第二十四話『華麗なる暴露劇とマフィア排除作戦』
そこはきらびやかで豪華な装飾が施された大きな部屋だった。 大勢の華やかな服装に身を包んだ男女が歓談している。 ぼくたちはマルゼイユを捕らえるべく、オイゼルドの社交場へとやってきていた。
「ここにマルゼイユがいるのか......」
「ふむ、そうだな。 それとってくれ」
「えっ? これ美味しいんだけど!」
「どれどれ! 本当ですの! はいディル」
三人は調査そっちのけでだされた食事を平らげようとしていた。
「三人とも! なにしてんの! 今はマルゼイユと、オイゼルドでしょ!」
「まぁ、急がずともよい。 それとってくれ」
「そうよ。 逃げはしないわ。 えっ? これおいしーんだけど!」
「そうですの。 どれどれ、本当ですの! はいディル」
(なにこのデジャヴ、何回同じやりとりしてんの!? この三バカは!)
「失礼......」
そういってにこやかにちかづく若い紳士がいた。
「ああ、どうも」
「どうもじゃないだろ。 なにしてやがる」
そのにこやかな顔とは裏腹な声からぼくは気づいた。
「カイル!」
「まったく、あの三人を心配してきてみれば、やっぱりだぜ。 やつがマルゼイユでその前のがオイゼルドだ」
そう背中ごしにみえる。 小男と恰幅のよい男がみえた。
「あれか......」
「ただ、人混みで奴らの声が聞こえん。 周囲にも護衛がいる。 どうするか?」
「こんな所じゃ、悪事の相談なんかしないんじゃない?」
「逆だ。 木を隠すなら森の中だ。 この騒がしい場所なら誰も悪事の話しをしてるとは思わない」
「なるほど、それなら手のうちようはあるな。 ただ確実に悪事の証拠となる話を聞き出したいから、そのタイミングがしりたい」
「本当にそんな手があるのか。 それなら俺がしかける。 タイミングは俺が合図する」
「わかった」
カイルはそのまま歩くと、マルゼイユとオイゼルドの死角の位置にたった。
そのとき懐からなにかをだし耳に当てる。
(なんだ...... ただタイミングを見逃せないな。 修正者)
時間がたつ、三人はただもくもくと食事をおかわりしている。
(このバカ三姉妹なんのためにここにきたんだ? いや集中しないと)
そのとき、カイルがハンドサインでこちらに合図をおくる。
「よし、修正者」
『それでエゴイズムはどうなっているのです?』
『ええ、言われたとおり市中に広げていますよ。 それで新しい薬の......』
『まちなさいマルゼイユ』
異変に気づいたのか、オイゼルドがこちらをみる。 貴族たちが唖然とした顔で二人をみている。
『これは......』
「それはどういうことですの。 オイゼルドどの。 エゴイズムを扱うのは禁令がでているですの。 破れば極刑、しらぬわけではないですの」
そうメルディ姫がオイゼルドに向かって歩く。
『なんですか! 一体どうなって!?』
オイゼルドの大きな声が聞こえる。
「みなさん。 彼らを捕縛してくださいですの!」
そうメルディ姫に言われて貴族たちが二人を拘束した。
わけがわからないような二人は拘束されてでていった。
「どうやらやったみたいだな。 あんな大声で話すとは、一体どんなカラクリだ」
カイルが近づいてくる。
「ぼくの能力で、あの二人の声を外に拡張させることにしたんだ」
「それで外に音が大きく伝わったのか。 そんな魔法があるとはな......」
(まあ魔法じゃなくて、空気のステータス修正だけど)
「これで商人ギルドの関与を調べられるわね」
「いや、そうとも限らんな」
カイルは眉をひそめる。
「やはり切り捨てられたか」
カイルはうなづく。 ぼくたちは城で相談をしていた。
「ああ、商人ギルドと薬の関与を見つけられなかったからな」
「あくまでオイゼルド個人の罪として処理されたのよ」
「仲間も容易く切り捨てか...... 厄介だな」
ディルさまが腕を組む。
「ですが、商人ギルドを調べる大義名分を手に入れましたですの。 父上も喜んでましたですの」
そうメルディ姫の顔がほころぶ。
「まあな。 取りあえず、マルゼイユを排除できた。 今一家は混乱して権力争いでボロボロだ。 もう薬どころじゃない。 これで蔓延は防げるだろうな」
「それはよかったが、それでそなたがもっている情報は?」
「ああ、そうだな。 アスワルドにあったという古代技術。 それはまだアスワルドにあるはずだ」
「だけど、レジスタンスだちがさがしたが見つからなかったといっていた。 嘘はいってない」
カレンがそういうと、カイルは考える。
「確かアスワルドの王都からだから、レジスタンスが正門から攻めたときいた。 裏からでていったはず...... 北はグラナル平野だろう」
「ああ、それは間違いない」
「アスワルド北のグラナル平野より向こうはサンテラ山脈があり、マルーク教国がある。 俺たちの仲間もそこにいるが、サンテラ山脈を越えてきたものはいないというのはまちがいない。 だからグラナル平野のどこかに隠してるのは確実だ」
「それならそこに......」
「それを見つけられたら、商人ギルドを追い詰められるわね」
「ああ、その古代技術とやらが軍事技術なら、アスワルドに加担しているという証明になる。 商人ギルドとの繋がりさえわかれば罪にとえるかもな」
「意外ですの。 カイルさんはずいぶんと協力的ですの」
「まあな、やつらは俺たちにとっても目障りな存在だ。 やつらを潰してくれるならどんな協力もしてやるさ」
そうカイルは軽口を叩いた。




