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第三十二話『知力1の奇跡、牢の中からの生還』

 ぼくは一ヶ月ほど寝ていたらしい。 ビグルムは捕らえられ、商人ギルドに各国の捜査が入った。 そこでいくつかの裏帳簿など物的証拠も見つかり、幹部たちは逮捕、商人ギルドは解散となっていた。

 

「まったく無茶しおって、時間操作などわらわでも不可能に近いのだぞ」


「ええ、いまだに体にしびれがあります。 でもあのアンノーンの力はどうしようもなかった」  


「そうね。 あんなのまともじゃない。 エゴイズムは全て回収されたらしいけど......」


「あれは、ただのエゴイズムじゃない。 より圧縮して濃度をましたものらしい。 ビグルムは今や物言わぬ存在となった」


 ビグルムは薬の副作用なのか。 意識を戻すことがなかった。


「......ただまだギルフェドや二体のアンノーンが残っている」


「まあ確かにそれは気になるけど、商人ギルドがなくなった今、どうしようもなくない?」  


「ふむ、とりあえずしばし体を休めよ」


 しかし、ユックリ休めることはなかった。



「えっ!? ディルさまが捕まった!」


 カレンが息を切らして部屋に飛び込んできた。


「そうなの! 早く」


 ぼくが城にむかうと、困った顔をしたラルギス王とメルディ姫がいた。 そのそばにはみたことがない人物がいた。


「王さま、ディルさまがつかまったって!」


「......うむ、今しばし牢にはいってもらっておる」


「ど、どうして、いい人でもないけど悪いことをするひとでもないです!」


「トール、ディルはどうやら聖女ではなかったようですの」 


 メルディ姫がため息をついた。


(ば、ばれてる!!) 


「それはどういうことですか!」


 カレンはきく。


「あの方は聖女ではありません」


 そうきっぱりと王のそばのふくよかな人物が断言する。


「こちらはマルーク教国のバイオン司教だ。 たまたまこちらにきたときにディルどのが遊びにまいってな」


(なんて間の悪い人ーーいや、女神だ!)


「ディルティナ教の聖女はマルーク教国の最高司祭が任命するもの。 勝手に名乗ればそれは教団への侮辱となります」


 そう毅然といいはなった。


「我々としても、君たちと彼女には多くの恩があるので穏便にすませたいが、ディルティナ教、最大宗派のマルーク教国とも対立は望んでいない」


 困ったように王は話した。


「ま、まあ一度、本人と話をさせてください」


「わかった」


 ぼくは牢へつれていってもらった。


「どぉるぅぅ、わらわ、捕まったぁぁ~~」


 ディルさまは牢の格子をつかんで号泣している。


「なにしてるんですか!」


「しらぬ~ やつが聖女ではないとかもうすのだ~」


(実際ちがうからな)


「聖女ではございません。 聖女とは奇跡を起こす神の代理人」


 バイオン司教はそういった。


(本職がきては嘘も無駄だな)


「ディルちゃん聖女じゃないって、トールはしってたの?」


「い、いや、知らなかった」


「どぉるぅぅ」


 自業自得とはいえ涙声で心がいたむ。


(今しってるといってしまえばぼくも捕らえられてしまう。 ここは仕方ない......)


「でも彼女の夢に女神ディルティナさまが降臨されたというのです」


 ディルさまはポカンとしている。 ぼくは格子を肘でつく。


「はっ! う、うむ、そうだ。 そうにちがいない!」


「夢に...... それだけで信じられるのですか」


 司教は眉をひそめる


(もう仕方ない......)


「ほらカレン、ぼくたちはディルさまが魔力の結晶をつくるのをみたじゃない」


「あっ、そういえばみたわ!」


「魔力の結晶を...... 本当ですか」


 バイオン司教が驚いている。


「なればみせてやるわ!! ぬおおおおっ!!」


「まって!! そんな力を使ったら!」 


 ディルさまが仄かに光ると、その両手の中で大きな結晶ができた。


「おお! あれは」


 みんなが驚きのなか、ディルさまのつくった魔力の結晶をバイオン司教がみる。


「確かにこれは魔力の結晶...... 奇跡だ! 信じられん! 失礼を! すぐにこの方を牢からお出ししてください!」


 ディルさまがどや顔で満足げに牢からでてきた。


(少し小さくなってる! あっ、知力が1にへってる!!)



「これは失礼をいたしました」


「まあ、わかればよい」


「しかし、こんなことが...... まさか聖女さまがお二人とは......」


「えっ、別に聖女がいるんですか?」


「は、はい。 つい最近、奇跡を起こすものが現れ、最高司教さまが聖女とお認めになられました」


「それは困るのですか?」


「ええ、聖女は常に一人のはず。 これはどうしたことか」


(もう! ディルさまが聖女を名乗るからややこしいことになってる!)


「まあ、二人でもわらわはかまわぬ」


「そういうわけには...... しかし、この魔力結晶は間違いなく本物。 このような魔力結晶など自然にできるものではない。 なればあの聖女がにせものか......」


 バイオン司教は困惑している。


「しかたありません。 我が国にきていただき最高司教さまに判断していただきましょう」


「えっ!? もう本物ならいいじゃないですか!」


(向こうが本物に決まってる! ディルさま断って! なんでアホ面でみてるんですか! あなたのしでかしたことでまずいことになってますよ!)


「まあ、いけばよいのだな」


 のーてんきにディルさまは答えた。


 おれの願いは知力1の女神には届かなかったのだ。 

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