第二十六話『壊したその先に何が残る?ミルソダスと捨てられた民衆たち』
「人もいないのでは商人ギルドの関与を証明するのは難しいな」
カイルが考え込む。 ぼくたちはフリージアさんに装置の回収を頼むと、ラバレスに帰ってきていた。
「誰もいないんじゃ、どうしようもないわ」
「他に商人ギルドに繋がる話はないのか?」
「奴らは慎重だ。 オイゼルドみたいに簡単に尻尾をだすやつばかりじゃない」
ディルさまにカイルがそういった。
「商人ギルドのトップって【ビグルム】という人だよね」
「ああ、軍需品から日用品まですべて扱う巨大商会の会長だ。 今大陸の経済を一手に支配しているといっていい人物だ」
(フィクサーってやつか)
「さすがにこいつまで繋がりをみつけるのは難しいな。 ミルソダスの反乱にも関わっていたが、その痕跡すら残してない」
「ミルソダス...... 市民が王権を打倒した国か。 反乱までかかわってるの?」
「そうだ。 市民への武器や食料の供給などで暗躍したらしい。 もちろん見返り目的でな 国を市民が牛耳れば、もともとあった商業の利権を一手に奪えるからな」
「そんなの乗っ取りじゃない!」
カレンが非難するような口ぶりでそういう。
「ああ、それが奴らの手口だ。 この国だってもともとあった商業者を飲み込んで、国に影響を与えているわけだしな」
(そんな彼らが、アンノーンを作って何をしたいんだ......)
「ミルソダスにいこう」
「こちらの情報だと、国内はまだ混乱している。 入国すらままならない」
そうカイルが眉をひそめる。
「でも、自由にできる国を手に入れたんだ。 必ずなにかをしているはず」
「そうだな。 なにか起こってからでは遅い。 カイルなんとかしろ」
「しかたないわね。 カイル、入れるようにしてちょうだい」
ディルさまとカレンはいつものように無茶を言っている。
「おいおい、簡単にいってくれるな......」
困惑しながらもカイルは渋々請け負ってくれた。
「ここが...... ミルソダス」
焼かれた建物が多くある廃墟のような町の中、ぼくたちはいた。 カイルがなんとかルートをつくり、ミルソダスへと入ることができた。 人々は無気力な顔で座っているか口論していた。
「王公貴族を倒せば暮らしがよくなるんじゃなかったのか!」
「ふざけるな!! 話がちがう!!」
「値段があがって満足に食べるものさえないわ!!」
口々に不満を吐き出している。
「......ひどいわね」
「市民が勝ったのに、とてもそんな感じではないな」
「商人ギルドが流通を押さえてしまったようです。 この国の通貨が価値を失って、食べ物の値段も上がってるようだ」
「結局、思ったようにいかなかったというわけね」
「後の事はなにも考えてなかったのだろうな。 すべて壊してしまえば、すべてよくなると信じた」
「もしくは信じさせられたか、ですね......」
足元にぐしゃぐしゃになった紙がある。 そこには《王権を奪え、富を民のために》そういうスローガンがかかれていた。
(こうやって煽動したのか)
「あんたらよそ者か......」
そういってローブをきた者が近づいてきた。
「ああ、モンスター討伐に来た冒険者だ」
「そうか。 確かに戦えるやつはみんな自分の権力をえるために、人間同士で戦ってるからな」
「そうなのか...... それでなにかおかしな事が起こってないのか」
「起こってるさ。 みてみろ。 おかしな事だらけだ。 まあまあ平凡に生きていたのに、今や怒りと嘆きで満ち満ちている」
「そうじゃなく......」
「商人ギルドだろ」
「!!?」
「なにかしっておるのか?」
「......まあな。 ただ腹が減ってる」
「それなら、そこで食事をとろう。 はなしをしてくれ」
「私にじゃない......」
ローブのものが振り返ると子供たちがこちらを怯えた目でみていた。
「そうか戦災孤児か......」
「ああ、正義だ、弱者のためだ、なんて美辞麗句をみんな叫んでいたが、戦争が終わったら彼らは簡単に切り捨てられた」
そう美味しそうに食事をとる子供たちをローブのものはみている。
「みんな熱に浮かされたのよ。 そう信じれば楽になれた。 それぐらい夢を見るしかなかったんだわ」
そうカレンはいうとローブのものもうなづく。
「......そうだな。 彼らを責められない。 ぼくでさえよい世界がくると、そんな気持ちになっていたからな」
そういってフードをとるとぼくたちと同じような年頃の少年だった。
「私はリドミラ、助けてくれてありがとう。 私の力ではどうしようもなかった」
リドミラから話を聞く。 彼は元貴族で戦争で焼け出され、同じような境遇の子供たちとなんとか生きのびてきたらしい。




