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65 うちの子紹介

 

 あれこれチャット欄に流れてくる質問コメントに応えていると、配信を始めてから30分ほど経過していた。

 質問の返事をしている間、ヒビが少し大きくなっていたり、少し卵が動いたりしていた。


 卵が少しでも動くとチャット欄に[動いた!?]とか[生まれそう!]みたいなコメントがたくさん流れてくるのが、何だか少し面白い。


「およそ応えられる質問も出尽くした感じですかね」


[まあ、大体?]

[結構答えてくれて助かった]

[やっぱりというか途中ギルド公式アカウントが肯定していったのは笑った]

[朱鳥ちゃんギルド公式とずぶずぶすぎるw]


 私が事前に確認を取ったからなのか、この配信をギルドの人が見ていたらしく、私が出した情報を訝しむようなコメントが流れてきた時にそれを肯定してくれるコメントを流してくれたり、追加の情報を出したりしてくれた。


「ギルド側がしっかり確認してくれているのは助かります。私が知っている情報が必ずしも正しいとは限らないので」


 とりあえず、今回話した内容でギルド側から間違いを指摘されなかったので安心した。


 さて質問返しも終わったし、予定通りヨルさんの紹介をすることにしよう。


「卵が孵化するまでもう少しかかりそうなので、ここで実例を紹介しておこうと思います」


 そう言って孵化機を少し横にずらし、カメラの正面にスペースを作る。

 そして、少し離れたところで待機してもらっているヨルさんへ視線を向ける。


[実例?]

[あ、あー。実況スレで話題に上がってた子かな]

[すでに孵化した子がいるだと!?]

[何かいるんじゃね? って言われてた子か]

[カメラの子]

[実際に見せてくれるのありがたい]

[どんな子だろう]


 ヨルさんが普段いる部屋はここではないんだけど、ここに連れてきてからちょっと時間が空いたからか、一緒に持ってきたお気に入りのクッションの上で丸まって目を閉じていた。


 完全に寝ているわけではないんだろうけど、私が近くで話しているのにだいぶリラックスしているらしい。ヨルさんの羽毛が漆黒に近い色もあって、完全に見た目は寝ている猫の姿に見えた。


 カメラの後ろで様子を見ていた陽彩にヨルさんへカメラを向けて欲しいと指示を出す。

 

 音が立てずにカメラに近づき自分が映らないよう、真剣な表情でカメラの角度を調節している陽彩の姿に内心ほんわかしながら、私もヨルさんのところへ移動する。


[黒い何か]

[クッションの上に居る黒いのがモンスター?]

[思ったよりも小さめなのね]

[丸まってる猫?]

[黒すぎて輪郭しかわからんw]

[猫っぽいか?]


 どうやら視聴者の多くは私と同じように、クッションの上で丸まっているヨルさんの姿が猫っぽく見えているようだ。


「ヨルさん。起きてー」


 無理に起こして不機嫌なヨルさんを映すわけにはいかないので、いつもとは違いクッションを軽く揺らして起こす。

 しかし、これでは優しすぎたのかヨルさんは動かなかったので、軽く体を揺らしながら声を掛ける。


「起きてヨルさん」


 普段はこんなことしないで体を持ち上げることで強制的に起こすんだけど、もうちょっと強くしないと駄目かな。


[起きないの草]

[起きてたすかる]

[やっぱりネコか?]

[いや、猫だったら揺すられたところで起きてるだろ]

[猫というより犬系の寝起きの悪さじゃね]


 ヨルさんみたいな卵から孵ったモンスターって結構こういう子が多いっぽいんよね。

 それとやっぱりモンスターだけあってダンジョンの中で活動している方が活発になることが多い。

 多分、こうやって寝ていることが多いのは省エネのためなのだろう。まあ、ご飯のタイミングになると積極的に起きてきて催促までするんだけども。

 ……やっぱり猫なのかなヨルさんって。


 そんなことを考えていたところで、ようやくヨルさんがのそっと頭を上げて、何か用かと言わんばかりの表情で私の顔を覗き込んできた。


「よかった起きた」


 視線がこちらに向いたままだったので、カメラの方へ視線を向けるよう手でヨルさんを誘導する。


[おーきた]

[猫じゃないじゃん]

[え、いやトカゲ??????]

[いや待って]

[起きて 助かるとか言ってる場合じゃねぇ!]

[黒くてよくわからんかったけど、よく見たら羽毛かこれ? てことはトカゲじゃなくて]

[まさかのドラゴン!?]

[ヨルさんってまさかそういう事!?]


 ヨルさんが頭を上げ、カメラの方へ顔を向けたことで想像していた生物とは異なる存在であることに気づいた視聴者たちのコメントがチャット欄で勢いよく流れていく。


 コメントでちょくちょく流れてきたけど、ヨルさんの名前は最初に見たヨルさんの第一印象で決めたので深い意味はない。本当に。


 起き上がったヨルさんの体を掴んでさっきまでいた場所に連れていく。それに合わせて陽彩もカメラの向きを元に戻した。


[翼あるじゃん]

[見た目ドラゴンだけど、連れていかれ方猫で草]

[脱力した伸び猫ドラゴン]

[よく見ると手足結構たくましいな]

[尻尾ふさふさやな]

[配信で撮影していたのこの子?]


 私がヨルさんを持ち上げたことでよりはっきりドラゴンらしい部分が確認できたことでさらにチャット欄のコメントが加速する。

 さすがにここまで流れるのが早いと目で追うのが辛いな。


 目で追うのが難しくなったチャット欄を横目に、ヨルさんを孵化装置の隣に座らせた。

 

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ヨルムンガンドのヨルさんかな? 猫ドラゴンってネバーエンディングストーリーのファルコン?
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