第二話『キャメルクラッチで目覚めたぼくと、聖女詐欺で宿に潜入した女神様』
「早くおきよトール!」
「う...... ここは」
目が覚めると、そこは草原のようだった。
「あーー! きちゃった! ぐへぇ!」
ディルティナさまがさば折りをして来る。
「うるさいぞ。 すぐわらわをもとに戻すために行動する。 いくぞ!」
「いや、魔法が文化になってるんでしょ。 やめさせるなんて無理ですよ。 ぐほっ!」
ディルティナさまはぼくを倒すと、馬乗りになり首を上に持ち上げる。
「きさま! 話を聞いておらなんだな!」
「ギ、ギブ!! キャメルクラッチはやめて......」
「さっき話したではないか。 普通に使っているのではない! 何か大量に使っておるとな。 そんな使い方、ろくなことに使ってはおらん! 必ずおかしなことになっておるはず!」
「あー いた...... なるほど大量の魔法を使う異変が起こっているはずだから、それを調べるんですね」
「そうだ。 とはいえ腹が減ったな。 先に飯を食べるか」
「でもディルティナさま、この世界のお金持ってるんですか?」
「お金? はっ!!」
その顔が蒼白になる。
(はっ! ってことは完全に持ってないな。 やはり知力2か)
「ど、どうする? 金がなければ食べ物は......」
「食べられませんね。 とまるところもありませんよ」
「うわあああん!」
(泣きたいのはこっちだよ)
「ねぇ、どうしたの?」
話かけられみるとそこには籠に山菜を多くいれた同い年ぐらいの女の子がいた。
「あ、ああ、えっと......」
「お腹がすいて、ひもじくて......」
そうあわれみを訴えるようなうるうるとした目で、ディルティナさまは少女をみた。
(なんてあざとい......)
「そんなかわいそうに、じゃあ私のおうちに来る? 軽い食事ならだせるよ」
「いくう!!」
ディルティナさまはすぐ立ち上がると、さっさと少女についていく。
その少女はハルリといい、家が宿屋をしているといった。
「えっと、トールくんはお兄ちゃんなの?」
「えっ? えっと......」
「ちがうのだ。 わらわはディルティナ教の聖女見習いでトールはそのおつきなのだ」
「えっ? ディルちゃんって、ディルティナ教の聖女さまなの!?」
「ふむ、若くして聖女としてのその才能を認められ今は修行の途中なのだ」
そういってディルティナさまはおれをひじでつついた。
「ああ、うん、そうなんだ」
(そんなので信じるの?)
「へぇ、それはすごいね!」
(信じるんだ......)
「じゃあ、準備するからまってて」
宿についたハルリさんはそういって台所にむかった。 ディルティナさまはテーブルクロスをいそいそとひいている。
「ねぇ、ディルティナさま、なんなんですディルティナ教の聖女って?」
「この世界でわらわは主神なのだ。 ディルティナ教はこの世界で最大の宗教団体でその聖女は王よりも権威がある。 あとこれからディルさまと呼べ」
そうぼくが小声できくとそういって胸を張った。
「いや、でも本当の信者にあったら困るでしょ。 嘘だとすぐばれますよ」
「心配するな。 主神、その本人なのだ。 なんとでもなる」
その自信が余計に不安をかき立てる。
(知力2...... 心配しかないな)
「おまたせ、大したものはないけど、どうぞ」
ハルリさんがテーブルに食事を用意してくれた。
(薄い塩味と乾燥肉と野菜のスープ、それに固いパンとチーズか...... ぼくは食べられるけど、ディルさまは不満なんじゃないか)
「うむ、うまい!」
その心配はなく、ばくばくと食べていた。
「すみませんハルリさん、ぼくたちお金を持ってなくて」
「いいの。 お父さんの仕送りもあるし、困ってないから。 そうだ! 今日は泊まっていって」
「えっ、さすがにそれは」
「今は誰も宿泊客がいないの。 最近、この辺りでモンスターがでるから...... だからお客さんが減ってしまって、お父さんも鉱山に働きにでてるのよ」
そうスープをすくうスプーンをとめ、寂しそうにハルリさんがいった。
「モンスターがいるんですか!?」
「え、ええ」
「この世界ってモンスターがいるんですか!!」
「うむ、いる」
「うむ、いるじゃないですよ! そんなこと聞いてない!」
「うむ、いってない」
「もう!!」
「ハルリよ、ならばモンスターはわらわたちが倒そうか」
「だめ!! あっ! ごめんなさい...... でもモンスターはとても危険なの。 聖女さまの力があっても戦うのは無理だわ。 私のためにそんなことはさせられない」
「まあ、当然ですよね。 それで国とかは動かないんですか」
「......ええ、こんな田舎にはなかなか。 陳情はしたらしいけど、戦争などがあったりしてここまで兵士さんはこないわ」
その日は、ハルリさんの厚意にあまえて宿にとまらせてもらった。




