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75 反応がないのは少し寂しい

 

 救助した彼女と別れ、少し場所を移動する。


 あの場所から動画を取り始めても良かったのだけど、あの場所に彼女の配信を見て向かう人がいないとは断言できないので、別の場所に移動することにした。

 中層の半ばであれば一層二層くらい移動したところで採取できる素材の種類にそこまで違いは出ないので、動画撮影に影響はない。


 2つ階層を降り、そこで動画の撮影準備を始める。ヨルさんにカメラを渡し、一旦撮影を開始。

 数分ほど適当な動画を撮影し、その映像を確認して現在の設定で問題ないかを確認した。


「問題なさそうだね」


 スマホで映像と音声にブレなどがないことを確認してから、再度動画の撮影を始める。


「それじゃあ、始めますか」


 身だしなみを整え、カメラに向けていつも通りに開始の挨拶をする。


 いつもならチャット欄に返事が返ってくるところなんだけど、今回は配信ではないので反応がないのが少し不思議でちょっと寂しく感じた。

 

「今回は配信ではなく動画という形でやって行こうと思います。

 それで今回の動画ですが、ダンジョンに潜ったとき1回でいくら稼いでいるの? という質問がいくつか来ていたので、湿地ダンジョンの中層で6時間かけて素材を集めたらどのくらい稼げるか、という企画です」


 企画の説明をしていく。この辺はいつもとそう変わらないかな。


「ただ、普通に採取しているだけの動画では味気ないので、素材を採取する際の注意点やコツなどを解説しながらやって行こうと思います」


 今回の撮影する動画は、解説部分をまとめた短めに編集したものと、問題ない部分をすべて映したほぼ編集していない動画の2つを投稿する予定だ。


 編集したものは参考動画として、編集していないものは買取金額の証拠として機能すればいいな、と考えている。


「それで今回採取していくものは、現在ギルドで買い取り強化素材として掲載されているポーションの材料を主に集めていきたいと思います。

 それでは行きましょうか」


 早速そう言って湿地ダンジョンの中を進んでいく。


 湿地ダンジョンは樹海ダンジョンに比べ、樹が少なく開けた場所が多い。その代わり背の高い植物が多く、その合間に川のようになっている場所やぬかるんだ場所、沼が点在しているダンジョンだ。

 

 さっき助けた彼女と同じように沼に嵌ったり、ぬかるみに足を取られたりすることが多い場所なので、進むときは他のダンジョンに比べより慎重に進む必要がある。


 そんなことを解説しながら進み、ポーションの素材の1つである薬草が群生している場所に着いた。


 このポーションの素材であるルバ草は青い花が咲くスイレンのような見た目で、比較的群生しやすく数を確保しやすい存在だ。

 買い取り価格の平均は1つ1000円程度。お金を稼ぐ目的ではあまり優先されるものではないけれど、沢山採取できる素材ではあるので初心者にとってはそこそこの稼ぎにはなる。


 あれこれ解説をしながらルバ草を回収していく。


「一般的にルバ草は1つ1000円くらいで買い取られることが多いです。ただ、素材として使用される部分は根の部分も含まれているため、根を保護するように周囲の土ごと回収した方が買い取り価格が上がります」


 ルバ草の葉の部分にも薬効はあるんだけど根っこの方が強い。その代わり劣化が早いんだけどね。その劣化を抑えるために土ごと回収する形だ。

 他の植物系素材でも同じように土ごと回収する物も多いから、この採取方法はシーカーの人でも割と知っている人が多かったりする。よくある基礎知識みたいなものだ。


 この方法で採取したルバ草は1つ2000円くらいになるため、数を採取するのなら結構な差が出てくる。

 ただ、土ごと回収するとかさ張るから、土ごと回収しない人の方が多いんだけどね。


 今回はどこまで稼げるかなので、できるだけ高額になるように土ごと回収している。まあ、今回はといっても、私がルバ草を採取するときは常に土ごと採取しているんだけども。


「それじゃあ次に行きましょう」


 群生していたルバ草をすべて採取して、別の場所に移動する。地上では群生している薬草などを全回収するのはもってのほかだけど、ダンジョンの中に生えている植物は時間経過で復活するので問題はない。


 移動しながら新しく見つけた群生しているルバ草を絶滅させる勢いで採取しつつ、他の素材を探していく。


 ポーションはベースとなる液体以外は植物素材で作られている。


「このダンジョンで採取できるポーション素材は、今採取したルバ草、これから採取する予定の冷鱗草、そしてルメン草の3つになります」


 冷鱗草は水草の一種で、この中で一番採取方法が特殊なのがルメン草になる。

 ルメン草は気づく人もいると思うけど、ラテン語の光を意味するルメンをそのまま使われた植物で、暗がりで葉がうっすら光っている不思議な植物だ。


「一番劣化の早いルメン草の採取を最後にするので、冷鱗草を探していきましょう」


 水草である冷鱗草は当然水中に生えている植物だ。一般的に水中植物の葉は柔らかいものが多い中、この冷鱗草の葉は非常に硬い上に鋭い。さらに普通の植物とは異なり葉が魚の鱗のように生えているため、素手のまま採取しようとすると鱗状の硬い葉が手に食い込み怪我をする恐れがある。


「冷鱗草を採取する際は危ないので革製の手袋を着けます」


 カメラに向かって採取するときに装着する革製の手袋を見せる。これは私がダンジョンに潜り始めた時に使っていたお古の手袋だ。

 今使っている良い採取用の手袋を使ってもいいんだけど、これでも問題なく採取できるし、見ている人の参考になるように手に入りやすい道具を使用している。


 冷鱗草の採取方法を説明しながら進んでいたところで川を見つけたので、さっそく冷鱗草を探すことにした。


 

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