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61 許可と説得

 

 スマホでギルド職員の知り合いにその確認を取りながら、配信機材の準備を進めていく。配信NGだったとしても映像としては残しておきたい。

 ヨルさんの時はカメラで撮影して映像を残すって発想はなかったから、卵からヨルさんが生まれた証拠は卵の殻くらいしかないのだ。

 

「何してるの?」

「んー、ちょっと配信しようと思って、その準備」

「え、は?」


 確認の連絡を待ちながらカメラをセットしていく。リビングで撮影しようと思ったけど、撮影するにはいくつか隠さないといけない物があるから、ここで配信をした方が楽だし安全なんだよね。


 それで残る問題は陽彩なんだけど。

 

 さて、どうしようか。

 遊ぼうって家に呼んでおいて放置するわけにもいかないし、いきなり私が配信するって言いだしたからプチパニックみたいな状態になっているみたいだけど、できれば出て欲しい気持ちがあるんだよね。


 陽彩は知らない人たちの前に行くと何もできなくなるド級の人見知りではあるけど、陽彩は若手の上級シーカーとして結構注目されていてそこそこ目立つ立場に居るから、少しでも人慣れしてほしいのだ。

 ダンジョンの中で活動をしている以上、人前に出ないってことは絶対にないしね。

 

 それに今後私が配信を続けていくとなれば、深層へ連れて行ってもらう役を自分のチャンネルを持っているおじさんに毎回頼むのは申し訳ないし、予定だって必ず合うとは限らない。そんな中で上級シーカー入りをしている陽彩は私にとってとても助かる相手なんだよね。


「なんで、配信はしないって」

「いや、しないのはゲームの配信であって、それ以外をしないって言ってないんだけど」


 私から距離を取ろうとしている陽彩をどうしたものかと眺めていたところでスマホが震えた。

 スマホを見てみれば先ほど送った確認についての返事が来ており、その内容を見る。


 ふむ、普通に配信する分には特にNGはないと。なら配信で孵化を見守る感じにしよう。

 多分視聴者的にも卵からモンスターが孵るところを見たいと思うだろうし、悪くないよね。


「今のは何!?」

「ギルドからの連絡」

「そ、そう」


 本当に陽彩は人前に出るのが苦手、というか拒否反応を示すくらいに嫌がるんだよね。

 これは過去に何か大きなことがあってトラウマになっているとかではなく、いろいろ蓄積した結果こうなったってだけで、元々引っ込み思案でちょーっと物事を悪い方向に捉えることがある子ってだけなのだ。


「陽彩はさ。配信には絶対出たくないんだよね?」

「うん」

「即答すぎる」


 即答するくらいには嫌なのか。でもねぇ、親友としてやっぱりこのままにしておくのはよくないと思うんだ。

 これからの人生まだまだ長い。ちょっとでも克服できるならしておいた方がいいはず。


 ここまであれこれ考えて陽彩を引っ張り出す理由付けをしているけど、一応陽彩本人のためなのだ。

 まあね。当人からすればこういうのは有難迷惑なんだろうけども、どこかの段階で荒療治は必要だと思うわけです。はい。


 とはいえ、無理に出しても悪化する可能性もあるんだよねぇ。だから今回はいきなり出てもらうんじゃなくて裏方みたいな形で手伝ってもらう感じがいいかも。多分それなら陽彩も受け入れやすいだろうし。


「ならさ。カメラの後ろの配信に映らないところで手伝ってくれない?」

「…裏方ってこと?」

「うん。陽彩だってモンスターの卵が孵って中からモンスターが出てくるところ見てみたくない?」


 特に何も言っていなかったけど、孵化機に入っている卵を見た時興味ありそうだったから、陽彩も見たい気持ちはあると思うんだよね。


「そりゃ見たいけども」

「だったらカメラの後ろで見ればいいんだよ。本当なら配信に出てもらうのが楽ではあるんだけど、見えないところでカメラの移動とか手伝ってくれると助かるのは間違いないし」

「ん? カメラはヨルちゃんが操作するんじゃないの」

「今回はヨルさんも紹介する予定だから、カメラを持ってもらうのは無理なんだよね」

「そうなんだ」


 配信を始めて卵が孵るまで時間はあるだろうからその間にヨルさんを紹介して、卵から孵ったモンスターがどんな存在なのかの説明もした方がいいと思うんだよね。モンスターの卵に関して知らないって人の方が多いと思うし。


「うん。だからちょっと見づらい位置から見てもらうことになっちゃうけど……」


 手伝うのも嫌だって言うなら仕方ない。遊ぼうって家に呼んでおいて、いきなり配信するって言いだした私が悪いんだし、そもそも陽彩が手伝わないといけない理由は一切ないんだ。


「うーーん…」

「嫌なら見ているだけでもいいし」


 多分だけど、配信に出なくても同じ空間に居るってだけで、陽彩にとっては悪くないことだと思うんだよね。


「後ろで手伝いくらいなら、まぁ…うん」

「よかった、ありがとう!」


 陽彩がそう言ってくれたのがうれしくなって、ぎゅっと陽彩を抱きしめて背中をポンポン叩く。


 まだちょっと踏ん切りが付いていなさそうな感じはあるけど、陽彩が手伝ってくれるのは本当にうれしい。

 

 それじゃあ、残っている配信の準備も終わらせて、段取りをしっかり決めてから配信を始めることにしよう。

 

次話は掲示板回になります


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― 新着の感想 ―
そして、誰が撮影しているのかを紹介して、なし崩しに登場させるのですね。
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