ない。そのため内陸部に籠り他国との関係をすべて押し付けているように見えることが機械派からするとmこちらに興味がないと言わんばかりで劣等感を持つようになったのだろう。それだけでなくとも、そのような感情が何百年も積もりに積もっていった。


 そこで当時の指導者たちは、魔法に代わるものを作り出し、自らの手で魔法などを必要としない国を作り、さらには世界を支配しようという考えを持った。それは100年に渡る壮大な計画を生みだし、機械派と呼ばれる所以にもなった計画だった。

その名が、「機械化構想」。


 この世界において機械というものは、神代から存在していた。しかし、それを人が使えるようになったのはごく最近のことだった。

 機械化構想の最初の目的は機械によって魔法派を打倒するための兵器作りだった。その過程で産業が発達していった。


 機械派の人々は来たるべき魔法派の打倒のため、無駄だと魔法使いに笑われようとも、努力を重ね、月日を重ねてついに、1180年頃に機械化構想の集大成である2足歩行汎用兵器「コンバットトレースロボット」通称「CTR」を完成させた。それは魔法耐性を持たない戦車、軍艦、飛行機に取って代わり、永らく主役の座に君臨せしめるものだった。


 CTRは人型であり、鎧を着こんだ重騎士を10m前後まで巨大化させたかのような機械で、人間が操縦することで真価を発揮するものだった。

 武装は機体ごとに異なり、操縦者や部隊の特性に合わせて両手にライフルやマシンガン、バズーカ、盾。肩にロケットやレーダー、キャノン。近接戦闘用に実剣や高熱剣など、様々な状況に応じて武装を変更することができるように応用が利くよう設計された。

 構想の原点として、規格の統一化を図ることがあり、材料や工程もそろえる様にと各工場に伝えられてCTRも武装も製造されたからである。


 CTRは魔法使いに対して大きなの優位性を持っていた。

 装甲は、複数の特殊な鋼鉄を使用した装甲であり、並大抵の物理攻撃は通さない。その特殊な鋼鉄は対魔法防御にも優れており、歩兵を吹き飛ばせるほどの魔法を受けても、装甲が破壊される程度に抑えられた。これによって操縦者の安全面を考慮する必要もなくなったと言ってもいい。

 推進力は、巨体を動かせるだけあって、飛行は出来ないがダッシュ、ジャンプができるぐらいの力を確保している。そのため機体の重量を活かした部隊による推進力を使った突撃は魔法使い達にとって死の行進に等しく非常に有効だった。


 しかし、弱点もある。

 関節部やソフトウェアの開発は100年あまり経ってもあまり進んでいない。歩行速度は戦車と同等程度しかなく、小回りが利かない。そのため、戦車より燃費が悪く商業都市の利点である資源を貯め込んでいなければすぐに補給が途絶えてしまう危険もあった。また、操縦できるのは1機体に1人だけで、通信機も遠距離の通信ができるのは隊長機のみで量産機は付近の味方にしか通信を出来ないため、刻一刻と変わる戦況についていけなかったり、部隊とはぐれ孤立しやすく、各個撃破される可能性もあった。

 それらを踏まえてもひとたび部隊単位で戦場に現れれば、敵を恐怖のどん底に落とすことが出来る兵器としてあるのが「CTR」であった。


 CTRの完成をきっかけに機械派は魔法派に戦争を仕掛けることとなった。戦争直前までにロールアウトしていたCTRは一種類のみ。CTRの名称は「ヴァン・ガード」。多くの実験作、失敗作を乗り越えて、機械派はこの機体にすべてを懸けていた。各工場の生産ラインに「ヴァン・ガード」を乗せ、急ピッチで製造されたそれは戦争開始時には400機を揃えていた。


 それでも、機械派の技術者達はこの戦争に勝機を見出せるか不安だった。つもりに積もった鬱憤を晴らすための急ぎすぎともいえる宣戦布告もあり、政治家達や市民達は皆、魔法がなくても魔法使いたちの劣らないというプロバカンダを通してCTRに全幅の信頼を寄せていたからである。

 そんな中で、もし、実戦で魔法派が対策を練っていて、その力の前に無力であったら自分達が責任を負わなければならない。だからこそ戦争前日まで日夜研究を惜しまず改良を重ねていった。


 蓋を開けてみると、結果は大波乱を巻き起こした。魔法派はCTRの存在を知っていながらも、楽観視していためにほとんど対策がなく、開戦半年で宣戦布告した都市群の周辺にいた魔法派の軍はほとんど駆逐されてしまったのだった。


 これには両派ともに驚いた。機械派は予想を上回る戦果を挙げるCTRの性能が良かったため、今までいっぱいいっぱいだった各工場のラインを増設しさらに生産を推し進め、心配が杞憂だった技術者達も一層研究に励んでいくこととなった。

 一方、魔法派は予想以上の損害に情報不足を嘆きながら初期の戦闘の責任を擦り付け合うも、国王を中心とした国が一体となって反抗することを決めたことでうやむやになった。しかし、戦争が始まってから研究を始めるのはあまりにも遅すぎたし、CTRより前に作られていた戦車や飛行機などから得る情報など皆無に等しく、一から研究しなくてはならないこともあり、ずるずると戦線を押し返される。


 今までの常識を塗り替えられ、魔法は機械に打ち勝つことができずに負けていく。

 それでも彼らは誇りでもあり、自らを縛るものである魔法の存在意義を守るために負けられない戦いを繰り広げていった。

 この戦争は後に「予言戦争」と呼ばれることになる。それはまるで変わりゆく時代を象徴したからだろうか。それとも予言のように定められていた結末によるものだったからだろうか。それは当時の人々にはわからない。


 移り行く世界において、戦火に投じた一人の少年もまたこの戦争の結末を通して運命を変えていくこととなるのはまだ誰も知らない。

みなさん初めまして。この作品をご覧になりありがとうございます。

プロローグは世界観の説明しかしてませんので、主人公を期待していた方はごめんなさい。

次は絶対出します。

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