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50 事前打ち合わせ

  

 

 社長から呼び出されて2日。

 ダンジョンに潜る日になり私は予定通り朝早い時間から奥多摩ダンジョンのギルドに来ていた。


 これから深層まで潜って行くことになるわけだけど、一緒に潜る予定のおじさんはまだ来ていないのか姿が見えない。

 いつも時間ぴったりに来る人だからもう少しすれば来るかな。


 集合予定の時間になるとおじさんがギルドの前にやって来た。身に着けている装備がすでに準備万端な状態になっているから、もっと早い時間に来て、しっかり準備を整えていたのだろう。


「おじさん、久しぶり」

「おう、って半年前に会っているんだから久しぶりってほどではないだろ」

「うーん。そうかな」


 半年って結構久しぶりって感じだけど、おじさん的にはそこまで久しぶりとは感じていないらしい。


「そんで朱鳥は準備大丈夫か? 問題ないならギルドに申請してすぐに潜り始めるが」

「問題ないよ」


 普段からダンジョンに着いたらすぐに潜れるよう準備しているから、今日もこのまま潜れる状態だ。

 今は姿を隠すために専用のカバンの中にいるけど、ヨルさんの方も準備万端だし、このままギルドに潜ダン申請しても問題はない。

 今回は潜ダン申請の他に私が深層に潜る許可も取らないといけないから、こっちもささっと終わらせてこないとね。


 ギルドでの申請もすんなり通り、ダンジョンの中に入る。すぐに下へ向かう前に事前に決めておいた予定の確認を進めていく。


「目的地は深層の12以降でいいんだよな」

「うん。魔石はそこより深い方が採取の効率がいいから深層の20くらいまで潜りたいところだけど」


 採取する魔石のサイズにしても深い階層の方が質もサイズも良くなる傾向があるから、できるだけ深めの階層で魔石は採取したい。

 テレジア鉱石とロウ鉱石は、それぞれ深層の12、深層の14で採取できる鉱物なので、魔石を採取するより前にこちらを採取する予定だ。


「それじゃあ、予定通り先に鉱石を採取してから、それが終わり次第魔石を取りに深層の20まで降りる感じでいいな?」

「それでお願いします」

「了解」


 おじさんはそう返事をすると私を先導するように深層へ向けて足を進め始めた。




「配信は鉱石を採取する前からする感じなのか?」


 下層もそろそろ終わりに差し掛かったところで、おじさんが配信の話を切り出してきた。

 道中、他の話もしていたんだけど、配信についての話は一切していなかったのは、どう話を切り出すかでも考えていたのかな。でも、目的地に着いてから配信に関して相談しようと思っていたから助かった。


「一応その予定だけど」

「だけど?」

「テレジアもロウも採取はかなり地味だからどうしようかなって」


 テレジア鉱石もロウ鉱石も素材の形状が泥状なのでシャベルで掘って採取するだけなのだ。多少採取するのにコツは必要だけど、そこまで取るのが難しい素材ではないので、配信で流すには絵面が派手ではない。


 まだ何度も配信をしているわけではないんだけど、鉱石や植物の採取の場面って露骨にコメントの数が減ってたり、配信後の感想を見ても触れている人が少なくて、あまり受けがよくないっぽいんだよね。


「お前がそれでいいならいいが、そもそも採取しているところを配信するためにやっているんだろう?」

「……確かにそうだね」


 採集家に対する印象を良くしたくて配信しているのだから、受けがよくないからってやらないのはよくないか。

 

「それじゃあテレジア鉱石を採取する前に配信を始めようと思うんだけど、おじさんは大丈夫?」

「そもそも俺はそっちの配信に映って大丈夫なのか? 駄目なら別のところで作業するが」

「大丈夫って何が……?」


 おじさんが私の配信に映ること駄目なことでもあるんだろうか。

 どうしてそんなことを聞いてくるのか理解できず首を傾げていると、おじさんが呆れたような顔をこちらに向けてきた。


「ニーチューブに限らず、視聴者の中には厄介な奴も少なからず居るんだよ。いわゆるガチ恋勢っていうやつらだな。女性の配信者の配信の中に少しでも男が映ると必要以上に騒ぐんだわ」

「はえー。そういう人がいるって聞いたことはあったけど、本当に実在しているんだ」

「マジで居るんだよなぁ。しかもコラボになるとコメント欄荒らしてくる面倒なやつもいるし、過剰反応するやつだと配信凸してくる厄介なやつも稀にいるからな。この辺は気を付けておいた方がいいぞ。お前顔はいいんだから」

「……顔は?」


 おじさんの言葉を聞いて反射的にナイフを構える。

 空気が読めないってことはないんだけど、昔からおじさんは言葉があけすけというか、ストレートな言葉をいう事が多いんだよね。


「おい、それはやめろ!? 今まで人に使ったことはないらしいが、どうなるかは大体わかるだろ!?」

「いつも言ってるけど、おじさんはもう少し言葉に気を付けたほうがいい。いつか刺されるよ」


 私は親戚って立場だからおじさん呼びをしているけど、見た目はかなりいい人だからね。昔から同年代の女性にモテていたし。誰とも付き合ってはいなかったみたいだけど。


 ん? おじさんの言い方だとおじさん自身も私の配信に映るのはよくないってことになるんだけど、そっちは大丈夫なのかな。


「おじさんは私の配信に出ても大丈夫なの? 異性コラボだと荒らしが湧くみたいだけど」

「俺の場合はなんどかコラボ配信でそういうことをしているし、コメントが荒れているのはいつも通りだからな。それに今日は配信する予定ねぇし」

「いつも荒れてるってそれ、おじさんの配信大丈夫なの?」


 おじさんの配信は見たことないけど、いつもコメントが荒れているのは大丈夫なんだろうか。まあ、反応からして慣れていて気にしていないのはわかるんだけど。


「まあ、弄っても問題ない奴って思われているんだろ。それでどうする?」

「変な人が出てきたら考えるけど、今日はいいかな」


 実害が出始めたらどうにかしないといけないけど、今のところそういった人はいないみたいだし。


「それにもうSNSとニーチューブの枠を立てた時にコラボって書いちゃったから、いなくなるのはむしろ困るし」


 いきなり配信を始めてもすぐに人が集まらないと思って予告しちゃってるから、特別な理由がないのにコラボを中止にするのはしたくないんだよね。コラボだから期待しているってコメントが結構あったし。


「そうか。なら気にしないことにするが、配信のどのタイミングで俺を出すかはそっちで決めてくれ」

「わかった」


 どのタイミングでおじさんを紹介するのがいいのか、よくわかっていないから、それの相談しながら下層から深層へ進んでいった。


 

次話は掲示板になります。

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― 新着の感想 ―
叔父と姪のコラボなら“紹介して!”の凸撃メールが多くなる程度でしょう。 家族コラボに対して、荒らしメール出すような阿呆なら垢バンでシャットアウトすればいいのだし。
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