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66 孵化させる時の注意点

 

 カメラの前に連れてこられたことで何をしようとしていたのか思い出したようで、ヨルさんはカメラの方を向いた。


 ヨルさんに限らず、卵から孵ったモンスターは結構頭がいい。さすがに人間並みにとは言えないけれど、ある程度教えてあげれば単純な作業なら覚えてくれる。

 私の配信を手伝ってもらえているのも、頭の良さ、学習能力の高さ故のものだ。


「すでに気づいていた方もいたようですが、普段ダンジョンの中で配信をしている時に撮影を手伝ってくれていたのはこの子です」


 ヨルさんの背中を軽くポンポンしながらそう言うと、それに合わせてヨルさんが「がぅ」とカメラに向かって挨拶するように鳴いた。


「名前はヨルです。先に説明した通り種族はわかりません。見た目からして竜種なのはほぼ確定でしょうけど」


 ヨルさんの見た目は、やや大型の猫くらいのサイズで少し胴長。基本的に四足歩行で移動し、背中に翼が生えているタイプの竜種だ。全身は羽毛で覆われており、パッと見真っ黒に見える。しかし、光の加減で真っ黒に見えるだけで、良く見てみると羽毛の色は艶のある黒寄りのグレーである。


 ついでに背中に生えている翼に飛行能力はあまりない。ダンジョン内では魔力で浮遊しているので、翼は空中での姿勢制御をするための物である。


[この見た目でドラゴンじゃなかったらなんだって話よ]

[翼がなければ爬虫類系の可能性はあったけど]

[全身羽毛っぽいから爬虫類はありえない]

[卵からドラゴンとか夢あるな]

[完全に懐いてるな]

[さっき持ち上げられている時嫌がってなかったし、卵から生まれたやつ本当に懐くんだ]


「ヨルさんは特別人懐っこい子ですね」


 カメラの前でされるがままになっているヨルさんの前足を持ち上げて、招き猫のような形でちょいちょいと動かす。


 ヨルさんは普段あまり会わない社長やおじさんにも懐いているくらいだから、同じように孵化したモンスターの中でも特別懐っこい子である。


「基本的に卵から孵るモンスターは、孵化するまでに一番魔力を注いだ人を(あるじ)として認めることがわかっています。主と認めた人以外の方にも懐いてくれる子も多いですが、中には主と認めた人以外には一切懐かない子もいるみたいです」


[その辺は犬とか猫っぽいのか]

[この子は懐っこいのね]

[ドラゴンなのに……懐くって]

[↑ドラゴンだって懐いていいだろ]

[普通のペットぽいところもあるのか]

[個性だねぇ]


 まあ、この辺は普通のペットとして飼える犬とか猫でもあることだから、卵から孵ったモンスターだからというわけではない。違うのは孵化するまでに注いだ魔力量次第で主を決めるという事くらい。

 そして今後この点は結構注意しないといけないところだと思うんだよね。


「今後このモンスターの卵のやり取りが行われることになると思いますが、この主認定に関して気を付けないと面倒なことになりかねないんですよね」


[面倒?]

[魔力って言う餌を一番くれたお前がご主人様。わかり易くてええやん?]

[そうな。わかり易くていいやんな]

[ペットショップでお迎えした子が全然懐いてくれないとかあるから、確実に懐いてくれるって悪いことではないと思うが]

[あー、なるほど]


 今回の配信を通じてギルドも近く、モンスターの卵に関しての情報を発信することになるはずだけど、そうなればギルド主体でモンスターの卵の売買が行われることになるはず。


「自分ではモンスターの卵を買わず誰かが孵化させたモンスターを買おうとする人とか、モンスターの卵を購入しても自分では孵化させないって人、最初は結構出てくると思うんです。特に前者は」


 でも、この方法で購入した場合、購入者に懐く保証がないのだ。


 ヨルさんみたいに人懐っこい子で後々どんなに懐いてくれても正式な主として認めてくれないので、しつけや指示を出しても聞いてくれない可能性が高い。

 実際ヨルさんは私以外が出した指示には気が乗らない限り従うことはないからね。


[直接孵化したモンスターを買おうとするやつは出るだろうな]

[卵を買っても直接孵化に関わっていないと一切懐かない可能性があるわけか]

[普通買った人が孵化させるのでは?]

[孵化機も安くないだろうし、それじゃあ持っている人にやってもらおうって考えるやつが出てくる可能性はあるな]

[あーそれか]

[確かに安くはないだろうなぁ]


「もし孵化装置が販売されることになっても構造自体は単純なので、そこまで高額にはならないと思います。安いと言える金額ではないでしょうけど」


 孵化装置は内部を魔力で満たす機能と、それを維持する機能。後は魔力を直接注ぐ機能くらいだし、使う素材も特別な物はないので、そこまで高額にはならないはず。


 それにもしかしたらギルド側で貸し出し、レンタルさせてくれるかもしれない。モンスターの卵はポンポン見つかるものではないから、ギルドが孵化装置の貸し出しをしても数はそこまで必要ないだろうし、可能だと思うんだよね。

 まあ、やるかどうかわからないから口には出さないけど。


「主従の問題や孵化装置については、モンスターの卵を販売することになれば、ギルドが何かしら決めてくれると思うので、今は気に留めておくくらいで大丈夫ですけど」


 ここまで情報を伏せて安全確認をしていたのだから起こりうる問題を考慮せずに販売するってことはないだろうし、その時になればギルドがいろいろ公表することになるはず。


[ま、いつから売られるかなんてワイらにはわからんしな]

[何にしろ、もしモンスターの卵を手に入れたら自分の力で孵化させろって事よな]

[それと信用できない相手からは買うなってことな]

[ギルドって信用できますか?]

[よくわからん個人とか企業よりは信用できるだろ]


 そんなこんなでもう少し注意点を話した後、ヨルさんについて話していたところで孵化装置の中に入っていた卵に大きなヒビが入り、本格的に孵化の見守り配信に移行することになった。

  

次話は掲示板回になります。

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― 新着の感想 ―
つまり、犬や猫をファッション感覚で飼うやつとか、飽きたおもちゃ感覚で捨てる馬鹿な奴は、育てる資格が無い以上に、購入する資格もないということ。 そういう奴らにエッグモンスターは懐かないし、言うことも聞か…
あ、最初に見た対象を親認定するんじゃなくて、一番魔力くれてた対象が親認定されるのか…… 卵から出た時に偶然離席してたから別の人が親認定されちゃったーとかが無さそうなのは安心だねぇ
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