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桜の木の下で、微笑むあなたに恋をした

作者: 森実 蓮華
掲載日:2026/03/22

森実もりざね 蓮華れんかです。

現実世界恋愛ジャンルです。

宜しくお願いします。

 一目惚れだった。


 入学式の日。

 

 桜の木の下で──

 微笑むあなたに──


 恋をした。



 春の風が、まだ少し冷たい朝だった。

 真新しい制服に袖を通して、俺は校門をくぐる。


 高校生活。

 特別なことなんて、きっと何も起きない。


 そう思っていた。


 ――あの瞬間までは。


 校庭の端にある、大きな桜の木。

 その下に、一人の女の子が立っていた。


 風に揺れる長い髪。

 ひらひらと舞い落ちる花びら。


 そして――

 ふっと、微笑んだ。


 時間が止まったみたいだった。


 周りの声も、ざわめきも、全部遠くなる。

 目に映るのは、ただ彼女だけ。


 心臓が、やけにうるさい。


 初めて会う彼女。

 名前も知らない。


 それなのに――

 どうしようもなく、目が離せなかった。


 気づけば、彼女もこちらを見ていた。

 目が合い、ふっと微笑む。


 思わず、ぎこちなく笑い返して――すぐに視線を逸らす。


 けれど、もう遅かった。


 胸の奥に、何かが残った。


 こんなの、初めてだった。


 入学式の話なんて、ほとんど覚えていない。

 ただ、あの桜の下の彼女のことだけが、焼きついていた。


 その後のホームルーム。

 彼女が同じクラスだと知る。


 その日から──

 気づけば、彼女を探している自分がいた。


 廊下で。

 教室で。

 昼休みの校庭で。


 話しかける勇気は、なかなか出なかった。


 けれども、席替えで隣の席になり、少しずつ距離は縮まっていった。


 笑った顔。

 少し困った顔。

 真剣にノートを取る横顔。


 知れば知るほど、好きになっていく。


 やっぱり

 あの日の気持ちは、間違いじゃなかった。



 入学式の日。

 少し早く着きすぎて、校庭を歩いていた。


 桜が、とてもきれいで。


 思わず、足を止めた。


 ここ、いいな……。


 そう思って、しばらく見上げていた。


 風が吹く。

 花びらが舞う。


 その時――

 視線を感じた。


 振り向くと、一人の男の子が立っていた。

 少し驚いた顔で、こっちを見ている。


 なんとなく、目が合って──

 なんとなく、笑ってしまった。


 彼も不器用に微笑む。


 その瞬間──

 胸が、きゅっとした。


 え、なんだろう、この気持ち……?


 初めて会う彼。

 名前も知らない。 


 それなのに──

 どうしてこんなに、気になるんだろう。


 彼はすぐに目を逸らしたけど──

 なぜか、その仕草すら印象に残った。


 入学式の間、ずっと彼のことを考えていた。


 その後のホームルーム。

 同じクラスだと知った。


 名前を知って、声を聞いて、

 少しずつ話すようになって。


 気づけば、毎日が少し楽しくなっていた。


 彼がいるだけで。


 やっぱり──

 あの時の気持ちは、本物だったんだ。



 放課後の校庭。

 桜はもうほとんど散っていて、枝だけが春の終わりを告げている。


 それでも――あの日と同じ場所に立つと、思い出す。


 入学式の日。

 桜の木の下で、彼女が微笑んだ瞬間。


「……あのさ」


 声が少し震える。

 情けないと思いながらも、止められない。


 彼女が振り向く。


 その顔を見た瞬間、やっぱり思う。


 ああ、無理だ。

 誤魔化せるわけがない。


「入学式の日、ここにいたよな……?」


「……うん」


 短い返事。

 でも、その声だけで心臓が跳ねる。


 息を吸って、吐いて──

 覚悟を決める。


「俺さ――」


 言葉が詰まる。

 けど、逃げたくない。


「一目惚れだった」


 風が吹く。

 かすかに残っていた花びらが、ひとひら舞う。


「入学式の日、桜の木の下で微笑む君を見て――恋に落ちたんだ」


 言い切った。


 もう後には引けない。


 彼女の反応を待つ数秒が、やけに長く感じる。


 怖いはずなのに──

 少しだけ、期待している自分がいた。



 放課後の校庭。

 あの日と同じ桜の木の下。


 もう花はほとんど残っていないのに、胸だけがざわついている。


「……あのさ」


 彼の声。


 振り向くと、少しだけ緊張した顔をしている。


 いつもより、ずっと真剣で──。


 だから、目が離せない。


「入学式の日、ここにいたよな……?」


 やっぱり覚えていてくれたんだ……。

 あの日のことを──。


「……うん」


 自然と頷く。


 心臓が、少しずつ速くなる。


「俺さ――」


 一度、言葉が止まる。


 でも、その続きを私は待っていた。


「一目惚れだった」


 その瞬間、胸が強く鳴る。


 やっぱり、と思った。

 でも、嬉しくてたまらない。


「入学式の日、桜の木の下で微笑む君を見て――恋に落ちたんだ」


 風が吹く。

 あの日と同じように──。


 ずっと同じだったんだ。


 私も少しだけ笑って、彼を見る。


「……奇遇だね」


 声が、思ったよりも優しく出た。


「一目惚れだった。入学式の日、桜の木の下で、微笑むあなたを見て――恋に落ちたの」


 ずっと言えなかった言葉を、ようやく口にする。


 彼が驚いた顔をする。


 その顔が、少し可笑しくて──。


 でも、それ以上に――

 嬉しかった。



 一目惚れだった。


 入学式の日。

 

 桜の木の下で──


 微笑むあなたに──

 恋をした。

◆は、視点が変わるタイミングで、使用しています。


最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
 何か、ミュージックビデオを見ているかのような、鮮烈なイメージの作品でした。現実恋愛、しかも高校が舞台なのに、何処か幻想的な雰囲気も感じられました。  桜の木の下には、何か言いしれぬ魔法がありますよね…
しばらくすると別れてしまうことがよくあるので、彼らの恋が長く続くのを願っています。
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