さよならの手紙
前略
突然ですが、私、あなたを卒業することにしました。
あなたはいつでも甘くて優しくて。
どんな時も変わらず、私を癒してくれたね。
ときどきはちょっぴりしつこく思うこともあったけど。
そんなあなたが大好きでした。
もちろん今でも好きだよ。だけど、甘えてばかりもいられないよね。
だから今日を限りに、あなたとは縁を切るつもりです。
今までありがとう。さようなら。
次に会う時はきっと、もっといい女になってるからね。
20××年12月20日
* * * * *
「……うん。違うんだよ。これはその、決意表明いうか」
「それはまあ、一応わかるんだけどね……」
3ヶ月前に書いた例の手紙を妹に見られた。
ひらひらと紙を揺らしながら、妹は完全にあきれ顔だ。
「だけどお姉ちゃんさ。結局のとこぜんっぜん、卒業できてないよね?」
「うぅっ」
「いくらプチダイエット成功したからってさ。まだ3ヶ月だよ? リバウンドするよ?」
返す言葉もございません。
私は首をすくめた。目の前の机には、食べかけのチョコレートが2箱。
「まぁお姉ちゃんにしてはがんばった方じゃないの。知らないけど。
チョコレート断ち、記録3か月とかって」
* * * * *
……追伸。
私はあなたを卒業できませんでした。
もういいの。あなたとは離れられないことがわかったから。
これからも、末永くよろしくね、チョコレート!
草々
短編企画「陽だまりノベルス」参加作品。お題は「卒業、そして」ただし「恋愛禁止」でした。