第五話『修正者《コレクター》vs狂戦士《バーサーカー》、魔力の謎とアイドルの怒り』
ぼくはハイゴブリンが見える場所まで近づく。
(よし、呼吸を整えて...... すぐに修正者はつかえない。 同じものへの使用にはインターバルが五分かかるからな)
覚悟をきめて、ハイゴブリンに近づく。 そして相手がこちらに気づいた瞬間、逃げ出した。
「ガアアアア!!」
「ひぃぃぃ!!」
ぼくは逃げ岩壁の斜面を登りだす。
ハイゴブリンもおってきている。
「は、早い!!」
なんとか捕まらないように上へとのぼる。
「よし、こっちだ!」
上にいたディルさまのほうへとむかう。
「避けよ!」
ぼくは横にとびのいた。
ディルさまが巨大な岩石を落とす。
「ここだ修正者!」
(ここで岩の重さを最大にする!!)
ゴロゴロゴロ!!
「グオオオオォォォ......」
転がってくる岩に巻き込まれたハイゴブリンは地面へと落ちた。
「ふむ、死んでおるな」
ディルさまが岩に潰されたハイゴブリンをみる。
「ふぅ、なんとかなったか」
「そなたがいったように、そのあとおってきたハイゴブリンに岩を重くして落としたのがうまく行ったな」
「ええ、巨岩も軽くしてあそこに置いておきましたしね。 うまく行ってよかった......」
「そなたもなかなかやるではないか。 完全なるポンコツでもないのう。 ん? どうしたそんな口をあけ......」
ぼくは影が大きくなっていたことに気づき動けなくなっていた。
「ああぁぁ......」
「に、逃げ......」
「グアアア!!」
もう一体のハイゴブリンが後ろから現れた。 ぼくたちは腰が抜け動けない。
(し、死ぬ......)
ザシュッ
その瞬間、ハイゴブリンの上半身が消えた。
そこには大剣をもつ少女がいた。
「何してるの?」
「ふーん、モンスターを倒してたのね。 確かにこいつは気配を消して近づいてくるもんね」
そのぼくと同じくらいの年齢にみえる少女はそういう。
(めちゃくちゃかわいいなこの人。 でも、どっかでみたことが......)
「あっ! 藤宮 夏蓮!」
それは人気のアイドルグループの一人だった。
「えっ? なんで、確か、ライブ中の事故で意識不明じゃなかった?」
「......君、私のことをしってるってことはあっちの世界の人間なの。 だったら!」
そういうと夏蓮はぼくの胸ぐらをつかみものすごい力で持ち上げた。
「ひぃぃ」
「あいつが関わってるの! いいなさい!」
「えっ? あいつって誰!」
「あいつよ、あの女神! ディルティナ!」
「あ、ああ......」
ディルさまをみると顔面蒼白になって肩を振るわせている。
(こ、これは確実になにかやらかしてる!!)
「ま、まあ、よくは知らないけど、この世界に飛ばされたんだ」
「くっ、やっぱりあいつの仕業か!!」
「あ、あの、なにかあったの」
「あいつ私が意識不明から戻りたかったら、この世界で大量の魔力が使われている原因を探れって、この世界に飛ばしたのよ!」
(ああ、この人も犠牲者か......)
「でもそれっきり! ずっと放置されて、音沙汰なしよ! 今度会ったらまっぷたつにしてやるわ!」
そう背丈ほどの大剣をふるい巨木をきりさいた。
「ひぃぃ!!」
ディルさまは涙目になっている。
「ああ、ごめんね。 驚いた? つい頭にきてて」
(どうやら、ディルさまが同一人物だとは気づいていないようだ。 会ったときより幼くなっているのか)
「で、でもその強さすごいね。 鍛えてたとか、そういうレベルじゃない」
「ええ、あの女神が唯一与えたのが【狂戦士】《バーサーカー》よ。 魔力を身体能力にかえる力なの。 私は魔法が使えないからね」
そういって剣を振り回している。
(そんな力を与えていたのか。 だろうな普通にこんな大剣女の子に扱えるわけないもんな。 とりあえずステータスを)
藤宮 夏蓮
体力 30
筋力 45
知力 4
魅力 40
魔力 5
運力 25
(筋力がすごい! いや、それより知力が4! ノーキンだ!)
「それで、なんで異世界の君がそんな子供といるの? 妹? そんなわけないよね」
いぶかしげに藤宮さんはきいてきた。
ディルさまが肘をつっつく。
「い、いや...... この人はディルティナ教の聖女見習いディルさまなんだ。 この世界にきたぼくを助けてくれて、魔力の増加の原因をさぐるのに、おつきとして修行の旅についていってるんだ」
「へぇ、なるほど。 あの女神の宗教の......」
なにかいいたそうだが、ディルさまに遠慮したのか、それ以上は言わなかった。
「それで藤宮さんはなにかつかんだ?」
「この一年でわかったのは、モンスターが増加し強くなってること、そして各国の軍事的緊張が高まってることぐらいかな」
(それだけじゃ何が原因か、わからないな)
ディルさまがうつむき加減でぼくの肘を突っつく。
「あ、ああ、じゃあまたなにかわかったら連絡するね」
「ん? なにいってるの? 同じ目的で行動してるなら、一緒にいけばいいじゃない」
そうキョトンとした顔でいった。
ディルさまが強く肘をつく。
「い、いや、ほらやっぱり年頃の女の子と一緒に行動するのは......」
「なに? 君がこの私に何かできる度胸があるの?」
そう巨大な剣が太陽の光で鈍く光った。
「い、いや全くない! まったくないよ!」
「そう、じゃあ決まりね! 私ちょっと用事があるから、そうね。 この先の町バルフトアで落ち合いましょ」
そう一方的にいうと藤宮さんは走り去っていった。




