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46 牛のような鳥のような

 

 解体神の効果で突っ込んできていたケツァルコアトルスが素材となり地面に落ちる。

 

 このモンスターは体高4メートルを優に超えるサイズの割に素材として出てくる部位は少なく、解体して出てくる素材はほとんどが皮と骨だ。今回目的としていた肉も落ちはするけど、合計で20キロも落ちない。


[あぁ]

[恐竜はこうやって絶滅したんやなって]

[www]

[それならもっと化石残ってるだろw]

[この方法で採取できるなら全身の骨格標本とかできるんでは?]

[肉は?]


「こいつから取れる肉はこれですね」


 他の素材に比べて少ない肉を見えるように持ち上げる。とはいえ手に持てば結構な重さになる。


[おー なんか少ねぇな?]

[豚肉とはまた違う見た目]

[赤みが強め? 少しすじっぽそう?]

[肉それだけ?]

[見えるの皮と骨ばっかだけど、あの他の肉は……]

[馬肉に近いのかな]


「肉はこれだけですね。こいつ見た目のサイズの割にあまり肉取れないんですよ。味はいいんですけど」


 本当に味はいいんだよ。ただ取れる量が少ないから流通しないというか、取った人が売らずに食べることが多いというか。

 私も前回の物は半分以上ヨルさんが食べたけど自分で全部消費しちゃったし。


[味はいいけど量が取れない恐竜]

[量取れないって、抱えている分だけ見ても結構あるやろ]

[ダンジョン産って考慮すると少ないってことやろ]

[食べたことあるんだ]


 地面に転がっている骨と皮、嘴を鞄の中にしまう。

 こいつの骨は質もそこまで良くなくて観賞用にしかならないけど、たまにギルドのオークションに出品されて高い値段がついているんだよね。


「こいつは前回来た時にも解体したので、その時に食べました。来る途中に解体したジェネラルプライドピッグとは違うおいしさですよ」


 つらつら説明していても話は進まないのでこの肉の調理をするための準備を進めていく。

 道具を入れている鞄の中から折り畳み式の小さな机とまな板、肉を切るためのナイフ、最後に肉を焼くためのフライパンを取り出す。


[なんでダンジョンの中に調理道具持って来てんだよwww]

[ダンジョン内クッキング始まる]

[深層に潜っているシーカーは持ってる人結構いるぞ?]

[探索に何日もかかる場合、食料は現地調達することもあるから、日帰りするならなくていいやつ]

[深層の浅いところとか、下層までしか潜らないなら長くても2日かからないし、中級シーカーとかようやく深層潜れるようになったあたりだと必須荷物扱いではないから持ってないってやつは多い]


 今出した調理道具は私がダンジョンに潜る際に持ってくる鞄の中に常に入れている道具の1つになる。

 すぐにダンジョンを出る予定でも、ダンジョンの中は何らかの事情ですぐに出れなくなる可能性が否定できない環境なので、備えあれば憂いなしということで常備鞄の中にはこれ以外にもいろいろなものを入れているのだ。


 まな板の上に肉を置きそれをナイフで切り分けていく。基本的に調理可能サイズまで解体されている食材には解体神の効果はあまり発揮されない。

 

[普通に肉の切り分けしてるけど、スキル効果出てなさそう?]

[解体神仕事しろ]

[ナイフで切れるような肉ではなさそうだから効果自体はありそう]

[普通に肉がうまそうでスキルとかどうでもいいんだが]


「解体神はモンスターを素材にする効果はあるんですが、素材をさらに解体して他の素材にする効果はそこまで強くないんですよね。一応効果はあるので、こんなナイフでもきれいに肉を切ることはできるんですけど」


 そもそも使っているナイフはもともと切れ味はいい物なんだけど、肉を切るための物というよりは果物ナイフに近い形をしている。そのためサイズ的に肉のブロックを切るには向いていないのだが、これで普通にブロック肉が切れているのは解体神の効果が弱いながらも発揮されているためだ。


「切れたので肉を焼いて行きましょうか」


 切り出したケツァル肉に塩で軽く味付けする。このまま焼いてしまうと油が少なく焦げ付いてしまうので、鞄の中から将軍豚の肉を取り出し、その肉の脂身の部分だけ切り取る。

 近くで燃えていた炎の場所に移動する。


[すげーうまそうな肉だな]

[色味が結構赤いから馬肉のように見えるな]

[味が知りたい]

[馬肉ってピンク系じゃねぇの? 桜肉って言うし]

[部位によるが馬肉は言うほど桜色ではないよ]


 フライパンを火にかけ、将軍豚の脂身からある程度油が染み出てきたところでそれを取り出し、簡単に味付けケツァルの肉をフライパンの上に載せて焼いていく。


[この時間に飯テロはやめろとあれほど]

[料理するのわかっているんだから見なければいいだけでは?]

[ウェイ٩( ᐛ )و]

[この時間の焼肉は罪深いぞ!]

[焼肉って言うかステーキの方が形は近いだろ]

[どっちにしろ腹が減る映像に変わりないわ]


 肉の焼き面を確認し、適度に焼き目が付いていたのでひっくり返す。そして反対側も同じように焼き目が付いたところでフライパンを炎から離し、肉を一旦まな板の上で食べやすいサイズにカットしてからフライパンに戻した。


「さ、肉も焼けましたし、食べましょうか」


[食べましょうかって、こっちは食えんのですが!?]

[見た目からしてもううまそう]

[腹が減るんだよ#]

[味付けシンプル過ぎないか?]

[焼き目からしてうまそうなんだが]

[フライパン皿替わりにしているのすぼら感ある]

[断面から若干ミディアムっぽい感じもいいなぁ]


「フライパンをそのまま使っているのは汚れものを増やさないためなのでご了承ください」


 お皿も持って来てはいるけど他に付け合わせがあるわけでもないしわざわざ使う意味はないよね。


[キャンプとか行くとやるやつ]

[まあ食べたら帰るだろうしねぇ]

[今更だがそもそもここで食べる意味なくね?]

[こういうところでだべるのがいいんだよ]

[危ない場所だけど、こういうところで食べる食事もありだよな]

[お握りのせいでダンジョンの中なのにピクニック感がぬぐえないw]


「それではいただきます」


 おにぎりを包んでいたラップを剥がし、肉をおかずにおにぎりを食べ進める。

 前に食べた時もそうだったけど、シンプルにしか味付けしていないけどしっかりうまみがあって本当にケツァルのお肉はおいしい。


[味ってどんな感じなん?]

[豚に近いのか牛に近いのか、それとも鳥か]

[うまそうに食ってるとすげぇ気になるよな]


「味としては牛と鳥の合いの子って感じでしょうか。たんぱくだけどしっかりうまみもある感じ? 少し歯ごたえはありますが、嚙み切れないほどではなく噛むごとにうまみがにじみ出てくる感じですね。将軍豚の脂のコクも合っていてとてもおいしいです」


[ああああああああ!]

[腹が減るわ]

[近くのスーパーは閉まっているからコンビニ行ってくる]

[これぞ飯テロ]

[すでに肉を焼いている俺は勝ち組(^^♪b]


 

 チャット欄のコメントが爆速で流れていくのを横目に私はもくもくと食事を進め、食べ終え片づけも終わったところでコメントの方も落ち着いてきていた。


 このダンジョンでする予定だったことはすでに終わっているから、これから地上に戻ることになるんだけど、さすがに帰るところまで配信するのはぐだりそうだからやめといた方がいいよね。

 それに時間も食べているところで0時を超えてしまっているし、配信をやめるタイミングとしてはちょうどいいはず。


「それじゃあ、あとは戻るだけですし、時間も0時を超えてしまっているので配信はこの辺りで終わりましょうか」


[おう]

[ほなばいなら]

[帰りは映さんのか]

[時間も時間だしな]

[今からコンビニ行ってくるからありがたい]


「それではまた次の配信でお会いしましょう」


 そう言って手を振りスマホを操作し配信を終わらせた。



「ふぅ」


 配信を終わらせたのでドローンを回収する。

 ここで食事をする予定はなかったのだけど、チャットの反応はそこまで悪いものではなかったね。

 今後似たような場面があったらまたやってみるのもありかも?


「さーて」


 実はここでは珍しいものが取れるんだよね。見つかること自体稀だし、配信に載せていい情報かわからなかったから何も言わなかったけど、ちょっとだけ確認してみようかな。


 ケツァルコアトルスがこの遺跡にいる理由って、ただそこがケツァルの出現ポイントってだけじゃなくてあるものを守っているからなんだよね。

 

 あいつが最初にいた場所に戻り、その場所にある崩れかけの祭壇の上に登っていく。祭壇自体崩れかけてはいるが辛うじて階段は残っているのでそれを崩さないように慎重に祭壇の上に登ると、そこには大きな鳥の巣のようなものが存在していた。


「あるかなぁ」


 木の枝が無数に絡まった巣の中に入り、その中あるあるものを探す。


「今回はなさげ……かな」


 巣の中に入っているところからも察せると思うけど、今探しているのはモンスターの卵。前回来たときは見つけることができたんだけど、なさそうだね。


「さすがに2回連続で見つけるのは無理か」


 前回見つけた卵は調査対象ってことでギルドに回収されたんだけど、2個目は自分の物にしたかったんだよね。

 お金は沢山もらえたけど、やっぱり卵の方がいいからね。ヨルさんのこともあるし、新しい子もお迎えしたかったんだけどなぁ。


「ない物はしょうがないか。毎回採取出来たら希少品なわけないしね。……んぁ?」


 卵が見つからず巣から出ようとしたところで足元に小さな丸い物が転がっていることに気づく。サイズは普通の卵と同じくらいで、形状は爬虫類の卵のように楕円をしている。

 まさかと思いそれを拾いあげると微かに魔力を感じとることが出来た。


「え? 小っちゃ」


 感じ取れた魔力の感じからしてこれがモンスターの卵であることはわかったけど、まさかこんなに小さいサイズの物があるとは思っていなかったので困惑する。


 前回見つけたものはダチョウの卵よりも大きなものだったから同じ場所でもこれほど差が出るとは想像していなかったな。


 まあ、あったのだからうれしいことには変わりない。

 卵を割らないよう鞄の中にしまい巣から出る。そして、そのまま下層の18を後にし地上へ戻ることにした。

 


次話は掲示板になります。

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