68 詳しく見てみよう
見た目は完全に白いヒヨコ。尾はトカゲのような爬虫類の物で、こちらは少し褐色の表皮をしている。
尾を軽く触ったところ、表面が柔らかいながらも鱗のようなもので覆われているのが分かった。
普通のトカゲにも鱗はあるけれど、あれとはまた違うような手触り。蛇のつるつるした鱗とも違うし、何系の鱗なんだろう。
「あ、ごめんね。尻尾はちょっと嫌か」
何に一番近いのかを考えながら尻尾を触っていると、少し尻尾を私の指から逃がすように身じろぎをした。
その拍子に少し態勢を崩しかけて転びそうになっていたので、落ちないよう両手で支えた。
避けるとき尻尾そのものを動かして避けなかったところからして、あまり尻尾を器用に動かすことが出来ないのかもしれない。生まれたてでうまく動かせなかっただけの可能性もあるから、これはもう少し様子を見て判断だね。
[動きがヒヨコのそれ]
[小さき生き物……]
[尻尾触られて嫌がるのは動物あるある]
[かわいいじゃん。モンスターっぽくはないけど]
[あ 座った]
[疲れたのかな]
転びかけたのが嫌だったのか、単に疲れたのか、手の上に乗っていた子が足をたたんで手のひらの上で座りこんだ。
丁度いいので手を小さく上下に揺らし、重さの確認をする。
「…君、見た目よりだいぶ重いね」
手のひらに座り込んだことで正確に重さが分かるようになり、この子が見た目以上の重さがあることに気づいた。
見た目はヒヨコで、手のひらに伝わってくる羽毛も柔らかい。でもそれに反して結構ずっしり来る重さ。
生まれたてのヒヨコの重さはわからないけど、これどう考えても鳥の重さじゃないよね。
[重い?]
[見た目凄い軽そうだけど]
[尻尾が重いとか? 爬虫類系の尻尾だし]
[モンスターだから見た目通りの存在じゃないってことか]
[重いってどのくらいよ]
ヨルさんも羽毛持ちで猫みたいに細身だけど結構がっしりしていて骨太だし、それと同じ感じなのかな。
配信している机の隅に一応用意していた計量器を使って、体重を計測してみる。
「109グラム……はどうなんだろ。重いのはわかるけど」
[一般的に生まれたてのヒヨコは40グラム弱らしいです]
[40ってことは三倍近くか]
[サイズの割にかなり重いな]
[この辺はモンスターらしいのね]
[100グラム超えって下手しなくても生まれたての子猫と同じくらい重さじゃん]
手のひらサイズでこの重さなのは相当重いよね。モンスターだからというのもあるんだろうけど、飛べる鳥にとって重量は重要だし……
「もしかして鳥系じゃない…とか?」
[どうなんだろ]
[その可能性はありそう]
[そもそも尻尾が鳥じゃないしな]
[いやでも見た目ひよこだから鳥ではあるんじゃない?]
鳥に見えるだけの別種の可能性も十分ありえる。モンスターってだけでよくわかっていない存在だし、卵から孵った子だから普通のモンスターよりも特殊な存在なんだよね。
だからいま見つかっているモンスターの特徴に当てはまらない子が生まれてくる可能性もあるわけで。
とはいえ、あと確認できるところってほとんどないんだよね。
「うーん。他に見たほうがいいのはどこかな」
[ちっこいからなぁ]
[もう大体じゃない?]
[目視でってなると他はどこだろ]
[翼と、口とか?]
[見た目のせいで先入観が邪魔してるなぁ]
[口の中とか 毒吐いたりしない?]
なるほど口か。翼も確認していなかったね。
計量器の上に乗ったままの子の体を触って翼を確認してみると、見た目通り鳥の雛らしい小さな翼が羽毛の中に隠れていた。
「翼は小さいけど…あるね」
[翼があるという事は鳥ではあるのか]
[小さいってことは成長したら大きくなるのかな]
[どんな感じに成長するのかな]
[生まれた手でこの重さならかなり大きくなるんじゃね?]
あれこれチャット欄でどんな成長をするのか話し合っているみたいだけど、卵から孵ったモンスターが成長するかどうかは個体によって違うんだよね。
「この子がここから生長するかはちょっとわからないですね。ずっとこのままの可能性もあります」
ヨルさんも生まれてからほとんど変わっていないし、卵から孵った子ってむしろ成長するこの方が少ない気がしているんだよね。そもそも普通のモンスターが成長するなんてことはないわけだし。
[え、成長しないとかあるの]
[これから成長しないとかある?]
[絶対しないってわけじゃないなら育つ可能性はあるのね]
[これから成長しないのは需要在りすぎるのでは?]
この姿のままだと小さくて少し不安になるからできれば成長してほしいけど、こればっかりは私がどうこうできることじゃないからなぁ。
次は口の確認をしよう。
パッと見、普通のヒヨコの嘴に見えるけどモンスターだからね。違うところがあるかもしれない。
「ちょっと口開いてね。……牙があるなぁ」
口というか嘴の中を確認してみると上下左右1本ずつ、牙と思われる突起があるのが分かった。
鳥自体肉食が多いと思うけど、この子みたいなしっかりした牙を持っている鳥はいないんじゃないかな。水鳥とかだと咥えた物を濾したり、餌を逃がさないようになっているのこぎり状の返し歯? がある種類もいるみたいだけど、ここまではっきりした牙を持っている種類は聞いたことがない。
まあ、ダンジョンに生息しているモンスターなら結構いるんだけどさ。
[小さくて画面だと見えないな]
[牙ってことは結構大きいのか]
[現代の鳥で牙を持つ鳥は存在しておらず、牙を持っていたと言える鳥は恐竜がいた時代に生きていたらしい]
[まさか始祖鳥とかそんな感じなのか?]
[ケツァルの巣で採取した結果がこれかもしれない]
「ああー。採取場所の影響もあるかもしれませんね」
見つけた場所によって生まれてくるモンスターの種類に影響があるかもって聞いたことはないけど、その可能性もあり得るね。




