第三十六話『聖女が導く魔力を巡る戦い』
「ぐ、ぐ......」
アンノーンが苦痛の声を出した。 その体はひび割れ回復もうけつけない。
(もう、無理か......)
「あなたは一体なんなのですか......」
「私もわからない...... ただこの姿にうまれ、使命を果たすためにいきるだけ......」
「使命ってなに?」
「人々の望みを叶える......」
「人々の願い......」
(一体なんのことだ...... ダメだ能力の酷使のせいか、頭がまわらない......)
「ディルさま!」
そうワルシャーン最高司教が叫んだ。
見ると、聖神晶が輝いて宙にうく。
「マルティナ、よくやりました。 封印がとけましたよ......」
空中に浮いている羽のようなのをはやしたレセーラがいる。 そして聖神晶が小さくなる光る球体になるとそれを手のひらの上にのせた。
「魔法をはなつのです!!」
ワルシャーン最高司教の命で司教たちが魔法を放つ、それを払ったレセーラの腕は黒くアンノーンの腕のようだった。
「まさか! あいつも!」
「......では失礼、またお会いしましょう」
そういうと空中をとび聖堂の窓から飛び出していった。
「くそっ......」
「あの早さ、追いつけはしまい」
「なんなの!? あいつもアンノーンなの!!」
「どうやら、聖神晶を狙って、マルティナをこちらに向かわせたのですね...... あわれな」
ワルシャーン最高司教はマルティナだったアンノーンを弔ってくれた。
「ええ、封印をとかせるのが目的だった...... 聖神晶の魔力が目的でしょう」
「......そうですね。 しかし、聖女候補はもうディルさまだけになりました。 正式に聖女となっていただけましょうか」
「......そうだな」
こうしてディルさまは聖女として正式に認められた。
町は聖女降臨の儀のために、大勢の人たちで賑わう。 どうやら他国にいた信者もやってきているようだ。 町はお祭りのような騒ぎとなっていた。
「ディルちゃんは?」
カレンがそういって屋台でかったものをもってきた。
「聖女降臨の儀のため、教会にいるよ」
「......そう。 元気がないわね。 やっぱりマルティナのことね」
「......彼女は自分のことすらよくわからないといっていた。 必ずしも邪悪なものじゃなかったように見えたんだ」
「そうね。 確かに人々のためといっていたわ...... 私たちがみたミルソダスやアスワルドの卵型から生まれたアンノーンじゃない。 それならなにもしらなくても当然だし......」
「ああ、知性のあるアンノーン、その可能性はある...... それならレセーラとギルフェドもアンノーンかもしれない」
「そうか、ありえるわね」
「一体、魔力を集めて何をしているんだろう」
「わからない...... 女神がもとの世界に呼び戻さないのも魔力消費がなくなってないからかしら」
(確かに、いまだにディルさまの力は回復していない...... アンノーンが魔力を集めてることと関係があるはず)
「カレン、世界を旅してたんだよね。 聖神晶のような魔力の結晶の話、どこかでみたり聞いたりしたことはない?」
「そこにアンノーンがくるかもしれないってことね。 そうね...... ああ、あくまで伝承の類いだけど、巨大な魔力を持つ【魔皇石】《ディープストーン》というものが、ラルギスの海底に沈んでいるってはなしは聞いたことがあるわ」
「海底の魔皇石か......」
(ぼくなら海面からでも見つけられるかも。 アンノーンに奪われる前に手に入れないと)
「ふぅ、やっと儀式が終わった......」
疲れた顔をして、ディルさまがワルシャーン最高司教とやってきた。
「これで、正式な聖女となりました。 なれば我々をお導きくださいますよう。 お願いします」
そううやうやしくワルシャーン最高司教と信者たちはディルさまに頭をさげる。
「ディルさま......」
ぼくは、ディルさまに耳打ちする。
「なるほど...... わかった。 そなたらいまこの世界はアンノーンというものたちにより危険が迫っておる。 そのものたちは魔力をあつめなにかをするつもりだ。 聖神晶のような力をもつものを探せ」
「はい、わかりました。 我らディルティナ教、総力もち探しましょう」
そうワルシャーン最高司教率いる信者たちは平伏した。




