第二十五話『グラナル平野の地下に潜む古代技術の不安』
「トール、カイルって信じられるの?」
カレンはそうきいてくる。 ぼくたちはアスワルドに向かう馬車にのっていた。
「......わからないな。 でも今は信じるしかない。 少なくともいっていることに矛盾はなかったし、かれらにとって商人ギルドが邪魔なのも間違いないだろう」
「そうだな。 どうせ打つ手もない。 今は商人ギルドが扱う古代技術を調べるしかなかろう。 はむはむっ」
ディルさまが買ったお菓子をほうばりながらいう。
「グラナル平野...... 確かにあそこにむかったのは確かでしょうが、かなり危険な場所です」
そうフリージアさんが遠く空をみてそういった。
「モンスターですか?」
「ええ、巣窟となっています。 ですからこの混迷の国の状態では調べにいけなかったのです」
今フリージアさんは新しい国作りのため、裏方として動いていた。
「私もついていきたいのですが......」
「いえ、かまいません」
「そうだな。 そなたはこの国のために働くがよい」
「ええ、これは私たちがやるから大丈夫」
「そうですか。 すいません」
ぼくたちはグラナル平野へと向かった。
「ここに隠したと言う話だけど......」
みた限りほぼなにもない平地だ。 そこかしこに大型のモンスターが徘徊している。
「平野なんて平坦な場所でしょ。 どうやって調べるのよ。 手当たり次第だとモンスターとの戦いでへばるわよ」
「河川や海、氷河、風なんかの堆積や、山地からの侵食などでできるからさまざまな地形はあるよ」
「ほー」
「へー」
(完全に興味ない感じだな......)
「ディルさま、へーじゃないでしょう。 魔力で調べてくださいよ」
「ああ、そうだったな。 忘れておったわ」
修正者でディルさまの魔力の上限まであげて、探索してもらう。
「どうですか?」
「ああ、このみえる範囲に魔力は感じないな」
「それなら魔力を抑える技術や魔法があるかもしれないね。 もしくはガセだったのかも......」
「ならば、打つ手なしだ」
(嘘をついていたか、カイルがつかれたのか。 修正者を使ってなにか......)
「修正者」
「おお!! 地面が!」
「ガラスみたいに透けてる!」
地面が透け始める。
「地面の透過性を高めました。 なんとか成功しましたね」
「まさか、その力、私に使ったんじゃ......」
カレンが腕をまわし体を隠した。
「ぼくもまだ生きていたいんですけど、それに向こうからも見えるよ」
「よく考えよカレン、こやつにそんな度胸はあるまい」
「まあ、それもそうね」
あっさりとカレンはうなづく。
「もう! そんなことより早く探しましょう」
透過範囲を少しずつ動かして地面をみる。 モンスターは二人が倒している。
(かなりきついな...... あるなら地下だ。 それほど遠くに装置は移動させられないはず...... あれは)
地下通路がみえる。 その近くに茂みがある。
「ああ、行ってみよう」
茂みに隠された鉄の扉がある。
暗い通路におり、魔法であかりをつくり進む。
「トール、灯りの魔法が使えたの」
「うん、メルディ姫が使うのをみてたからね。 ただすこし光の魔法とはちがうけど......」
「こんなところにこんなものつくっておったのか」
ディルさまが驚いている。 確かにかなりしっかりとした建物だ。
「地下にこんなもの、信じられないわね」
「ああ、かなりのお金と時間が必要だ。 クーデターが起こったあとじゃない」
「ならば、その前からなにかをしていたということか」
(魔力を集める装置...... いったい何をしているんだ。 エゴイズムか...... それともやはりあのアンノーンをつくってるのか。 ただなんのために......)
扉がみえてきた。 修正者で透過すると、そこにはさまざまな装置がある。
「よし! いくぞ!」
ディルさまの声で中へとすすみでる。
「誰もいない...... これは」
そこには卵型の装置があるが、中身がない。 その装置に何かのチューブが何本も刺さっていて別の装置が繋がっている。 その装置には何か大きい透明なカプセルがのっていて中身はない。
「これが王都にあった装置か。 卵型にも中身がない。 まさかアンノーンが外にでたのか」
「みたいね。 だからここを放棄したのね」
「だが、あんな化け物、いれば誰かの目につくであろう?」
「空を飛んだとか?」
二人が話してるのをききながら、気がついた。
「多分ちがう...... これは前のやつとはちがって知能があるんだろう」
「なぜそういえる?」
「ここに装置をもってきたものが襲われてない。 ここまでもってきたものを、でてくるまで放置したとは考えづらい」
「確かに、わらわたちがみたものはとても会話ができるとはおもえなんだな」
「じゃあ、あれが生まれてすぐつれていかれたの?」
「ああ、でも誰もみていない。 それは隠していたか?」
「もしくは人間にみえたかだ」
地面に素足のあとのようなものが残っているのがみえる。
「人間を作っていた? わざわざ魔力を集めて? なんのために......」
「わからない...... ただ国を動かしてまでしてつくるアンノーンがまともな使い方がされるとも思えないな」
「それに集めた魔力...... それが大量の魔力消費と関係あるのかもしれん。 やはりこの謎を解明せねばなるまいな」
「......ええ」
(明らかにまずいことがおき始めている。 いやもっと前から起こっているのか......)
更なる不安がぼくの胸をよぎった。




