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いかにして僕は王国の権利をあきらめて敗北を受け入れたか

・細かいことは気にしないで下さい。



王城、西の塔。


その一番上に僕の寝室がある。

塔と言っても3~4階建てのビルと同じぐらいの高さしかないのだが、それでも高い建物が周りに無いので、塔からの眺めはお気に入りだ。


(もうそろそろ窓を閉めないと寒くなるですね)


比較的緯度が高く、内陸に位置するこの王国の冬は厳しい。

石造りのこの塔は冷え込むと氷の中に住んでいるような寒さになる。


(でも、エスキモー達の住むイグルー(氷の家)は暖かいと聞くのです、やっぱりどれだけ断熱に力を入れるかなのです)


僕の部屋は石の隙間をこれでもかと漆喰で目張りさせて、隙間風を遮断した上に、大きな絨毯を壁にも床にも敷いて熱が逃げないようにしている。

さらに床に設置したオンドル(床下暖房)にはいつでもコークスを放り込める用意ができている。

コークスは火力も高いし、煙もあまり出さないのがお気に入りだ。


(食事だけでなく、住むところもずいぶんと改善できたのですよ)


ちなみに食・住と来て、衣のほうは輸入物の絹を使っている。

ベッドは吸湿性を優先させてリネン(亜麻)だ。良く湿るので。

カイコを入手させようとしてずいぶんと金を使ったものの、なかなか成功しない。


「あの……姫様?」

「あ、ごめんなさい、ちょっと考え事をしていたのですよ」


そういうと僕は止めていた手を再度動かし始める。


「あっ、んっ……ひめ、さまぁっ……」

「姫様っ、私っ……」


思わず声をあげる二人の女性……ジョアンとクレアがベッドの上で愛撫の快感にきめ細かい白い肌を揺らす。

豊満なジョアンととスマートで華奢なクレアの身体のコントラストが実に良い。

最近はこの組み合わせでベッドに呼ぶ回数が増えた。


(……うん、やっぱり男に抱かれるよりこっちのほうがいいかもです!)


「あっ、わ、私っ……あっ!!」

ジョアンが身体をひときわ大きく震わせた。


「じゃあジョアン、今度は僕をお願いするのですよ、にこっ」

そして僕は可愛い声で()きはじめたクレアを責めながら、ジョアンの奉仕を受けるのだった。



―――――――――――


皆さまこんにちわ。

王国の姫をやっているアリシアです。


そろそろ16歳になるのです。

え?成長具合ですか?


……ジョアンが僕の胸を見てすごい優しい顔をしているのです、あう。


背と胸を成長させようと、毎日頑張って牛乳やチーズを多めに食べたら純粋に肥ってしまったので、死ぬ気でダイエットしたのですよ?!

どこかに胸だけ大きくできる秘術は無いものでしょうか……


とと、話がずれたのです。


お兄様たちが僕を殺そうとしています。

……どうしよう。



―――――――――――



お父様がなくなって、お兄様がアルフレッド3世として即位されてから、僕とお兄様は内政と軍事で住み分けて来ました。

というかご立派な騎士様は金勘定なんかに興味を持たないものですので、僕が勝手しまくってただけですが。


お兄様はすっかり軍事的才能に開花されて、隣国の侵略を2度ほど撃退してしまわれました。僕も背後からビスケットやら干し肉やら食べ物を大量に支援したところ逆撃をいれて隣国から城を2つ奪い取る大活躍です。

戦に強く、気前のいいことが国王の重要な要素ですので、お兄様の勇敢さと僕の財政バックアップで貴族たちの支持は盤石……だったのですが……


まさか貴族たちがお兄様に肩入れして僕に牙を剥くとか……


特に積極的なのが自前の騎士を多く抱える大貴族の公爵と伯爵です。

あることないことお兄様に吹き込んで、お兄様の顔色をさらに悪化させているみたい。


でも、公爵や伯爵にそんなに恨まれるようなことをした覚えはないのですが……。

せいぜい息子さんたちをボーイズラブな妄想に活用して僕のメイド隊と一緒にきゃわきゃわ言ってたぐらいなんですが。


……たまに呼びつけてポーズをとってもらったりはしましたけど。

男同士で腕を組ませたり、男同士でお姫様だっこさせたり、男同士で顔を不自然に近づけさせたり……あう


あ、メイド隊にボーイズラブ文化を布教したのは当然僕です。腐は全世界共通!



―――――――――――



当時の僕は知らなかったのですが、そんなことで大貴族たちがブチ切れたわけではなかったようです。

一番問題だったのは僕が実施していた国勢調査(センサス)で、領主権の侵害かつ将来の課税の布石と受け止められた模様。

そこに国政の実権が僕と僕の直属官僚団である子供たち(チルドレン)に牛耳られている不満、さらに僕の財力への嫉妬などなどがないまぜになって「うぜぇから殺そう」になった模様。

……殺伐としてるのですよ、あう。


いままではここにお兄様の絶対的な支持があったので、貴族たちもうかつに動けなかったのですが、僕がいざというときのために庶民たちを雇い入れて編成した歩兵隊がお兄様にとって逆鱗だったみたいです。

内政や財政を仕切っている僕が軍事力まで手に入れたらどうなるか……貴族たちがお兄様の漠然とした不安を煽って燃料を加えて、大きく燃え上がらせるのにそう長い時間はかかりませんでした。



―――――――――――


そこまで考えて、僕はすごく悪い笑みを浮かべます。


……まぁ僕に気づかれたのは甘いの一言なのですよ。

殺そうと思ったその時にすでに殺し終わっていないと、僕が反撃できちゃうじゃないですか。


まだ実力行使に出ていないのなら、こっちから先手を打ってお兄様を……


お兄様を……



……そんなの嫌ですよう……



(そんなことでどうするのよ!?やらなきゃやられるのよ?)


僕の中の前世の記憶、21世紀の日本人、ナカムラ(中村)マミ(真実)が僕を叱咤する。

人格が複数あるわけではないです、これは理性の僕。


でも、生まれてからずっと……憧れていた強くてかっこいいお兄様。

お父様とお母様がなくなられてからは唯一の僕の家族。

それと別れることを拒絶する。これは感情の僕。そして僕は考える。



僕は……何がしたかったんだっけ……


別に前世の記憶があるからって、これを使って世界征服しようだとか、世界を変えようだとか、大それたことがしたかったわけじゃなくて……


ただ、僕は……



「おお、姫よ、これは美味しいぞ!」

お父様に初めて料理を作ってあげたときのあの笑顔……

お母様もお兄様も喜んでた……



そう、僕はもうちょっといいものを食べて、もうちょっといい家に住んで、もうちょっといいものを着て……

家族と幸せに暮らせればそれでよかったのですよ……



僕はいつの間にか余計なものを抱え込みすぎてたみたいです。

気が付けば頬を温かいものが伝います。



この余計なものに振り回されて、お兄様を殺して、僕は独りになる。

それぐらいなら……



   捨てよう。




そう思うとふっといろんなものが楽になりました。



僕はベッドから立ち上がると、お兄様の部屋に向かいます。



お気に入りの白いドレスをつけて、何も持たずに、誰も連れずに、お兄様の妹として。


歩きはじめました。


お兄様が受け入れてくれるかどうかは分かりません。

もう刺客を準備しているかもしれません。



でも、愛するお兄様を殺して独り生き残るより、愛するお兄様に殺されたいのです。



僕は一歩ずつ石造りの階段を下っていきます。



……明日、僕は16歳になります。生きていれば。



・次で終わるかも。


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