第三話『修正者《コレクター》の新たな能力。 視界に入るものすべてがステータス対象!?』
「本当にいいのに......」
朝、ディルさまが宿の掃除をするとハルリさんにつげた。
「かまわぬ。 そなたはいくところがあるんだろ。」
「うん、じゃあお任せして、私は山菜や香草を市場にもっていくね」
「あっ、いってらっしゃい」
おれたちはハルリさんを見送った。
「それにしても意外ですね。 ディルさまがお手伝いをかってでるなんて。 あいたっ! やめてください! カーフキックは!」
「何をいっておる! 一宿一飯の恩義返すのは当たり前であろう! だからそなたはもてぬのだ!」
「もてないのは知らないでしょ! 確かにもてませんけど!」
「思慮が足りぬともうしておる」
「えっ?」
「仕送りがいくらかは知らぬが、生活が豊かとはいえぬ。 ゆえに山菜を売りにいったのであろう? そのものが我らに施しを与えたのだ」
「あっ......」
(そんなことは考えなかった...... 確かに宿が成り立っていない、生活が楽なわけない...... 確かにもてないな)
「さあ、やるぞ! そなたはベッドを動かせ、我はホウキではく」
「いや、さすがに一人でベッドなんて動かせませんよ」
「そなたが非力なのはわかっておる。 そのための力を与えておろう」
「えっ? 修正者ですか? これをどう使うんですか」
「それはステータスを一時的に移動できるのだ。 つまり非力でひ弱なそなたの筋力と体力に他のステータスから移動させるのだ」
「そんなことができるんですか! まあやってみるか、修正者」
ステータス値がでた。
「えーと、魅力と魔力はいらないな。 それを筋力と体力に移す...... おお、なんか力がわいてきた」
「なればベッドを動かしてみよ」
「あっ! ベッドが簡単に動く!」
「すごいであろう! わらわの力をかなり注いだからの。 ゆえに今はわらわはただの美少女にすぎぬ!」
「これ移しましたけど、ずっとってことはないですよね。 動かせないんですけど」
「無視するでない! ああ、およそ一分でもとのステータスにもどる。 同じものへの使用は、インターバルが五分かかるぞ」
「なら早く進めましょう」
ぼくたちは大急ぎでベッドを移し、掃除をはじめる。
「ふぅ、やっと二階の窓もふき終わった」
外ではディルさまが鼻に泡をつけてシーツを洗っている。
「意外にちゃんとしてるな。 ハルリさんのこともだけど、さすが女神さま。 知力2だけど」
「ええっ!? すごいきれいになってる!! こんな短時間で、どうやって......」
帰ってきたハルリさんは驚いて言葉を失っている。
「まあの。 このぐらい聖女見習いならたやすきことだ」
そう誇らしげにディルさまはいう。
「すごいね! じゃあ市場でお肉があったから、早速調理するね!」
その日は楽しい夕食を過ごした。
次の日。
「もう少しここにいてもいいのに」
寂しげにハルリさんはいう。
「そうしたいがな。 わらわも聖女としての修行をせぬわけにもいかぬ。 では元気でな」
「ハルリさん、ありがとうございました」
そういってハルリさんとわかれた。
「それで、このあとはどこかで問題が起きてるか探しますか? ぐあっ!!」
ディルさまがぼくにコブラツイストをかけた。
「だから貴様は絶対に結婚できぬのだ!」
「いだだだだ! それはまだわからないでしょうが!!」
「このまま帰るわけにはいかぬ。 問題が解決しておらぬだろう」
「問題? まさか!?」
「そうよ。 ここいらに現れたモンスターだ。 それを倒さねばハルリの宿に誰も泊まらぬ」
「無理ですよ! この間も馬車が襲われたってハルリさんもいってたじゃないですか!」
「なんのためにそなたに力を与えたと思うておる」
「いや、いくら修正者の力をつかっても、モンスターには勝てませんよ! 馬車をなぎ倒す怪力のモンスターらしいですから!」
「なれば、わらわの魔力を筋力に移してみよ」
「えっ?」
意味がわからなかったが、いわれたとおり修正者で魔力を筋力に移した。
「魔力を移していいんですか?」
「うむ、わらわは魔法が使えぬからの...... そして」
「ぐあっ!!」
ディルさまはぼくを両手で軽々と持ち上げるとタワーブリッジをした。
「こんなことも可能だ!」
「おれる! おれる!! 背骨がぁ!! はぁはぁ、これって誰のステータスもかえられるってことてすか?」
「そうだ。 視界にうつるもののステータスを修正できる。 それが修正者の能力だ!」
「なるほどモンスターのステータスを修正して有利にするのか。 でもそんなうまく行きますかね」
「できねば、わらわのプロレス技が炸裂するまで! あっはっはっ!!」
そう高笑いしている。
「大丈夫かな...... とても不安だ」
ぼくはいまのこの曇り空のような心境だった。




