57 上位個体
次々と沼から現れるズムプフロッグを解体し続け、ようやく湧きが落ち着いてきた。解体した数はもう数えきれないくらいになっている。
[ペース落ちたなぁ]
[このカエルって倒し切れたんだな。初めて知った]
[めっちゃ倒したけどどのくらいやった?]
[もうほとんど出てこなくなったな]
「そろそろ終わりそうですね。これまで何匹解体したか把握している方はいますか?」
ずっと私が解体したズムプフロッグの数をチャット欄に書き込んでいた人が複数いたので、確認のため何匹解体したか聞いてみる。
[|'ω')ノ⌒1023]
[Hey カウントニキ]
[4桁行ったんか]
[前回より多いの草]
[むしろこれだけの数被弾無しで倒し切るのあたおかすぎる]
「1000超えていたんですね」
スマホのコメントを見つつ現在の時間を確認すると、ズムプフロッグの解体をはじめてすでに6時間以上経過していた。
解体する前は1万人近くいた視聴者は3000人近くまで減少していた。まあ、ずっと同じように解体し続けていただけだから飽きてしまった人が多かったんだろうな。
しかし、これで1000ちょっとか。すごい数ではあるんだけど、今欲しい数には全然足りていないんだよね。最低でも前回の倍は欲しいところなんだけど、配信を始める前から集めたのを含めても到底足りていない。
[これで足りるのか?]
[前回よりも多く欲しいはずだし、多分足りてないかな]
[だいぶ人減ったなぁ]
[ずっと同じことの繰り返しだし、作業のお供としてはすごく使えたけど]
[これだけ狩ってて息全然上がってないの化け物すぎ草]
でも、視聴者の数も減ってきてしまっているし、このまま配信を続けても同じことの繰り返しなんだよねぇ。
それにズムプフロッグもこれ以上出てこないだろうし、魔石を採取し続けるには別の階層へ移動する必要もある。
魔石の採取は続けるけど、このまま配信を続けるか悩みどころだね。
「はあ!?」
チャット欄の反応を見ながら、この後配信を切るかどうか悩んでいた時、おじさんが少し焦ったような声を上げた。
すぐにおじさんの方へ視線を向ける。
そこには今まで見たことのない大きさのズムプフロッグとおもしきモンスターが、沼の中から這い出てきている場面だった。
「はい?」
[えでか]
[こんなのいたんだ?]
[勇者割と焦ってて草]
[これは予定調和ってやつですか?]
[朱鳥ちゃん口あんぐりがわいい]
え、ほんとに何あいつ。今までこんな大きなズムプフロッグがいるとは聞いたことがないし、たぶん未発見モンスターだよねぇ。
普通のズムプフロッグの体高がおよそ2メートル。今出てきたのは身長190くらいのおじさんと比較すれば軽く4メートルは超えていることがわかる。しかも完全に沼の中から出てきていないから、実際はもっと大きいはずだ。
[いやいやいやデカすぎぃ!]
[これ樹海ダンジョンと同じパターンか!?]
[いま調べてもこいつの情報出てこないんだけど]
[異変か…]
[深層だとまだ見つかってなかったパターン結構あるからどうなんだ]
一瞬、樹海ダンジョンの異変を思い出したけど、深層ってまだすべて解明されているわけじゃないし、こういうモンスターってたまに見つかるんだよね。
特に今出てきたやつはサイズが違うだけで見た目はズムプフロッグだし、おそらく特殊条件を満たすと出現するタイプのモンスターなんだろうな。
「朱鳥! こいつはどうする!」
巨大なズムプフロッグが沼の中から完全に出てくるよりも先におじさんがこちらに駆け寄ってきた。
「とりあえずこいつも解体するよ。ギルドに報告するにしても素材があった方がいいし、あの大きさなら問題なく解体できると思う」
「了解。しかし、ここにこんな奴がいたのは驚きだ」
「そうだね。群れのボス個体とかなのかな」
「そうかもしれん」
深層の8に出てくるフェルラーテって言う大型のネズミ型のモンスターが居るんだけど、そいつもズムプフロッグと同じように大量に出てくるんだけど、それを倒し続けていると群れのボスみたいな個体が出てくるんだよね。
出てくるタイミングとか似ているし、たぶん同じタイプなんだと思う。
[群れのボスってのはありそうだな]
[躊躇なく戦う選択するじゃん]
[まあ、デカくなってるけど、所詮ズムだしな]
[所詮とか言ってるが、こいつ単体でも弱くはないぞ。この2人ががつがつ倒していたから弱く見えるかもしれないが]
[でけぇですわ!!!]
ズムプフロッグの多分ボス個体が沼の中から這い出てきて体の全貌があらわになった。
「来るぞ」
ズムプフロッグの体に力が込められたのが見て取れた瞬間、おじさんがそう声を出し何が来ても対処できるように身構えた。
鈍い音を立ててズムプフロッグが地面を蹴り、こちらに向かって飛び掛かってくる。
私は即座にその攻撃を食らわないよう、横に駆け出す。
「あの質量で突っ込んでくるとかアホか! 大地よ!」
おじさんは私と違いその場にとどまり、魔法系スキルを使い地面から大きな壁を出現させ、私たちを押し潰そうと飛び掛かって来たズムプフロッグを迎撃した。
「グヴロアアアァ!?」
おじさんが作り出した壁に衝突し鈍重な鳴き声を上げてズムプフロッグが地面に墜落した。
体高6メートル越えの巨大なズムプフロッグが地面に衝突したことで周囲の地面を揺らす。
タイミング的にはチャンスではあるんだけど、着地に失敗したズムプフロッグが藻掻いているため下手に近づくことが出来ない。
「固定するから終わり次第近づいてくれ!」
「わかった!」
そうして、おじさんが藻掻いているズムプフロッグにスキルを使い、動けないよう固定したのを確認してから近づき、ナイフを突き刺しズムプフロッグを解体した。




