第三十五話『聖神晶を求める翼、白き聖女の正体』
ぼくたちは大教会で聖神晶をみせてもらっていた。
「これが聖神晶です」
そこには巨岩のような魔力の結晶が、左右から何本もの鎖で宙につながれていた。
「これは魔力の流出を防ぐための結界魔法です。 勝手に使用できなくなっております 聖女さまが正式にご就任したおりに封印がとかれます」
そうワルシャーン最高司教が説明してくれた。
「昔の聖女さまが使ったんですか?」
「ええ、かつて降臨された聖女さまは、この聖堂でこの力をつかい、巨大な青い炎を操り、せまるモンスター群れを焼き払ったと伝わっております」
「もうマルティナさまは聖女に認定されたんですよね」
「ええ、ですが正式に就任されるのは、【聖女降臨の儀】のあと...... ただいまはディルさまもおられ、みなの意見も半々なのです」
ワルシャーン最高司教はやつれた顔をしている。 かなり疲労がたまっているのだろう。
(でも、レセーラが関わっている以上、やつらに渡すのは危険。 とはいえ本当のことをいっても、追い落とすために言い出した虚言ととられたら、ディルさまの心証は不利になる......)
「やはり......」
「やめよ。 映像をみせたとて、レセーラが何者かしらぬ。 もう使うな。 このまま使い続けると死んでしまうぞ」
ぼくの行動を察したのかディルさまがいった。
「......しかし、聖女となるにはディルさまは不利」
「そうね。 ここで実績のあるマルティナとディルちゃんでは信者の支持はまったくちがう」
「......だろうな。 なれば直接むかうしかあるまい」
「直接!? マルティナさんに話をするんですか!?」
止めようとするも、聞かずにどんどん歩いていく。
マルティナさんが泊まっているという宿についた。 辺りには噂を聞きつけたのか信者もあつまっている。
(まさか、戦うとかじゃないよな。 知力1だとあり得なくもないが......)
ぼくたちはバイオン司教についてマルティナさんの部屋にむかう。
「はい、どうぞ」
部屋にはいると、なにもない殺風景な部屋にマルティナさんがいた。
「すまんが、わらわとトール、マルティナだけにしてくれまいか」
「わかりました」
バイオン司教とガレンはでていく。
「......あなたがディルさまですね。 お噂は聞いております」
「そうか、マルティナ...... そなた何者だ」
(直球すぎる!)
「......私ですか。 そうですね。 私にもよくわかりません」
そうマルティナさんは静かにこたえた。
(嘘をついている風でもない...... しかたない)
「はっきりと聞きます。 あなたはレセーラとあっていましたね。 彼はエゴイズムという危険な薬を作り売っていたものです。 彼との関係は」
「......そうですか。 やはりそういう人物だったのですね」
(なんだ、この反応、しらなかったのか)
「やつが聖神晶を手に入れようとしている目的はなんだ」
「......おそらく、大きな魔力を得ようとしているのでしょう」
そう淡々と語った。
「あなたはその手伝いをするつもりですか」
「私にはそうするしかありません」
「どうしてだ」
「脅されているとかですか」
「いいえ、それが私の指名だからです。 ですが、あなたがきたということはそれが困難になったということ」
そういうとマルティナさんは椅子から立ち上がる。
「すさまじい魔力だ! 気を付けろ!」
マルティナさんはその姿を変えていった。
「これは!? アンノーン!?」
その流線的な白い人型はアンノーンだった。 アンノーンは翼を生やすと屋根を突き破り空へと飛びあがった。
「まずい! 聖神晶を狙ってます!」
「追うぞ!」
「ええ!!」
ぼくたちはアンノーンを追い大教会へとむかった。
大教会では信者たちが逃げ惑っていた。
「うああああ!!」
「悪魔だ!!」
それらをかき分け聖堂へとむかう。
聖神晶のそばにアンノーンがいた。
「ディルさま、あれはなんですか!」
「あれはマルティナだ!!」
驚くワルシャーン最高司教にそうつげた。
「ばかな、マルティナさまがあのようなモンスターだったなんて! いや、聖神晶を奪われてはいけません! みな魔法です!」
信者や司教たちは魔法をアンノーンに放つ。 だがものともしないアンノーンは力任せに聖神晶を鎖を引きちぎろうとしている。
「いくぞ! カレン、トール!」
ぼくも参戦して修正者をつかい、封印の鎖の魔力強度をあげて補助する。
(ビグルムみたいな存在か! でも薬を飲んでもいなかった! いや、いまは聖神晶を!)
ぼくたちが戦うが、まるで歯がたたない。
(くそっ、ビグルムよりはるかに強い! 魔法がほぼ効いていない! 修正者での弱体化もほとんど意味もない。 強化したカレンとディルさまの打撃が多少効いてるぐらいだ)
ただアンノーンは攻撃してこず、鎖を引きちぎっていた。
(聖神晶に意識がいっているのか。 ただ記憶を写し出したことで、戻すための時間操作が使えない。 記憶をみるぐらい...... ここにみるべきもの)
「やってみるか...... 修正者時間」
ぼくは片目でその場の記憶を探る。
「ぐっ...... あまり時間はない。 あった、これなら!」
(いや、これだけじゃダメか...... 他に、他に...... よし)
「カレン、ディルさま! ぼくが攻撃したら、そのあと攻撃を!」
「わかった!」
「わかったわ! まかせて!」
「よし...... きたれ! 青き炎よ!!」
巨大な青い炎がアンノーンを焼く。
「きゃああああ!!」
「凍てつけ!!」
更に氷でその体を凍らせた。
「いまです!」
「おおお!!」
「たぁ!!!」
二人はアンノーンへとむかい、その体を切りつけた。
「がはっ......」
アンノーンはつかんだ聖神晶と共に地面へと落下した。




