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60 警報の元へ

 

 ゲームを中断して、警報機が反応した部屋へ移動する。

 今回警報が鳴った生物系の部屋は、特別危険なものが置かれた部屋というわけではなく、少し前に採取しに行った琥珀苔みたいな管理に少し気を使わないといけないダンジョン産の植物などを管理している部屋だ。


 部屋の中にあるケース内に充満させている魔力量がおかしい数値になっていたり、その魔力がケース外に漏れ出ていたりしている時に、それを知らせるためにいくつか監視装置が付いているのだ。

 でも、今回警報が鳴ったのは予想が当たっていれば別の理由……のはず。

 

「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。あの部屋は危険なものは置いていないし、本当に何かあったら不味いものはもっと厳重に保管してある」

「そうなの。って、そもそも何かあったら不味いものを個人の家に置いてあるのって駄目じゃない!? 嫌だよ、気づいたら変な生物が生まれてたとか!?」


 本当に危険なものはさすがにダンジョンの外に持ち出す許可が出ないから、家まで持ってくることもできないようになっている。まあ、中にはそれを無視して持ち出す人もいるけど、これって普通に犯罪行為なんだよね。


 それで今私が言った不味いものっていうのは、単に魔力に反応して発熱したり、逆に周囲を冷やすような効果がある素材のこと。この家にあるのはそこまで効果が強い物ではないので、周囲を危険にさらすようなものではないから大丈夫ではある。

 ただ、近くにある他の素材に影響を与えてしまう可能性があるから、そのへんは厳重に保管してあるってことだ。


 というか陽彩、今までこういった反応を示したことなかったけど、この前見に行った研究室に在ったモンスター素材が実験の影響でモンスターハザードが起きるっていう映画見て結構怖がっていたから、今回の反応はこれの影響かな。


「いやいや、この前見た映画に影響され過ぎだよ。さすがにああいう物は……ないよ?」


 実際そんなものはこの家にはないし、事故で変なモンスターが発生したなんて話は数度しか聞いたことはない。そもそも、その事故だってダンジョンの中での出来事で、いくら魔力を使って管理しているからって地上で同じようなことは起きない。たぶん。

 これ、ぶっちゃけ今まで地上で起きたことがないだけで、今後ずっと起きないなんて断言はできないんだけどさ。


「今の間はなに」

「いや、実際ああいう事って地上で起こりうるのかなって考えただけ」


 じとっと疑いの目を向けてくる陽彩だったが、それ以上何をいう事もなく、私の後ろをついてきている。


 先ほど居たリビングから少し離れたコレクションルームの1つ、先ほど確認した部屋の前に到着した。

 特に鍵も付いていないので、そのままドアを開け中に入る。後ろに付いて来ていた陽彩はおっかなびっくりといった様子で部屋の中に入って来た。


「植物室?」


 私の後ろから部屋の中を確認した陽彩がそう呟く。

 きょろきょろと部屋の中を見ている陽彩だけど、この部屋に置かれているのはほとんどが植物で、それ以外となると機械くらいしか置かれていない。


「だから大丈夫って言ったでしょ」

「いやだって、いきなりあんな音が鳴り始めたら怖くなるでしょ」

「まあ、それは否定はしないけど」


 私だって知らないところでいきなり警報音が鳴ったら何事なのかと驚くと思う。

 

 植物入りのケースが置かれている棚の間を抜け、その奥にある机の上に置いておいたケースの中を確認する。


「やっぱりこれか」

「これが警報の元ってこと」

「そう」


 そのケースの中にはこの前桜島ダンジョンで拾ったモンスターの卵がちょこんと鎮座していた。そしてその卵にはいくつか小さなひびが入り、中では何かが動いている様子がうかがえた。

 先ほどの警報は、この卵に変化があったとき鳴るように設定していたため、卵にひびが入ったことで機械が反応し警報音を出したというわけだ。


「もうちょっと時間がかかると思っていたんだけど、意外と早かったね」


 ヨルさんの時はもう少し時間がかかったんだけど、これはサイズが小さいからその分早まったということなのかな。


「また卵拾ってたの」

「うん」


 このままにしておくとひびが大きくなった時にまた警報が鳴ってしまうので、卵の孵化装置の周りに設置しておいた機械の電源を落として外していく。


「ヨルちゃんの時とだいぶサイズが違うね。ちっちゃい」

「本当にそうだよね。見つけた時も危うく見逃すところだった」


 機械をもともとあった場所にしまい、孵化装置を卵が観察しやすい位置に移動させる。

 

「割れてきているけどまだちょっとかかりそうな感じかな」

「多分ここから1、2時間はかかると思う。ヨルさんはそれくらいだったし、そんなに変わらないと思う」

「ふーん。意外と早い……のかな?」

「どうなんだろうね」


 種類によるだろうけど、鳥の場合は卵の殻を突き始めて12時間から24時間くらいかかるらしいんだよね。それと比較すれば早いだろうけど、殻が割れ始めてからってなるとそう変わらない気もする。


「これはどうするの。これからずっと見守る感じ?」

「しばらくはほっといてもいいと思うけど、すぐ見える位置にはおいておきたい」


 まだひびが入り始めたところだからすぐに孵化することはないはず。ただ、なるべく孵化して最初に見るのは育てる予定の私でありたいから、孵化装置の近くには居たい。


 ここでもいいけど今は陽彩もいるし、リビングまで持っていくかな。うーん、うん?

 あ、そっか。これってヨルさんを紹介するのにちょうどいいタイミングかも。今まで配信しているのに使っているカメラについてちょくちょく質問されていたし、その説明もしたいと思っていたんだ。


 ああ、でもこの卵について配信に載せちゃって大丈夫なのかな。

 少し前にヨルさんのことをばらしても大丈夫ってギルドから返事は貰っているから卵も大丈夫だとは思うけど、配信に載せるならギルドに確認しておいた方がいいよね。何かあったら面倒だし。

   

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